京高検 林新検事長会見
「政治と一定距離保ち職務」

緊急事態宣言の中、賭けマージャンをした問題で辞職した東京高等検察庁の黒川前検事長の後任として新しい検事長に就任した林眞琴氏が記者会見し、賭けマージャンの問題について陳謝したうえで、「検察官は政治との一定の距離を保って職務を遂行すべきで、国民の信頼なくして、検察権の行使はできない」と述べました。

林検事長は愛知県出身の62歳。仙台地方検察庁の検事正や法務省の刑事局長、名古屋高等検察庁の検事長などを歴任しました。そして、賭けマージャンの問題で辞職した東京高等検察庁の黒川弘務前検事長の後任として26日付けで新しい検事長に就任しました。

林検事長は27日、就任会見を開き、黒川前検事長の辞職について「検察の基盤である国民の信頼を揺るがす深刻な事態と受け止めている。検事長として国民の皆様に改めておわび申し上げます」と述べました。

そして、「謙虚な姿勢で検察の使命を全うするよう努力し、国民の信頼を取り戻すために努めてまいりたい」と述べました。

また、検察と政治との距離感についての質問に対しては「検察官は政治との一定の距離を保って職務を遂行すべきだ思う。距離が近くなると、国民から何か関係や癒着があるのではないかと、公平らしさが疑われる可能性がある。国民の信頼なくして、検察権の行使はできない」と述べました。

林検事長は、稲田伸夫検事総長が就任から丸2年となる7月までに退官すれば後任の検事総長に就任する可能性があります。

賭けマージャンの問題について

「黒川前検事長が新型コロナウイルスの緊急事態宣言のもとで賭けマージャンをしていたことは誠に不適切で、検察の基盤である国民の信頼を揺るがす深刻な事態であると受け止めています。東京高検の検事長として国民の皆様に改めておわび申し上げます。検察の活動は国民の信頼の基盤の上に成り立ち、それなしに適切な検察権の行使はできず、今回の件で損なわれた信頼を取り戻すことが新検事長の責務です」

検察と政治との距離感について

「検察官はやはり、政治との一定の距離を保って職務を遂行すべきだと私は思います。距離感が近くなると政治におもねる、あるいは癒着するという形になるからではなく、国民の側からすると何か関係や癒着があるのではないかと公正らしさが疑われる可能性があります。極力、公正らしさは保っていかないと最後には検察権の行使ができなくなると考えています」

賭けマージャンなどの問題に検察としてどう取り組むか

「特定の事件の検察権の行使についてどのように対応していくかはお答えできませんが、すべての個々の事件に対して、適切な検察権の行使がなされているか国民は注視していますので、検察としては適正に対処するに尽きると思います」

検察幹部と記者の関係は

「検察幹部と記者の癒着は検察組織としてそれが常態化しているわけではないと私は認識しています。検察官は刑事司法のほか広く国民の意見にしっかり目を向けていく必要があり、そういった意味で検察官と記者との関係を一切絶つべきだとは考えていません。一方で記者との癒着と周囲に思われるような事態があるとすれば検察権の行使に極めて大きな影響があり公正らしさが損なわれますので、検察官の側も癒着とみられる危険性があると認識しながら、慎重に関係を保っていく必要があります」

これまでで印象的な仕事は

「1つ目は検事6年目くらいで東京地検特捜部に入り、携わった昭和63年のリクルート事件の捜査。2つ目は平成15年から法務省の矯正局総務課長として取り組んだ名古屋刑務所の集団暴行事件の対応と明治時代以来、100年変えられていなかった監獄法の改正。3つ目は大阪地検の証拠改ざん事件などを受けた検察改革で、最高検察庁の検察改革推進室長を務め、法務省の刑事局長として取り調べの録音・録画の義務化や合意制度(司法取引)の導入を含む刑事訴訟法の改正に関わったこと。この3つがキャリアの中で印象的です」

現場へのメッセージは

「検察の現場は今回の問題について報道やSNSでいろんなことが起きているのを知るわけですがその中で一線の検察官や検察事務官の士気が上がるわけがない。自由かったつな議論がなされる組織風土を作るという検察の理念に立ち返って、国民の信頼を回復しないといけない。それを一緒にやっていきましょう」