東電社長「組織全体の課題
明らかに」テロ対策不備で

柏崎刈羽原子力発電所で、テロ対策に重大な不備があったと原子力規制委員会から指摘されている問題で、東京電力の小早川社長が記者会見し、改めて陳謝したうえで、社長の対応を含めて広く調査を行い、組織全体の課題を明らかにしていく考えを示しました。

東京電力が再稼働を目指す新潟県にある柏崎刈羽原発では、去年3月以降、テロリストなどの侵入を検知する複数の設備が壊れ、その後の対策も十分機能していなかったことが明らかになったほか、去年9月には社員が中央制御室に不正に入室する問題も起きました。

原子力規制委員会はテロ対策に重大な不備があるとして、リスクを高めないように核燃料の移動を禁止するなどの是正措置を命じる行政処分を行う方針を決め、東京電力は7日、弁明を行わないと回答しました。

この問題について、小早川社長は会見を開き、「重大な事案であり、弁明の余地がないものと考えている」と述べ、改めて陳謝しました。

そのうえで、原因究明を徹底し、事実関係を明らかする考えを示し、今後の対応方針として、社長を含めた経営層まで広く調査を行い、組織全体の課題を明らかにすることや、安全文化に精通した第三者の評価を受け透明性を確保すること、他業界など外部の専門家の指導を得ていくことなどを明らかにしました。

また、小早川社長は「福島第一原発事故の反省と、教訓を生かして安全改革に取り組んできたが、何か不足があったのか根本的に間違っていたのか検証することが重要だ」と述べ、原発事故の教訓を踏まえた安全改革の取り組みがなぜ定着していないのかについても検証する考えを示しました。

報酬返納を表明

小早川社長はこうした事態を招いたことを深く反省するとして今後、月額の報酬の30%を半年間、自主的に返納することを明らかにしました。

また、牧野茂徳 原子力・立地本部長、橘田昌哉 新潟本社代表、石井武生 柏崎刈羽原子力発電所長も同じく、月額の報酬の30%を半年間、自主的に返納します。

小早川社長は「このような事態を招き、地元や社会の皆様にご心配をかけていることを深く反省しています。原因分析を徹底的に行い、抜本的な改革を必ず進めていく決意として自主的に返納することにした」と述べました。

そのうえで、今後の経営の影響について、小早川社長は「原子力事業だけでなく、全体的に考えるべきものだと思うが、まずは柏崎刈羽原発について原因究明と抜本的な対策を行っていく。そして、これらを念頭に置きながら福島の責任を果たすべく、グループで総力を挙げてしっかりとした経営基盤をつくる」と述べました。

一方、東京電力は一連の問題について原因の究明などを進めた段階で、改めて人事上の処分について検討するとしています。

規制委更田委員長「来週にも行政処分命令」

原子力規制委員会の更田豊志委員長は、柏崎刈羽原発のテロ対策の問題で東京電力から行政処分に弁明はないとの回答を7日受けたことを踏まえて、「来週の規制委員会の会合で処分の命令を出すことを考えている。原発だけの問題ではなく会社全体の問題として受け止めてほしい」などと述べ、今月14日にも正式に核燃料の移動などを禁止する是正措置の行政命令を出す考えを示しました。

また、柏崎刈羽原発で起きた一連のテロ対策の不備をめぐって情報公開に時間がかかったり、公開されても内容がほとんど明らかにされなかったりしたことについて、「再発防止策を実施したと規制委員会が確認できれば、電力会社は公開可能な情報を明らかにできるが、電力会社は対応を手探りしているし、規制委員会も十分な経験がなく難しい部分なので継続的に議論したい」と述べ、情報公開の在り方の検討を続けるとしました。

梶山経済産業相「遺憾 徹底的な原因究明と核物質防護体制を」

東京電力柏崎刈羽原子力発電所のテロ対策の問題で、原子力規制委員会が4月14日にも正式に核燃料の移動などを禁止する是正措置の行政命令を出す見通しとなったことについて、梶山経済産業大臣は「核物質防護に関して最も厳しい評価となる事案が発生したことは大変遺憾だ。東京電力には徹底的な原因究明と核物質防護体制の再構築を行ってほしい」と述べました。

そのうえで、梶山大臣は「経営責任については原因の究明が行われたうえで東京電力として適切に判断されるべきものだと思っている」と述べました。