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静岡 富士山 世界遺産登録10年 地元ボランティアガイドが活躍

  • 2023年06月23日

世界文化遺産の登録決定から6月22日で10年となる富士山。「信仰の対象」と「芸術の源泉」として評価され登録されましたが、その文化的価値を伝えるのに一役買っているのが地元のボランティアのガイドたちです。「見えない価値」を伝える取り組みを取材しました。

世界遺産の価値を伝える“構成資産“

富士山は、山そのものだけでなく、周りにある神社や湖、遺跡など、信仰や芸術に関係のある文化財を合わせて世界遺産となっています。山体を含めたこうした文化財を「構成資産」と言います。富士山とともに世界遺産に登録された神社や史跡などの構成資産は、静岡・山梨両県で25か所、富士宮市には5か所あります。富士宮市の山宮浅間神社(やまみやせんげんじんじゃ)もその一つです。

階段を登った丘の上にある、こちらの場所。一見、何もない場所のように見えますが、遥拝所(ようはいじょ)と呼ばれ、いわば本殿に代わる重要な場所です。かつては富士山の噴火を鎮めるためこの場所から山を拝んでいました。

こうした富士山をめぐる文化的価値を訪れた人たちに伝えているボランティアのガイドがいます。そのひとり、櫻場忠夫さんです。櫻場さんは、富士山が世界遺産に登録された10年前から、富士宮市内でガイドを続けてきました。定年退職したあと、地元の歴史を学ぼうとボランティアの養成講座を受講したのがきっかけでした。

ボランティアガイド 櫻場忠夫さん
大勢の方々にこの立派な富士山を紹介したい、構成資産を紹介したいということで勉強
してまいりました。

見えない価値を伝える

人穴の入り口

この日、櫻場さんがガイドしたのは「人穴富士講遺跡」(ひとあなふじこういせき)。この遺跡の見どころの一つが、富士山の噴火でできた長さ80メートル余りの洞窟で、修行に使われたという「人穴」です。

そしてもう一つが、富士山を信仰の対象として登山をした「富士講」の人たちが建てた石碑。合わせて200余りあります。

ガイド
櫻場忠夫さん

一見、お墓に見えますが、人骨は入っていないからお墓じゃないんです。富士山を登るのに、富士吉田からここまで来て、お祈りをして登ったと言われているんですね。いろいろお金を集めて、こういう記念碑を作りました。

何も知らなければ、お墓が並んでいるだけのように見えます。櫻場さんたちガイドは、見ただけでは伝わらない構成資産の価値をわかりやすく紹介しています。
 

参加者

はじめ、人の骨でも埋まっている洞窟なのかなと勘違いして。ガイドさんに教えてもらって、まるで想像と違う深いものがありました。聞いてみないと正しいことは分かりませんね。

参加者

説明がわかりやすくて、勉強になりました。

ガイド
櫻場忠夫さん

最近の方々は、ある程度ネットで調べて勉強してくる方も多いですから、我々もそれに負けないように勉強しないといけませんね。

外国語にも対応  課題は後継者

櫻場さんたち富士宮市のボランティアガイドは土曜日と日曜日、それに祝日の日中に活動しています。観光客は、それぞれの構成資産に設けられた案内所で、無料でガイドを依頼することができます。
ガイドたちは外国人観光客が増えていることを念頭に、定期的に英語ガイドの勉強会も開いています。来月には富士山の山開きも控えることからメンバーたちも準備に余念がありません。

ボランティアガイド 丸山三千雄さん
高校の英語の教師だった方が会員におりますので、日本文を作って、そこから英語にしていく。とても外国人も増えましたし、習ってきたことがようやく生かせるようになったとうれしく思っております。

世界遺産に登録されて10年となるなかで、ガイドたちの高齢化という課題にも直面しています。その多くは70代で、80代後半のガイドも活躍しています。この10年で培われてきた、「見えない価値」を伝えるための知識やノウハウをどう残していくのか?その“伝承”は進んでいません。
ここ数年、コロナ禍でガイドの養成が思うようにできなかったこともあり、富士宮市では今後、後進の育成に力を入れたいとしています。

富士宮市 富士山世界遺産課 伊藤俊幸課長
将来にわたって富士山を育てていく意識が大切。今までガイドをやっていただいた方のノウハウをしっかりつなぎながら行政もガイドの養成講座を行っていくなどして、後継づくりに取り組んでいかなければならないと思っています。

ボランティアガイド 櫻場忠夫さん
だんだんガイドも高齢化してきますので、養成講座を開いて、若い方々にも入っていただ
いて10年20年、構成資産がPRできるように、していったらよろしいかと思います。

この先も富士山の世界遺産としての価値を証明していくため、持続可能なボランティアの体制づくりが求められています。

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