日本大震災9年
4万8千人近くが避難生活

東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から11日で9年です。今も福島県の住民を中心に4万8000人近くが避難生活を余儀なくされています。また災害公営住宅の建設など住まいの復興事業がほぼ完了した一方、震災前と比べて人口が減少し、暮らし向きや地域のつながりについて「復興した」という実感は乏しいままです。

9年前の平成23年3月11日午後2時46分ごろ、東北沖でマグニチュード9.0の巨大地震が発生し、東北や関東の沿岸に高さ10メートルを超える津波が押し寄せました。

これまでに確認された死者と行方不明者は1万8428人、また避難生活などで亡くなった「震災関連死」は3700人以上で、「関連死」を含めた死者と行方不明者は2万2000人を超えています。

政府が「復興・創生期間」と位置づけた震災10年まで残り1年となる中、住まいの復興事業はほぼ完了し、ことし1月末までに自宅を失った人などが入る「災害公営住宅」は、計画の99.%7に当たる2万9555戸が完成し、高台への移転や地盤のかさ上げ工事で完成した宅地は、合わせて1万8053戸と計画の99%に達しました。

人口減少に歯止めかからず

一方、避難を余儀なくされている人は、復興庁の先月時点のまとめで全国で4万7737人に上っていて、このうち県外で避難生活を送っている人は福島県からが3万914人と全体のおよそ65%を占めています。

また、被災地では人口減少に歯止めがかららず、NHKが国勢調査をもとにした自治体のデータを使い、先月1日までの人口の増減をまとめたところ、岩手、宮城、福島の35の自治体のうち、震災前と比べて10%以上人口が減った自治体は23と6割以上に上っています。

復興実感乏しいまま

被災地の現在の復興の姿についてNHKが岩手・宮城・福島の被災者に行ったアンケートでは「思い描いていたより悪い」が49%と半数近くを占めています。

これらの人に分野ごとの復興実感を尋ねたところ、地域経済は10%に届かず、暮らし向きと地域のつながりは、いずれも20%以下にとどまる結果となりました。

福島第一原発 廃炉作業引き続き難しく

一方、9年前の3月11日、10メートルを超える巨大津波によって電源を喪失し、その後、3基の原子炉が次々にメルトダウンを起こす世界最悪レベルの事故に至った福島第一原発では、40年に及ぶとされる廃炉作業の工程のおよそ4分の1の期間がすぎました。

現場では多量の「放射性物質」の存在が引き続き作業を難しくしています。

その大きな課題の1つは原子炉の下などに溶け落ちた核燃料を水を注入して冷やしているため、今も毎日、放射性物質を含んだ170トン前後の汚染水が発生していることです。

汚染水は回収され放射性物質を取り除く処理をしていますが、除去が難しいトリチウムなど一部の放射性物質が残ってしまうため、現在およそ1000基のタンクにおよそ120万トンが保管されています。

東京電力は現状の計画では2022年夏ごろにはすべてのタンクが満杯になるとしています。

この水に関して、経済産業省の小委員会は「基準以下に薄めて海か大気に放出する方法が現実的で、海のほうがより確実に実施できる」などとする報告書を先月政府に提出しましたが、地元関係者などから風評被害を心配するさまざまな声が上がっています。

最終的にどう処分をするか方針を決めるのは政府ですが、今後どのような形で意見の集約を図っていくのか、大きな注目が集まっています。

もう1つ廃炉作業に立ちはだかる課題は、溶け落ちた核燃料、いわゆる「燃料デブリ」の取り出しです。

1号機から3号機の原子炉の中や原子炉を納める原子炉格納容器の中に溶け落ちているとみられ、3基の合計は880トンと推定されています。

このうち調査が最も進んでいるのは2号機で、去年、遠隔操作のロボットでデブリと見られる堆積物をつかむことに成功しました。

こうしたことから、2号機はいよいよ来年、取り出しを始める予定です。

しかし、堆積物を確認した周辺の放射線量は1時間当たり6シーベルトを超えていて、1時間ほどその場所にとどまると死に至るほどのレベルです。

このため作業は「遠隔操作」によるロボットを使った極めて難しいもので、最初の取り出し量も「数グラム程度」の予定です。

東京電力などは段階的に取り出しの規模を拡大していくとしていますが、新しい技術開発も必要となり、廃炉作業はこれからより難しい段階を迎えるといえます。