AI活用のデマンドバス利用してみた

名取市で地域交通を充実させるため10月からある実験が始まっています。
タクシーでも路線バスでもない「デマンドバス」です。

バスの運行の一部にはAI=人工知能が使われているということで
どんな交通手段なのか、記者が実際に乗って取材しました。

(仙台放送局・武藤雄大)


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名取市が10月から実証運行しているデマンドバス、「なとりんくる」です。

デマンドバスとは、決まった時間やルートを走る路線バスとは違い、
利用者の予約に応じて運行されるのが特徴です。
運行時間は午前9時から午後4時まで。
バスは6人乗りで、平日は6台、土日祝日は4台運行しています。

【利便性向上のカギはAI】

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利便性の向上を図るため、導入されているのがAIシステムです。

例えば、病院へ利用する予定のAさんが先約で乗車したあと、
途中にある郵便局へ向かうBさんが予約を入れた場合、
Aさんの到着時間が遅れないとAIが判断すると
Bさんのもとに立ち寄ります。

逆に、到着時間が遅れると判断した場合は、Bさんは別の車両を使うことになります。
AIが効率的な予約順序と運行ルートを自動で考え、
限られた台数で多くの人を運ぶ仕組みです。

【記者が体験乗車】

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名取市民以外でも利用ができというので実際に乗って体験してみました。

【午前9時 名取駅前】
今回は名取市民の利用率の高い3地点を移動してみます。
前日に予約していた午前9時にJR名取駅で乗車。
3キロ余り離れた名取市内の県立がんセンターに向かいます。

到着したバスには、孫を幼稚園まで送り届けるため
利用しているという女性が乗っていました。

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「ふだんは孫の親が送迎しますが、きょうは用事があるので祖母の私が連れていくのに利用しました。バス停で待たずに乗れるのでとても助かります」

幼稚園近くで2人を降ろした後、バスは10分ほどでがんセンターに到着。
路線バスと違い、時間に縛られることがないため、病院通いなどに利用する人も多いそうです。

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「なとりんくる」の予約は電話か専用サイトの2つの方法があり、
スマートフォンからだと24時間いつでも予約できます。

予約できるのは、乗車の1週間前から利用する30分前まで、
最大6回分の予約が可能です。名取市民の場合、
自宅や勤務地など1地点を登録することができ、
登録地から目的地まで直接向かうこともできます。

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もちろん限られた台数による運行のため
利用客が多いと予約が取りにくい日もあります。

【予約とれたのは3時間後】
この日、県立がんセンターに到着したあと名取市内の商業施設に向かおうと
バスを予約しようとしましたが、月曜日の午前中とあって病院の利用者なども多く、
予約できたのは3時間後でした。事前に予約しておく必要があると感じました。


【狙いは空白地帯と赤字路線の解消】
利用料は1人1回につき400円とタクシーよりも割安です。

さらに、
▽運転免許を返納した名取市民(1年のみ)と
▽障害者手帳持つ人やその介護をする人、
▽小学生は半額の200円、
 小学生以下は無料です。

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名取市防災安全課 髙橋誠 係長
「名取市は市域も広いので、市全域でカバーできる交通として導入した。 便利になったという声はたくさん頂いているので、地域にかけがえのない足になってもらいたい」

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ただ、タクシーとの棲み分けを図るためエリアによっては
自由に移動できないという制約があります。
例えば、地図上の中心部の赤いエリア内のみの移動はできません。
また、東西の青と黄色で示されたエリアをまたぐ移動もできません。
利用者の反応はさまざまです。

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「これまでタクシーを使っていたが、運転免許証を返納したので半額で利用しています。使い勝手はすごくいいので買い物や図書館に行くのに何度も利用しています」

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「運行時間は午後4時までとあまり遅い時間がないので、病院に時間がかかる時にはちょっと使いにくいです」

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とはいえ、市内2か所を移動してかかった費用は800円。
うまく利用すれば非常に便利でリーズナブルな移動手段になると感じました。

名取市では、一定の利用が見込まれるとして
来年4月以降、なとりんくるの運行を続ける方針です。

※「地域に注目!」仙台地域のページはこちら


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仙台局記者 武藤雄大
2017年入局。山形局を経て現在、宮城県政を取材。
車はカーシェアリングの常連ですが、近頃バイクシェアも気になっています。