最低賃金 28円引き上げ
全国平均時給930円の目安

厚生労働省の審議会は、今年度の最低賃金について、すべての都道府県で28円引き上げ、全国平均で現在の時給902円から930円とする目安を示しました。引き上げ額は、最低賃金が時給で示されるようになった2002年度以降で最も大きくなっています。

28円の引き上げは2002年度以降で最大

最低賃金は、企業が労働者に最低限支払わなければならない賃金で、現在、全国平均で時給902円となっています。

労使の代表などが参加する厚生労働省の審議会は、今年度の引き上げについて、すべての都道府県で28円引き上げ、全国平均で時給930円とする目安を示しました。

28円の引き上げは、2019年度の27円を上回り、最低賃金が時給で示されるようになった2002年度以降で最も大きくなっています。

昨年度は、新型コロナウイルスの影響で雇用を守ることが最優先とされ、審議会は、引き上げの目安を示すことができませんでした。

今年度は、ワクチン接種がすすんでいることや、経済指標の一部で回復がみられること、経営が厳しい企業には支援策が検討されていることなどを考慮したとしています。

引き上げ額の目安は地域の経済実態などにあわせて、都道府県を4つのランクに分けて、都市部で高く、地方で低く金額が示されるケースが多いですが、今回は、地域、間格差への配慮や、都市部で雇用情勢が悪化していることを踏まえ、同じ金額が示されました。

引き上げの金額は、示された目安をもとに、今後、都道府県ごとに決められますが、仮に目安のとおりに引き上げられた場合、最も高いのは、東京都の時給1041円で、すべての都道府県で時給800円を超えることになります。

新しい最低賃金の金額は、ことし10月から順次、適用される見通しです。

最低賃金をめぐっては、2019年度まで4年間は全国平均で25円から27円と、3%程度の大幅な引き上げが続きましたが、昨年度は1円の引き上げにとどまりました。

今年度の最低賃金をめぐっては、労働組合側は大幅な引き上げを訴えた一方で、企業側は現在の水準を維持するよう求め議論は難航しましたが、政府が、より早期に全国平均で時給1000円に引き上げる目標を掲げる中、大幅な引き上げが進められる見通しとなりました。

中小企業団体「先が見通せない中 納得できない」

厚生労働省の審議会が、今年度の最低賃金を大幅に引き上げる目安を示したことについて、日本商工会議所、全国商工会連合会、それに、全国中小企業団体中央会の3団体は「東京で4回目となる緊急事態宣言が発出されるなど先が見通せない経済情勢の中、大幅な引き上げとなったことは極めて残念であり、到底、納得できるものではない。中小企業の窮状、飲食業や宿泊業などの実態や痛みを理解していない結論と言わざるをえない。多くの経営者の心が折れ、廃業がさらに増加し、雇用に深刻な影響が出ることを強く懸念する」というコメントを発表しました。

この3つの団体は、今年度の最低賃金をめぐり、新型コロナの影響が続く中で中小企業の経営がさらに苦しい状況に追い込まれるとして、今の水準の維持を求めていました。

連合「コロナ禍でも引き上げの必要性受け入れられた」

今回示された目安について、労働組合側の委員として参加した「連合」の冨田珠代総合政策推進局長は「コロナ禍においても最低賃金を引き上げていくことの必要性が受け入れられた。長年にわたり労働者側が主張してきた時給800円未満地域の解消につながるものであり、連合が目指す『誰もが時給1000円』に向けて一歩前進と受け止めている」と述べました。

そのうえで「最低賃金の地域間での格差は依然として大きく重要な課題で改善に取り組む必要がある。今後行われる都道府県ごとの最低賃金を決める議論でも真摯(しんし)な話し合いが行われることを期待したい」と話していました。

サイゼリヤ 堀埜社長「間違いなく厳しくなる 生産性あげる」

外食チェーン「サイゼリヤ」の堀埜一成社長は、14日開いた決算に関する会見で、「会社にとっては間違いなく厳しくなるが、生産性を上げてどうやって給料をあげていくかに取り組んでいかないといけない。今回の引き上げは、その推進力になると考えている」と述べ、賃金を引き上げるには、効率的な店舗運営など生産性向上に向けた取り組みが重要になるという認識を示しました。

加藤官房長官「賃上げしやすい環境整備が不可欠」

加藤官房長官は午後の記者会見で「『骨太の方針』で、感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取り組みも参考にして、感染症拡大前に引き上げてきた実績を踏まえ、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国平均を1000円とすることを目指して、本年の引き上げに取り組むとしており、公労使で真摯(しんし)に議論し、こうした方針に沿った取りまとめをいただいたものと受け止めている」と述べました。

そのうえで「最低賃金を引き上げるためには、中小企業や小規模事業者が賃上げしやすい環境整備が不可欠だ。与党からの提言を踏まえながら、引き続き、生産性の向上などに取り組む中小企業への支援強化や、下請け取り引きの適正化などの環境整備に向けて一層、取り組みを進めていきたい」と述べました。