4630万円の誤給付 阿武町「4299万円余確保」経緯は?

町長の減給など処分方針決定

山口県阿武町が給付金4630万円を住民1人に誤って振り込んだ問題で、町は30日、町長の給与カットなど役場関係者を処分する方針を決めました。

山口県阿武町は4月、国の臨時特別給付金合わせて4630万円を誤って町内の住民1人に振り込み、返還を拒まれていましたが、先週、法的な手続きによって4290万円余りを確保できたことを明らかにしています。

この問題をめぐって、町は5月30日、町長をはじめ役場の職員合わせて7人の処分の方針を決定しました。

それによりますと、
▽花田町長が月給の50%、
▽副町長が月給の40%、
▽出納室長が月給の10%をそれぞれ3か月カットするとしたほか、
▽課長級以下の4人を訓告や厳重注意の処分とするということです。

町長と副町長の給与カットについては来月の町議会で条例案を提出し、可決されしだい速やかに行い、職員の処分も同じ時期に実施するとしています。

花田町長は「私や副町長、職員の処分については、当初から『厳正な処分』を行うことは当然と申し上げてきたが、ここにきて一定程度のお金の回収のめどが立ち、方針を決定した」などとコメントしています。

阿武町 4630万円誤給付「これまでに4299万円余を確保」

山口県阿武町から誤って振り込まれた4630万円の給付金の一部を別の口座に振り替えたとして、町内に住む24歳の住民が逮捕された事件で、阿武町は法的な手続きによってこれまでに4299万円余りを確保できたと明らかにしました。

山口県阿武町の無職の24歳の容疑者は4月、町から振り込まれた国の臨時特別給付金4630万円について、誤って入金されたと知りながら、オンライン決済サービスで自分の口座から決済代行業者の口座に、このうちの400万円を振り替えたとして、電子計算機使用詐欺の疑いが持たれています。

警察によりますと、調べに対し「金はオンラインカジノで使った」などと供述しているということです。

5月24日は阿武町の花田憲彦町長と、町の代理人を務める中山修身弁護士が会見を開き、法的な手続きによってこれまでに4299万3434円を確保することができたと明らかにしました。

町は、容疑者が繰り返し出金していた3つの決済代行業者の口座について、国税徴収法などに基づき差し押さえ、その結果、5月20日、3つの業者から合わせて4290万円余りが町の口座に振り込まれたということです。

これに加えて、容疑者の口座に残っていた6万円余りも差し押さえたということです。

中山弁護士は「容疑者と業者は委任契約を結んでいて、公序良俗に反する取り引きをしていると判断した」などと述べ、残る300万円余りについても確保する手だてを検討したいとしています。

花田町長は「相当大きな部分が確保でき若干安心したが、すべてが回収できているわけではないので引き続き努力していきたい」と話していました。

町の人からは“一安心”の声

山口県阿武町が法的な手続きによって4299万円余りを確保できたと明らかにしたことについて、町の人からは「一安心だ」といった声が聞かれました。

このうち、70代の男性は「金は戻ってこないと思っていたので驚いた。発端は町のミスなので、再発を防ぐシステムをつくらないといけない」と話していました。

また、70代の女性は「振り込んだ金は皆さんの税金なので返ってきて一安心だ。本人が早く返せばここまでの騒ぎにはならなかった。残りは、本人が働いて少しずつでも返していってほしい」と話していました。

また、50代の男性は「金が返ってきたことはうれしいがまだ返ってきていない金や裁判費用を最終的に誰が負担することになるのかが気になる。町は丁寧に説明してほしい」と話していました。

34回にわたって全額出金

関係者によりますと、容疑者は町が誤って振り込んだ4月8日から18日までの11日間に、34回にわたって振り込まれた4630万円の全額を出金していました。

その際、3つの決済代行業者に繰り返し出金していたほか、使用した際、即時に引き落とされる「デビット決済」を利用していたということです。

警察によりますと調べに対し「金はオンラインカジノで使った」などと供述しているということで、警察は金の流れについてさらに詳しく調べています。

阿武町 花田町長「誤振り込みが発端 申し訳ない」

給付金の振り込みを受けた24歳の住民が逮捕されたことを受けて、山口県阿武町の花田憲彦町長は、19日午前、記者会見しました。

この中で花田町長は「突然の逮捕に驚いたというのが率直なところだ。逮捕によって真実を知ることに近づいたと思う」と述べました。

そのうえで「弁護士の発言では、本人は『オンラインカジノでお金を全部すって無くなってしまった』という話だが、にわかに信じられないし、どこかにいろんな形でお金が残っている可能性があるんじゃないかなと思う。訴訟の中で、しっかり話していただきたい」などと述べ、事実関係を明らかにしたうえで全額を返金してもらいたいと強調しました。

一方で「私たちが誤って振り込んだことが発端となり、本当に当事者に申し訳ないことをしたと思っている」と述べました。

元同僚「勤務態度は普通」

容疑者が勤めていた萩市にあるホームセンターの元同僚は「勤務態度は普通で、無断欠勤をしたことはなかったと思います。勤務中に会話はありましたが、仕事の話ばかりで仕事以外のことはわかりません」と話していました。

容疑者に住宅貸した大家「特に変わった様子はなかった」

阿武町の住宅を容疑者に貸していた大家の男性は「おととしの11月から家を貸していて、いい子だという印象だった。家賃も滞納したことはなく月末までに振り込まれていた。最後に会ったのは先月20日ごろで、あいさつをしたが特に変わった様子はなかった。なぜこのようなことをしたのかと思う」と話していました。

町の対応・問題の経緯は

山口県北部、人口およそ3100の阿武町。町によりますと、問題は新型コロナの影響で生活が困窮する世帯に10万円を給付する国の臨時特別給付金の振り込みをめぐって起きました。

4月1日。町は給付金の対象となった463世帯の口座情報をフロッピーディスクに入れて銀行に渡し、振り込みの手続きは完了していました。

ところが6日になって町は、本来必要のない振り込み依頼書を誤って銀行に提出。依頼書のいちばん上に記載があった容疑者に一括で4630万円が振り込まれる手続きが取られたのです。

銀行から指摘を受けて町が誤りに気付いたのは、その2日後の8日。すでに現金10万円と、4630万円が二重に振り込まれていました。

町はすぐに謝罪するとともに容疑者に返還の手続きを行うよう求めました。一度は応じる姿勢を示すも、その後も手続きは進まず、町に対してこう話したといいます。

「お金はすでに動かした。もう戻せない。犯罪になることは分かっている。罪は償う」

町の調査では現金が振り込まれた4月8日から引き出しを始めていて、およそ2週間でほぼ全額が口座からなくなっていたということです。町は5月12日、給付金の返還を求めて裁判を起こし警察も捜査を進めていました。