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最高の走りでパリへ 車いすマラソン 喜納 翼選手

おきなわHOTeye 金スポ パラリンピック出場めざす 沖縄出身選手の活躍
  • 2024年03月05日

パリパラリンピックの開幕まで半年。
うるま市出身の喜納 翼選手は車いすマラソンで出場を目指しています。
「自己ベスト更新」を掲げて沖縄でトレーニングに取り組む姿を取材しました。

(沖縄放送局 市川可奈子カメラマン)

【車いすマラソンとの出会い】

喜納 翼選手

うるま市出身の喜納 翼選手(33)。
競技用車いすで42.195キロを走り抜く車いすマラソンの選手です。
初めて出場した東京パラリンピックでは7位に入賞しました。

喜納選手は幼いころからスポーツ万能でした。
小学4年生のときに始めたバスケットボールでは、中学・高校で沖縄県の代表にも選ばれました。
しかし大学生のときにトレーニング中の事故で脊髄損傷の大けがを負ってしまいます。

車いすマラソンを始めたのは、23歳のときでした。
もともと陸上に苦手意識がありましたが、試しにやってみると風を切って走る感覚にハマったといいます。
身長173センチと長身の喜納選手。海外選手にも引けを取らない腕の長さを生かして走りを磨き、競技を始めて6年で当時の世界記録まで8秒と迫る日本記録を出しました。

【パリにつながる最高の走りを】

パリパラリンピックまで半年。
出場選手は過去2年間の世界ランキングをもとに、上位の中から決められます。
喜納選手は、常に最高の走りを目指してきた姿勢がパリにもつながると考えています。
 

喜納選手

代表になりたいという思いもやっぱりあるんですけれども、でもそれ以前に今シーズンで記録をまた更新していきたい。そこも含めた上で、しっかりトレーニングが積める1年にしていきたい。

【スピードを磨いて】

目標に「自己ベスト更新」を掲げている喜納選手。
去年の大分国際車いすマラソンでは、海外勢のスピードについていくことができず、4位。
タイムも1時間44分49秒と伸びず、自己ベストに約9分及びませんでした。
スピードにも持久力にも課題を感じた喜納選手。
トップスピードを上げ、さらに、ハイペースで走り続ける体力をつけるため走り込みを重ねています。

喜納選手

ハイペースにうまく対応できなかったのが、昨シーズンだったかなという印象があるので、課題としてはトップスピードを上げたりだとか、継続してスピードを出せるような体をもう1度しっかりつくっていく。

そのため重点的に取り組んでいるのが、男子選手のスピードに食らいついて走る練習です。
自身のトップスピードをさらに高めることを意識して取り組んでいます。
この日はほとんどをこの練習に費やしました。
 

【車いすの進化】

喜納選手が取り組むのは体作りだけではありません。相棒の車いすも進化を続けています。
先月、喜納選手のもとに新しい前輪が届けられました。

競技用ホイールを手がける愛知県の自転車店に依頼し、5年がかりで製作してもらったものです。推進力を上げるため前側に重心がほしいという喜納選手の強い要望に応えて、中心部分がこれまでのものより重くなっています。

 

指導する下地隆之コーチと自転車店の濵島光宏さんと、何度も試作品をつくっては意見を交わし、試行錯誤の結果、完成したといいます。
そして後輪も120グラム重いものに変えました。ハイペースで走るときにスピードが落ちにくくするためです。

喜納選手

道具の面は私自身ではどうしようもないところですし、知識もないところだったので。
これで少しでも速くなる可能性がまだあるのかなと思ってます。
それが数年越しで今、形になってきているので、これからがまた楽しみですね。

トラックでの練習に加えて、週に一度は実戦を意識したロードでの練習も行っています。
この日は、新しい車輪の感触も確かめました。

喜納選手

フラット(平地)を走っていると結構転がりが感じられて、引っ張られてる感じもあったりしたので悪くないなという印象はありました。

【支えてくれる人への感謝を胸に】

最高の走りを目指して努力を重ねる喜納選手。
そこには支えてくれた周囲の人への思いがあります。

喜納選手

支えてくれる人がいるからこそ走れるっていうのもあります。私が良い記録を出すことは、私を支えてくれているいろんな人たちへの感謝の思いも含め、その人たちの結果を残すためのレースでもあるという感覚があります。

【取材後記】

車いすマラソンに打ち込む喜納選手ですが、競技だけでなく学校での講演活動にも力を入れています。努力を積み重ねていく大切さや障害者への理解を深めてほしいという思いから、子どもたちに自身の経験を伝えていて、依頼があればできるだけ行くようにしているそうです。

取材の中では、1秒でも速く走るためにトレーニングも道具選びも妥協しないという姿勢が印象的でした。自分を高めていきたいという強い気持ちを感じました。
自己ベスト更新を目指す喜納選手を今後も取材していきたいと思います。
 

  • 市川可奈子

    沖縄放送局コンテンツセンター カメラマン

    市川可奈子

    前任地は大阪放送局、沖縄局に赴任してもうすぐ2年半です。最近はダイビングにはまっています。

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