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沖縄:地域の力で「命」を守る 渡嘉敷・瀬嵩の自主防災

  • 2024年02月24日

沖縄:地域の力で「命」を守る 渡嘉敷・瀬嵩の自主防災 

 

自主防災組織の結成率が全国最下位の沖縄県。
(総務省消防庁 令和5年)
そんななか自主防災組織の結成や上手な運用に
取り組む動きが県内各地で起きている。
渡嘉敷村渡嘉敷区と名護市瀬嵩区を取材した。

自主防災組織の結成率が全国最下位の沖縄県

総務省消防庁によると、
自主防災組織とは地域住民が
「自分たちの地域は自分たちで守る」
という意識に基づき自主的に結成する防災組織。

主に町内会などで結成されることが多く、
災害時の避難誘導や救助などの初期対応、
日ごろの防災活動を行うものです。

しかし、沖縄県の自主防災組織結成率は全国最下位。

(総務省消防庁 令和5年)

地域で防災をどのように取り組んでいくのか。
まさに自主防災組織結成に向けて取り組む地域と
防災と地域とを上手く結びつけている地域という
2つの地域を見ていきましょう。

自主防災組織を立ち上げる! 
渡嘉敷村渡嘉敷区

那覇から船で約1時間。人口400人ほどの小さな地域。
渡嘉敷村の住民の多くは、
津波などの大災害に見舞われたことはなく、
自主防災組織もありません。(2024年1月時点)

そんな渡嘉敷村で役場からの依頼を受けて、
自主防災組織を立ち上げようとしているのが

長堂政美(ながどう・まさみ)さんです。
沖縄市の消防長だった経歴を生かし、
これまで、県内の自主防災組織の立ち上げを
支援してきました。

沖縄県は自主防災組織の結成率が
全国最低であったため、
これはなんとかしなければと思い、
渡嘉敷村で自主防災組織の結成に
協力しようと思いました。

自主防災組織結成に向けて、
まず長堂さんが行ったのは、地域住民への呼びかけです。

この日は住民15人ほどが集まりました。

講師として東京から
専門家の早稲田大学 人間科学部 准教授の
古山周太郎(こやま・しゅうたろう)さんも参加。

自主防災組織の班分け案

●救助班や給食給水班など組織化しておかないと、
  災害対応が遅れること。
●災害時に小さな町や村には救助や支援物資は
  すぐに来ないこと。
など、自主防災組織の大切さを学びました。

渡嘉敷区で自主防災組織をつくるのかどうかも
話し合います。

自主防災組織を立ち上げるにしても
高齢者が中心になる難しさはある。
まずは素案にのってやってみるしかないんじゃないかと思う。

シンプルにみんなができるような
方向でやっていった方が
いいんじゃないか。

この日の集会は2時間以上続きました。
そして最後には、出席した全員賛成で
自主防災組織を作っていくことが決定しました。


次の日。
実際に防災活動をしていくうえで必要となる
避難訓練を行いました。

高齢者が多い渡嘉敷村では、
高齢者の避難をいかに組織で手助けできるかも課題です。

長堂さんは役場の担当者たちと協力し、
住民の個別事情に合わせて、
実際の避難を想定して訓練を実施。

参加するのは與那嶺雅晴(よなみね・まさはる)さん。
妻の絹子(きぬこ)さんは車いすで生活しています。

沖縄近海で大地震が発生し、
20分以内に10m近い津波がくることを想定して
避難します。

家から600m先の高台を目指します。

與那嶺さんと近所の人たちも一緒になって行動。

高台までには最後に難関が。

およそ200mの急な坂道です。

中間地点で休憩もはさみながら前に進みます。

途中からは長堂さんの提案でロープを使い、
近所の人が2人1組となって坂を上ります。

避難開始から17分で高台まで登り切ることができました。

與那嶺雅晴さんに、周囲のサポートについて聞きました。

実際に津波が来るぞとなると、自分自身の焦りもあるし、動揺してしまって、高台までいける保証がないわけですよね。 でもまわりに誰かいると、いるだけでも勇気づけられました。

渡嘉敷区の自主防災組織結成に向けて、
区を引っ張ってきた長堂さんに今後の展開を聞きました。

今後は自主防災組織を使って、
個別避難計画とか防災訓練をやり、
時代を担う子どもたちにつなぎ、
地域住民に自主防災のあり方を啓発していってやっていきたいです。
渡嘉敷村はその第1のモデルになるだろうと期待しています。

まさにお手本!
名護市瀬嵩区の自主防災

自主防災の取り組みが、
さらに大きく進んでいる地域もあります。

名護市瀬嵩区です。

沖縄本島の東側にある大浦湾に面し、
300人ほどが住む小さな自治体です。

この地区で去年7月に実施されたのが

防災キャンプ。

子どもたちと大人が一緒になり、
避難生活を想定し、キャンプ形式にすることで
楽しみながら身を守るすべを学びました。

自主防災組織をまとめる、
区長の西平伸(にしひら・しん)さんに
防災キャンプについて聞きました。

子どもたちも、
遊び感覚の防災キャンプなので
ピクニック気分で楽しくできたし、その方が中身を覚えやすいというか、身につきやすいというかな。
毎年やっていけたら段々とスキルも上がっていくと思っています。 

このように防災に積極的な瀬嵩区ですが、
地域の防災力をさらに高めた出来事があります。

去年8月に沖縄を襲った台風6号です。
瀬嵩地区では、倒木で道路がふさがったり、
地区が浸水したりと被害がありました。

そんな時、地元企業が重機を提供し、復旧作業に協力。
素早く災害から復旧できたのだといいます。

このつながりを一過性のものにしないために
瀬嵩区と企業で去年10月に正式に協定書も締結。

災害時には
全面的に企業が地区の活動に協力することになりました。

例えば重機の提供。

会社が保有する重機を台風への事前の対策や
災害時の復旧作業に使えるようになりました。

さらに、

この企業の経営するゴルフ場も
避難場所として利用可能に。

水やお米などの非常食、
1200食分の食料の備蓄もあります。

災害時にはエントランス部分を開放し
建物全体で200人ほどが
一時的に避難できる見込みだということです。

 

区長の西平さんに、
自主防災組織には何が求められるのか聞きました。

もし、地震や津波が起こったときはほぼ自分の判断で逃げる。
自主防災組織が一番大事なのは、
その後どうできるかということなんじゃないかな
3日4日、あるいは救助が来るまでの間、どう過ごした方がいいかという時に、自主防災組織があって、
こういう時にはこういう対処をしましょうねとか 
イメージできることが大事なんじゃないかな
そのために自主防災が一番必要なんだと思う。 

取材後記

取材前、私は防災とは、「自分の備え」という意識しかありませんでした。
地域というコミュニティーで考える防災こそが「命を守る・つなぐ」ときに必要になるのだと気づきました。
自分を守るだけでなく、他の人を守るための防災についても
今後考えていこうと思いました。

  • 義村聡志

    アナウンサー

    義村聡志

    京都府出身
    2021年入局
    初任地は徳島県
    2023年8月沖縄局に赴任

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