津市議会で政務活動費使った
アンケートに不自然な点

三重県の津市議会の最大会派が、政務活動費を使って行った市民アンケートで、津市には存在しない名称のハザードマップについて調査するなど、不自然な点や誤りが複数見つかりました。会派の責任者は「内容を確認しておらず、ずさんだったと言われても仕方がない」と話しています。

内容に不自然な点や誤りなどが見つかったのは、津市議会の最大会派「市民クラブ」の政務活動費の収支報告書です。

この会派は、昨年度までの5年間に、少なくとも6回、市民を対象にしたアンケート調査を市内の調査会社に委託して行い、1回につき43万円から60万円を支出したとしています。

しかし、報告書に添付されたアンケート結果をまとめた資料をNHKが調べたところ、平成30年度に行ったとする防災に関するアンケートでは、『あなたの街の地震防災マップ』などという、津市には存在しない名称のハザードマップについて、見たことがあるか質問が設けられていました。

そして、回答者の6割が存在しないマップを「見たことがある」と答えたことになっています。

また、令和元年度の子どもの育成などに関するアンケートでは、津市にはない「区役所」への児童虐待の通告について尋ねる文言があったほか、昨年度の新型コロナウイルスの影響に関するアンケートでは、調査手法や対象者数、目的や結果の分析などに関する記載が一切ありませんでした。

これについて「市民クラブ」の代表の福田慶一議員は「調査結果に誤った記載や不自然な点があったことなどにこれまで気付かなかった。内容をチェックするべきだったが詳しく確認しておらず、ずさんだと言われてもしかたがない」と話しています。

他の自治体の物と文面一致も

令和元年度のアンケートでは、児童虐待の通告をめぐる質問の中に、津市には存在しない「区役所」への通告について尋ねる文言がありました。

この質問についてNHKがほかの自治体の同様のアンケートを調べたところ政令指定都市で区役所がある名古屋市で平成26年度に実施された児童虐待に関する調査の文言と完全に一致していることがわかりました。

さらに平成30年度の防災に関するアンケートでは、津市には存在しない「あなたの街の洪水ハザードマップ」という名称のマップについて尋ねる質問がありました。

これについて調べたところ名古屋市に「あなたの街の津波ハザードマップ」という名称のマップが存在し名古屋市が平成26年度に行ったこのマップに関するアンケートと市民クラブが行ったアンケートを比較するとマップの名称を除いて一致していました。

アンケートを請け負った調査会社の代表は「市民クラブとのやりとりの中でどちらかが提案し、名古屋市のアンケートを参考にしたかもしれないが記憶になくはっきりしたことは言えない」などと説明しています。

調査結果は他の議員と共有されず

津市議会では、議員1人あたりに年間60万円の政務活動費が原則、会派に対して交付されています。

「市民クラブ」の議員によりますと、それぞれの議員は、会派として使う一部の費用を差し引いた40万から50万円について、代表と経理責任者に何に使いたいか報告して了承されれば使える仕組みだということです。

また、問題のアンケートについて、成果物となる調査結果や領収書は、当時、代表を務めていた福田慶一議員から議会事務局に届けられ、会派のほかの議員と共有されていなかったということで、会派内でのチェック機能が有効に働いていなかったことがわかりました。

会派の経理責任者を務める村田彰久議員は「福田議員を信頼し、どのような調査かまでは確認していなかった。成果物などをチェックする仕組みがなかったことが問題の原因の1つにあると思うので、今後は対策していきたい」と話しています。

オンブズマン「公金の使途 正当とは絶対に言えない」

政務活動費を使って行った市民アンケート調査で、不自然な点や誤りが複数見つかったことについて、政務活動費に詳しい全国市民オンブズマン連絡会議の新海聡事務局長は「矛盾があり、正当性を裏付ける根拠となる資料も無いなど、公金の使途としては正当とは絶対に言えない」と指摘しています。

そして「別の調査を参考にすることはよいが、参考にしてきちんと検討したようには思えない。別の調査の文言をほぼそのまま使ったため誤りが出たのではないか。会派は原因をきちんと調べ説明するべきだ」と指摘しています。

そのうえで「重要なのは、成果物を議会活動に生かしているかで、議員たちには、何のためにこの調査をやったのかと聞いてみたい。市民にきちんと説明する義務がある」と話しています。

調査会社 不備認め調査費200万円返金

三重県の津市議会の最大会派が政務活動費を使って行った市民アンケートの内容に不自然な点が見つかった問題で、調査を委託された会社側が不備を認め、受け取っていた調査費の一部を会派側に返金しました。

津市議会の最大会派の「市民クラブ」は、過去5年間に政務活動費からおよそ300万円を支出して市内の調査会社に委託し市民アンケートを行いましたが、存在しない名称のハザードマップについて尋ねるなど内容に不自然な点や誤りが複数見つかっています。

この問題で調査会社が内容の不備を認め、アンケートを依頼した会派の代表の福田慶一議員に4回分の調査費に当たる200万円余りを返金しました。

調査会社の代表は、取材に対し「不十分なアンケート結果を提出し情けない思いだ。反省を形であらわすため、クライアントである議員に対し返金した」と話しています。

調査会社に資料残されず

アンケートを委託された調査会社の代表は、これまでのNHKの取材に対し「調査を行った際の調査票や詳細な集計結果のデータはすべて残している」として、必要であれば公開する考えを示していました。

しかしその後、調査会社側が詳しく調べたところ▼アンケート用紙や、▼個別の回答結果が記載された「個票」のほか、▼集計結果をまとめたデータなど過去5年間の6回分すべての調査の詳細を説明できる資料が残されていなかったことがわかったということです。

調査会社の代表は、昨年度までの調査資料のすべてについて「事務所を引っ越したときなどに廃棄したものとみられる」としたうえで、調査については実際に行っていると改めて説明しました。

また資料が残されていないことについてはアンケートを依頼した福田議員にもすでに伝えたということです。

議員は会派離脱 市に返金検討

一方、福田議員は11日「迷惑をかけた」などとして会派を離脱したうえで、アンケートに支出した政務活動費を市に返還することを検討しているということです。

ただ、津市議会事務局によりますと、すでに収支が確定した年度の政務活動費の返還は過去に例がなく、条例にも定めがないということで可能かどうか調べているということです。

津市議会は、16日、各会派の代表者が集まる会議を開き、福田議員から詳しい説明を求めることにしています。