ネットの書き込み「差別的」
ヘイトスピーチ条例で初判断

全国で初めてヘイトスピーチに対する刑事罰を盛り込んだ条例が施行された川崎市の審査会が開かれ、インターネット上の9件の書き込みについて、「差別的言動」にあたるという初めての判断を示しました。インターネット上の書き込みは、条例では罰則の対象になっておらず、市は今後、サイトを運営する事業者への削除要請などを行うことになります。

川崎市では、公共の場所でヘイトスピーチなど民族差別的な言動が繰り返された場合、罰金を科すことなどを盛り込んだ全国初の条例が、ことし7月、全面施行されました。

判断にあたっては、専門家による審査会の意見を聴くことになっていて、9日はインターネット上の書き込み9件について審査会が、「地域社会からの排除をあおっている」などとして、いずれも条例上の「差別的な言動」にあたるという初めての判断を示しました。

条例ではインターネット上の書き込みは、罰則の対象になっていませんが、市は、拡散を防止する措置を取るよう定められています。

9件の書き込みのうち2件は、インターネット上で見ることができる状態だということで、市は審査会の答申が市長に提出されたあと、サイトを運営する事業者に削除を要請することになります。

審査会の会長をつとめる吉戒修一弁護士は「表現の自由に配慮して慎重に議論し、条例の趣旨に沿った結論が出せた」と話していました。

被害を訴えた在日コリアンは

川崎市に住む在日コリアンの崔江以子さんは、インターネット上の300件余りの書き込みが自分に対するヘイトスピーチだとして、市に対して書き込みの削除を要請してきました。

9日の会見で、崔さんは「9件の書き込みが、ヘイトスピーチと認められたことは前進で、条例の意義が深まるよう、諦めず前を向いて声を上げ続けていきたい」と述べました。

一方で、大部分の書き込みについて、川崎市は「条例の対象にあたらない」という判断を示していて、今回の9件と別に、崔さんが対応を求めたものを含む5件について、新たに審査会に諮問しています。

崔さんは「インターネット上のヘイトスピーチに対して、個人でできることはこれまですべてやってきたが、個人の力の限界を感じてきた。インターネット上のヘイトスピーチについて、被害の声を上げる場が社会に整っていないなかで、条例に基づいて市は、救済の姿勢を打ち出してもらいたい」と話しました。

崔さんの代理人を務める師岡康子弁護士は「市の対応は非常に遅く、審査会にかけられる対象も限られてしまっている。残りの書き込みに対しても、削除に向けて手続きを進めるよう働きかけを続けていく」と述べました。