珂川氾濫発生情報出さず
国交省陳謝「対応追われ」

台風19号の影響で、茨城県の那珂川では堤防が3か所で決壊し大規模な浸水が発生しましたが、川の氾濫を知らせる「氾濫発生情報」が発表されませんでした。これについて関東地方整備局と東京管区気象台は記者会見し、「対応に追われて混乱し、本来出すべき情報が出せず申し訳ない」と陳謝しました。

今月12日から13日にかけて、那珂川は常陸大宮市で2か所、那珂市で1か所の堤防が決壊し、大規模な浸水被害に見舞われました。

川が氾濫した際、国はレベル5の情報にあたる「氾濫発生情報」を出して住民に最大限の警戒を求めることになっています。
しかし那珂川の氾濫ではこの情報が発表されず、その後、13日午後3時になって、関東地方整備局は那珂川の堤防が決壊していたと発表していました。

関東地方整備局と東京管区気象台は18日、記者会見を開き、「本来出すべき情報が出せず、申し訳ない」と陳謝しました。

茨城県の常陸河川国道事務所は13日午前4時半ごろには那珂川の氾濫を確認していたということで、「本来、この時に情報を出しておくべきだった。同じころに氾濫した久慈川の対応に追われて、混乱を極めていた。今後このようなことがないようにしていきたい」と述べました。

連絡受け、現地確認もしたが

会見によりますと、常陸河川国道事務所は今月13日午前1時半ごろ、車で巡回していた委託員から「常陸大宮市で水が堤防を越えているようだ」という報告を電話で受けたということです。

さらに職員が現地を確認したところ、午前4時半ごろ、堤防を越えて水があふれていたことを確認したということです。

しかし、すでに氾濫していた茨城県内を流れる久慈川の対応に追われ、常陸国道河川事務所が混乱し、那珂川については「氾濫発生情報」を出せなかったとしています。

国交相も陳謝

赤羽国土交通大臣は18日の記者会見で「住民の避難行動に重要な氾濫発生情報が発表されなかったことは大変申し訳なく、心からおわび申し上げたい」と陳謝しました。

そのうえで、那珂川に関する情報の発表を担当する関東地方整備局に対して再発防止策を検討するよう指示するとともに、全国の河川を管理する部署に対して同じようなことが起きないよう周知するとしています。

消防団員「命に関わる」

台風19号の影響で、茨城県の那珂川で大規模な浸水が発生したにもかかわらず、国が対応に追われ、川の氾濫を知らせる「氾濫発生情報」が発表されなかったことについて、茨城県常陸大宮市で、取り残された人たちの救助活動にあたった消防団員は「決壊や氾濫が知らされないと、自分や仲間の命にも関わる」と話していました。

常陸大宮市の野口地区の消防団員、青木葉一さんは今月13日未明の時点で、すでに那珂川の氾濫は始まっていて、自宅などに取り残された人たちの救助活動にあたったと証言しています。

午前3時ごろ、青木さんがボートに乗って救助活動をしていたところ、急に水の流れが強くなって木の枝などが流れてきたということで、青木さんたちは「危険だ」と判断し、救助活動を中断して高台の上に避難したということです。

青木さんは「流れが急に速くなったので、堤防が決壊したのではないかと思いました。川の決壊や氾濫が現場に知らされないと自分や仲間の命にも関わると感じました」と話していました。

住民「午前2時すぎには堤防超えた」

茨城県常陸大宮市の下伊勢畑地区に住む女性は、13日午前2時すぎにはすでに川の水は堤防を越えていたと証言しています。

堤防が決壊した現場から600mほどのところに住む青木麻衣子さんは午前2時すぎ、消防団の呼びかけで那珂川の水が堤防を越えて浸水が始まっていることを知ったということです。

青木さんは「午前2時すぎに消防団の人が来て『堤防の上まで水が来ているから、このあたりも危ない』と言われました。そのときはひざ下まで水位が上がっていて怖かったです」と、当時の様子を振り返ります。

午前5時ごろに青木さんの自宅から撮影された写真では、那珂川から水があふれ出している様子が確認できます。

同じころ撮影された別の写真では、自宅の庭が水没していることが分かります。

常陸大宮市「避難に影響なかったと考える」

常陸大宮市は12日午後3時45分、市内全域に避難勧告を出し、その後、午後9時50分に那珂川流域の住民に対し避難指示を出していました。

国の氾濫発生情報が出なかったことについて、市の担当者は「住民には前もって呼びかけを行っていたので、避難に影響はなかったと考えている」と話しています。

常陸大宮市長「一段落してから対応検証」

常陸大宮市の三次真一郎市長は「人命を第一にできるかぎりの救助活動を実施していて、その活動には大きな影響はなかったと考えているが、災害対応が一段落してから常陸河川国道事務所と市の対応を検証していきたい」というコメントを出しました。