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袴田事件 最大の争点 “衣類の血痕の色” 検察と弁護側の攻防

57年前に起きた強盗殺人事件 13日に東京高裁が再審を認めるかどうか判断 争点わかりやすく解説
  • 2023年03月10日

半世紀以上にわたって有罪か無罪かが争われた“袴田事件”。今月13日に裁判のやり直しを認めるかどうか東京高等裁判所が判断を示します。

最大の争点は、現場近くのみそタンクから見つかった血の付いた「5点の衣類」です。事件の発生から1年2か月後、袴田さんの裁判が進められている途中で発見され、有罪の決め手とされました。2回目の東京高裁の審理では、この衣類に付いた血痕の色をめぐって、検察と弁護側が激しい攻防を繰り広げてきました。

みそタンクから見つかったとされる5点の衣類

血痕が付着したとされる衣類は本物か?

事件から1年2か月後にみそタンクの中から見つかった「5点の衣類」

当時、現場で捜査にあたった元警察官を訪ねました。カメラの前で取材に応じるのは初めてです。

当初みそタンクを調べた元警察官

(元警察官)「衣類となればね、あれだけの個体の大きいものは見落とすなんてことはほとんどありえない。そんなに甘い検証はしていない」

衣類が見つかったとされるみそタンク

元警察官は、事件から4日後に、現場のみそタンクを捜索。念入りに調べたはずのタンクから衣類が見つかったことに衝撃を受けたといいます。

(元警察官)「ここまで発見できなかったっていうのはちょっと俺は考えられない。1年もたって発見されるのはおかしいなというのは感じますよ」

当時の袴田巌さん

有罪の決め手とされた衣類は、本当に袴田さんのものだったのか。

裁判で行われた装着実験

裁判で行われた装着実験では、発見されたズボンは小さすぎてはくことができませんでした。

血痕の色は 濃い赤色か?

弁護団の小川秀世事務局長

弁護団の小川秀世事務局長は、支援に入った当初から、衣類に疑念を持っていたといいます。小川さんは事件当時の捜査資料の「ある表記」に注目しました。

当時の捜査資料

(小川秀世事務局長)「血痕については赤いという字が必ずついているんですね。赤紫とかですね」

「袴田さんが犯行時に着ていてその後隠したものだ」と検察が主張している5点の衣類。血痕の色が「濃い赤色」などと記されていたのです。

衣類が事件直後に隠されたとすれば、1年2か月もの間、みそタンクに入っていたことになります。これだけ長い間、みそに漬かっていたのならば、血痕の色は変化するのではないか。「赤みが残っているのならば短期間しかみそに漬かっていない可能性がある」と弁護団は考えました。

(小川秀世事務局長)「発見直前に(タンクに)入れられたっていうことになると、ねつ造の可能性ということがすぐ出てくるじゃないですか」

衣類に付着した血痕の色を検証

弁護団の実験の様子 2006年 
(提供 山崎俊樹さん)

弁護団は血痕のついた衣類をみそに漬ける実験を繰り返しました。条件を変えて何度試しても血痕は黒くなったといいます。

血痕が黒くなったという(提供 山崎俊樹さん)

(小川秀世事務局長)「1年2か月漬けてみるともう真っ黒になると。5点の衣類が1年2か月も漬けられたものではないということが確信できていましたね」

実験の報告書

弁護団は実験の報告書を新たな証拠として再審を申し立てました。

5点の衣類“ねつ造の可能性”指摘

2014年。静岡地裁は再審を認める決定を出しました。

「5点の衣類」について「捜査機関によってねつ造された疑いがある」と判断したのです。

化学的な説明を!

しかし、東京高裁は地裁とは逆に再審を認めない決定を出します。

2020年、最高裁は「審理が尽くされていない」として、高裁に審理を差し戻しました。血痕の色の変化について、化学的に説明するよう求めたのです。

弁護側 “赤みなくなり黒くなる”

このため弁護団は法医学の専門家に鑑定を依頼。旭川医科大学の奥田勝博助教は、みそと同じような性質の液体と血液を混ぜる実験を行いました。

旭川医科大学の奥田勝博助教

(奥田勝博助教)「みその成分に浸した後、1日置いたものがこれになります。ほとんど赤みはなく、茶色っぽい色になっているのが分かると思います。3日後のものがこれなんですけれども、さきほどの1日目と比べてさらに赤みがなくなって、茶色っぽくなっているような状況になります」

色が変化したのは、みそに含まれる強い塩分などによって、赤みの原因であるヘモグロビンが分解されるなどした結果だといいます。

(奥田勝博助教)「血液がみその成分に1年2か月という長い期間さらされたときには、赤みを失うというのが結論です。最高裁の課題は血液の変色のメカニズム、赤みがなくなって黒くなるということを化学的に説明するということだったので、決定的な証拠になっているかなと考えています」

検察 “赤み残る可能性十分ある”

これに対し、検察もおととしの9月から静岡地方検察庁でみそ漬け実験を開始。衣類が発見されるまでの期間と同じ1年2か月間漬け込みました。

撮影 袴田巌さん弁護団

その結果、「一部には赤みがみられ、長期間みそに漬けた血痕に赤みが残る可能性を十分に示すことができた」と主張しています。

赤みが一部残っているという 撮影 袴田巌さん弁護団

検察側に協力した東京農業大学の村田容常教授は、弁護側の実験は当時の現場の状況を十分に再現しているとはいえないと考えています。

東京農業大学 村田容常教授

(村田容常教授)「1年2か月ですか、みそに漬け込んでその現象を再現するっていう実験は、条件もいろいろ違いますし、みそのつくり方から貯蔵条件、製造条件が全部違いますので、なかなか同じ結果を出すのは難しいんじゃないかなってことは予想されます」

裁判官が視察

去年11月、検察の実験結果を審理を担当する裁判官らが視察。その判断が注目されています。

判断のポイントは?

東京高裁の元裁判長で、日本大学法科大学院の藤井敏明教授に判断のポイントを聞きました。

日本大学法科大学院 藤井敏明教授

最高裁は差し戻す際に求めていた「化学的な知見」を示してということに関しては弁護側は応えられているのでしょうか。

(藤井敏明教授)「そこは応えたということが言えるのではないかと思います。ただ、検察官の主張としては、弁護側の出された鑑定ついて、条件設定が現実と合ってない部分があるということがおそらくメインになるんだろう。1年以上経過した中で、赤い色がある程度残る可能性があったと言えるのか、それとも赤い色が残ることは合理的には無いんじゃないかというところの判断をするということになると思います」

有罪の決め手とされ、検察と弁護側が激しい攻防を繰り広げた「5点の衣類」の血痕の色。東京高等裁判の判断は、3月13日午後2時に示されます。

動画はこちら👇からご覧ください。

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