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愛知の学校で使われる方言の謎 げた箱はなぜ「ダツリ」?

マチコエ
  • 2024年04月15日

みなさんの疑問を徹底調査する「マチコエ」。
今回マチコエ調査班に寄せられたのは、
「私が子どものころ、学校の昇降口は『ダツリ』と呼ばれていました。今はなんと呼ばれているのでしょうか?」
聞きなじみのない「ダツリ」という言葉。調べてみると、学校で使われるさまざまな方言が続々登場。さらに愛知ならではの事情もあることがわかりました。
(NH名古屋 ディレクター 野口美帆)

ペンネーム「みゃえちゃん」さんからの疑問

名古屋で「ダツリ」を知る人を探せ!

学校のこの場所、みなさん、なんと呼んでいるのでしょうか。名古屋・栄で街の人に聞いてみると?

名古屋出身20代

げた箱?

名古屋出身60代

これ、げた箱 

野口ディレクター

「ダツリ」って呼んでいる地域があるんですけど…

聞いたことないないないない

なかなか、ダツリを知っている人に出会えません。
聞きこみを続けること、1時間。

ダツリです

ダツリ

なんと、ダツリを使う兄弟を発見!出身をたずねてみると...

大治町で、大治南小学校

げた箱がなぜ「ダツリ」?大治町で調査

謎を解くカギは、大治町(おおはるちょう)にありそう。ということで、大治町の大治南小学校で調査してみることに。

さっそく大治南小学校へ
児童に聞いてみると…

こんにちは。みんな今ここ、なんて呼んでいるの?

ダツリ

ダツリを掃除しています

この学校では、当たり前のように「ダツリ」が使われていました。

張り紙にも「だつり」
「ダツリ」が伝わらないことに驚く児童

ダツリって伝わらないんですか?なんかびっくりしちゃうね。いつも普通だと思ってたから…。

でもなぜ、げた箱を「ダツリ」と呼ぶのでしょう?

靴を脱いだり、履いたりする場所のことだと思います。脱ぎ履き。

どうやら、靴を「脱ぐ」「履く」と書いて、脱履(ダツリ)と読むそう。
方言の専門家によれば、江南市を中心とした、愛知県西部の限られた地域だけで使われている方言だそうです。

「ダツリ」を使っている愛知県西部の地域(番組調べ)

新たな学校方言「オクウン」も登場!?一宮へ

ダツリについてわかったところで、先生から、新たな方言が飛び出しました。

オクウンというふうに…

オクウンですか?

この先生、過去に一宮の学校に務めていたとき、この不思議な言葉に戸惑ったといいます。

体育館って言わなくて、一宮で。「オクウンオクウン」っていうんですよ。それこそ本当に、オクウンってどこ?

さっそく、一宮で調査開始。

体育館のことはなんとよんでいました?

一宮出身
20代

オクウンですかね。中学校とかバレーボール部だったのですが、「オクウンで練習しよ」みたいな感じで。

たしかに、一宮市の一部の学校では、体育館は屋内運動場、略してオクウンと呼ばれていました。

学校ならではの方言が続々登場

ほかにも、幅広い世代が学校ならではの方言を教えてくれました。

東郷町出身
50代

(鉛筆が)とっきんとっきんとかはありましたね

鉛筆がとがることを、「とっきんとっきん」

一宮出身
60代

B紙(びーし)

模造紙を、B紙(びーし)

一宮出身
10代

放課(ほうか)

放課(ほうか)は、休み時間のことだそう。

学校方言が多い理由は?愛知ならではの事情も

それにしても、なぜ学校に関する方言はこんなにたくさんあるのでしょうか。言葉の成り立ちについて詳しい中部大学現代教育学部教授の深谷圭助さんを訪ねました。

中部大学 現代教育学部 深谷圭助 教授

深谷さんによれば、学校に関する方言が多くあるのは、学校という場所の特殊性が影響しているのだそう。

中部大学 現代教育学部  深谷圭助 教授
学校の方言が残り続けるというのは、教員の異動が限定的だということ(が理由)になると思います。

公立学校の先生は、採用された自治体の中で異動するため、言葉の流入や流出が少なく、方言が残りやすいのだそう。さらに、学校でしか使わない言葉も多いため、こどもたちは方言と気づかずに使い続けるといいます。
深谷さんからは、愛知ならではのこんな事情も。

深谷圭助 教授
愛知県の場合は、実に不思議なんですけども、比較的狭い範囲で使われている、学校独自で使われている方言が多いんですね。特に西尾張の地域では、非常に細かく市町が分かれていた歴史があります。

かつて尾張地方の西部では、木曽川の支流が複雑に入り組んでいたため、たくさんの集落がありました。

「尾張國図」名古屋市鶴舞中央図書館 所蔵

昭和初期までは、橋や道路も少なく、人の行き来も盛んではありませんでした。そのため、各市町村で独自の言葉が育ち、一部が現在も方言として残っているのではないかといいます。

深谷圭助 教授
そういう町村の単位というものが、狭い範囲での学校方言として残る基盤になったと言えるのかもしれません。

今回の調査結果

・「ダツリ」は、現在でも大治町など尾張地方西部で使われています。
・学校方言が多いのは、学校という特殊な環境が影響していました。
・また、尾張地方西部に限定的な方言が多いのは、木曽川による地理的要因が関係しているのではないか、とのことでした。

疑問を送ってくださったペンネーム 「みゃえちゃん」さん、調査にご協力いただいたみなさん、ありがとうございました!

みなさんの“マチコエ”お待ちしています!

NHK名古屋「マチコエ」では、みなさんの疑問を投稿フォームで募集しています。 
「これってどうして?」「調べてほしい!」という疑問がありましたら、ぜひ声をお寄せください。あなたの「マチ」のあなたの「コエ」が取材のスタートです。

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