【まとめ】袴田事件 再審開始決定 一夜明けた動き
- 2023年03月14日
57年前、静岡県で一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」で、無罪を主張しながらも死刑が確定した袴田巌さんについて、東京高裁は13日に再審=裁判のやり直しを認める決定をしました。証拠ねつ造の疑いにまで言及した決定にさまざまな反応が出ています。一夜明けた袴田さんや姉のひで子さんをめぐる動きをまとめました。
袴田さん 赤飯でお祝い!
再審開始決定から一夜明けた14日、支援者によりますと、袴田さんは起きたあと、支援者がお祝いとして炊いた赤飯や尾頭付きのたいなどを朝食として食べてから、午後1時ごろに支援者の運転する車で日課のドライブに出かけたということです。
ひで子さん “もう心配いらん”
ひで子さんは、東京都内で開かれた報告集会に出席したあと夕方に浜松市の自宅に戻りました。
ひで子さんは、裁判所の決定文を見せながら、優しくこう伝えました。
「再審開始になったよ、安心しな。もう心配いらん、何にも心配いらん」
ひで子さんと弁護団 喜びと感謝伝える
浜松市に戻る前、ひで子さんは弁護団とともに東京都内で開かれた報告集会に参加しました。
(ひで子さん)「48年も刑務所の中にいた巌の苦労を思うと私の苦労はなんでもない。57年間戦ってきて本当によかったと思います。検察の特別抗告があると思いますが、せっかく再審開始の決定が出たので、もうひとふんばり頑張っていこうと思います。長い裁判になりますが、よろしくお願いします」
袴田さんが求めていた裁判のやり直しについて東京高裁は13日、「有罪の根拠とされた証拠に合理的な疑いが生じ、袴田さんを犯人とは認められない」と指摘し、再審=裁判のやり直しを認めました。
(弁護団の間光洋弁護士)「無罪に向けたレールは敷かれた。あとはどれだけ早くたどりつけるかだ。特別抗告は許されない」
元警察官 “警察・検察の負けだ”
袴田さんが裁判のやり直しを求めている事件の捜査では、逮捕から1年以上あとに現場近くのみそタンクから血の付いた「5点の衣類」が見つかりました。
13日の決定で東京高裁はこの衣類について、「事件から相当な期間が経過したあとに捜査機関の者が隠した可能性が極めて高い。到底袴田さんを犯人と認定することはできない」として、証拠がねつ造された疑いに言及しました。
この衣類をめぐって事件発生から4日後にみそタンクを捜索した80代の元警察官はNHKの取材に対し、「衣類は見つからなかった」と証言していました。
(元警察官)「衣類という大きいものを見落とすなんてことはほぼあり得ないし、そんなに甘い検証はしていない。ここまで発見できなかったっていうのは、ちょっと俺は考えられない。1年もたって発見されるのはおかしいと感じる。捜査員がねつ造するのはありえないと思うが、衣類が発見された時点では捜査から外れていたので、どのような状況だったかはわからない。十分な立証ができなかったのは警察・検察の負けだ」
えん罪被害者ら “再審に関する法改正必要”
今回の東京高裁の決定を受けて、再審に関する法律の見直しを訴えている市民グループが都内で会見し、いまの法律には検察の証拠開示や抗告に関する具体的なルールがないため、長期化などの課題が生じていると指摘しました。
1995年に大阪・東住吉区の住宅が全焼し、女の子が死亡した火事で放火や殺人などの罪に問われ、無期懲役の刑で服役したものの、再審で無罪が確定した青木惠子さんは、次のように訴えました。
(青木惠子さん)「私も一度再審が認められたあと検察が抗告し審理が延びた。えん罪は許されないことで、巌さんは高齢なので1日も早く確定して裁判と関係のない生活を送ってほしい」と訴えました。
(司法の問題点などを指摘している映画監督の周防正行さん)「再審に関するルールがなく、手探りでやっている現状では公正な裁判が進められない。法律をもとに正々堂々と闘えるようにするべきだ」