宮城に半導体工場進出のワケ

ネット金融大手の「SBIホールディングス」は、台湾の半導体大手と共同で宮城県大衡村に半導体工場を建設すると発表しました。全体では8000億円を超える巨額投資はどうして宮城に決まったのでしょうか。その理由や今後の課題について、取材した経済担当の吉原実記者が解説します。



《半導体工場なぜ宮城に?》

【Q1】半導体工場が進出することになったのでしょうか。

【吉原】
会見で、SBIの北尾社長は、7月に工場の建設計画を発表して以降、北海道から九州まで国内31の自治体から誘致の申し出があったことを明らかにしました。その中から▼確保できる用地の広さや、▼水や電気、ガスなどのインフラ、それに▼空港や高速道路などとのアクセスなどの視点から絞り込みを行った結果、最終的に宮城県大衡村にある「第二仙台北部中核工業団地」に決まったということです。

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半導体工場が進出する大衡村「第二仙台北部中核工業団地」

北尾社長は「東北各地には、半導体関連のサプライチェーンが多数存在し効率的な生産という点で、非常に好ましいと思っている。
『産業のコメ』と言われる半導体を安く大量に生産することで、日本のものづくりや半導体サプライチェーンの強靱化に貢献したい」と述べました。

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SBIホールディングス 北尾吉孝社長


《②宮城では何を手がける?》

【Q2】半導体をめぐっては、国内でも各地で新工場や研究拠点の開発計画が相次いで打ち出されています。今回建設される宮城の工場ではどのようなものが作られるのでしょうか。

【吉原】
新たな半導体工場は、SBIと台湾メーカーの出資によって設立された新会社が運営することになります。会見に同席した新会社のCEOによりますと、第1期として2027年から、自動車向けとして、ウエハーと呼ばれる半導体の基板をひと月あたり1万枚、2029年からの第2期になると、自動車向けに加えて、通信やカメラ向けのウエハーも生産し、生産量はひと月あたり4万枚になる計画だということです。

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ウエハーと呼ばれる半導体の基板

《③地元への経済効果は》

【Q3】半導体工場ができることによる、地元への経済効果はどれほどでしょうか。

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【吉原】
会見では、新しい工場への投資額は1期目でおよそ4200億円、2期目の工場を含めた全体では8000億円を超える規模だと明らかにされました。ただ、地元企業への部品の発注については、SBIの北尾社長は「まだ検討していない。地元にプラスになるようにしたいが、生産コストも下げなければならず、競争の中で決めていく」と述べるにとどまりました。

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また、新工場では最終的に1200人程度が必要とされていますが、このうちどのくらいが地元からの雇用になるかはまだわかりません。今後は新工場の進出が、地元企業の受注や雇用に着実につながるよう、県や大学、それに地元企業がより一層連携を深めていくことが必要になると思います。



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仙台放送局記者

吉原 実
新聞記者をへて2023年から仙台局。
現在は主に金融や産業政策など経済取材を担当