ともにゴールを目指して~沖縄の伴走ランナー~
- 2024年04月18日
視覚に障害のあるランナーが安全に楽しく走れるようにサポートする、伴走ランナー。現在、沖縄県内にはおよそ115人の伴走者が活動しています。そもそもどうやって伴走しているのか、そして2人をつなぐ「きずな」とは。沖縄放送局の大谷奈央アナウンサーが一緒に走って取材しました。
伴走ランナーって?
2024年3月、糸満市で開催されたマラソン大会。
3000人近い参加者の中で、カラフルなビブスを着けて走る人たちがいます。
視覚に障害のあるランナーとそのサポートを行う、伴走ランナーです。
その中で一緒に走って取材したのは、
伴走ランナー歴5年の竹中豊(たけなか・ゆたか)さん(66)と
生まれつき目が見えない、宮城翔(みやぎ・かける)さん(18)です。
今回が2回目の大会です。
2人の絆
自らもランナーで走る喜びを多くの人に伝えたいと伴走を始めた竹中さん。
小学生の頃から走ることが大好きだった宮城さん。
2人は、およそ2年前、視覚障害者や伴走ランナーが集まる練習会で知り合いました。
マラソンを通じて仲良くなり、何度もペアを組むようになりました。
たわいもない会話から徐々にお互い打ち解けていって、気軽に会話ができる関係が作られていきました。
遠慮なく冗談を言い合えるし、
嫌なことは嫌と言ってもらえるぐらいのそういう関係にはなっているかなと。
そんな2人の走りを見てみると・・・。
手には、およそ1mロープの輪を握っています。これは「きずな」と呼ばれ、このロープでお互いの距離感をはかります。
ポイントは、歩幅や手を振るタイミングを揃えて走ること。
お互いの信頼関係が良い走りにつながります。
さらに、竹中さんは宮城さんに目の前の描写など、こまめな声かけを行うことを大切にしています。
翔くん、前方に歩行者がいます。3歩左に寄りましょう。
いま左には、川があって、その向こうにはモノレールがあります。
右には何があるの?
右は公園。
プールがあります。
走りながら話すのは、かなり大変なのだとか。
それでも竹中さんは、宮城さんと楽しさを共有することを大切にしています。
走っているときに周りの景色や見えるお店とか、色々な話をしながら走っているので、とても楽しいです。
実は、宮城さんはこの春から進学で沖縄を離れ、東京で新生活を始めます。
1週間後に大会を控えた2人。沖縄で走る最後の大会です。
そんな2人が力を入れてきたのは、坂道でのフォームの確認です。
最後まで楽しく走り切ることを目標に、何度も練習してきました。
ともにゴールをめざして
宮城さんと竹中さんは今回13キロのコースに挑戦します。
気負わず走ってほしいですね。翔くんは、少しいい所を見せようとするかもしれない(笑)。序盤はゆっくりめにしたいなと思っています。
4月からは東京に行くので、その前の集大成として、きょうは思い切り楽しみます!
ついにレースが始まりました!
宮城さんと竹中さんも、一般の参加者とともに走り出しました。
練習してきた難関の大きな上り坂。竹中さん、宮城さんを励まします。
のぼりあと100m。
前傾意識してね。ちょっと腰が引けている、胸張って。あと50m頑張れ!
最後まで足を止めずに、登り切りました。
宮城さんと竹中さんは、1時間36分28秒で完走できました。
いつも以上に楽しく走れました。竹中さんと一緒に練習しているおかげで僕は走る楽しさを知って、走るのを存分に楽しむことができています。本当にありがとうございます。そしてこれからもお願いします。
泣かせるね。そうやって思ってくれて、本当に嬉しいです。
東京には行くけれど、夏休みは帰ってくるし、これで終わりっていうわけではないので。
そうだな、スタートだもんね。
2人は今後も走り続けることを約束しました。
取材後記
私も伴走体験をさせてもらいましたが、腕のタイミングを合わせるのが特に難しかったです。さらに毎回ペアの組み合わせが変わるため、伴走ランナーは視覚障害の程度によって相手の好みやリクエストに柔軟に対応していく必要があります。だからこそ、完走できた時の達成感や喜びはとても大きいと皆さん話していらっしゃいました。