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中田翔 中日ドラゴンズ 得点力不足のチームを救うキーマン

  • 2024年04月15日

ドラゴンズの新戦力・中田翔選手は出場機会を求め、巨人との複数年契約をみずから破棄し移籍を決断した。打点王に3回輝いた勝負強いバッティングは、得点力不足に苦しむドラゴンズの上位浮上に欠かせないものになるはずだ。「もう一花、咲かせたい」とプロ17年目のシーズンに挑む姿を春のキャンプから8年ぶりにセ・リーグ首位で立ったペナントレース序盤までを取材した。      
NHK名古屋ドラゴンズ担当記者 猪飼蒼梧

プロ17年目は3球団目の新天地で

中田翔選手はプロ野球の世界に入る前から大きな注目を集めてきた。大阪桐蔭高校時代には87本のホームランを打ち、甲子園でも特大の当たりを披露した。そして2007年の高校生ドラフトでは4球団による抽せんの末、日本ハムに1巡目で指名された。その後のプロ野球での活躍は言うまでもないだろう。日本ハム時代には打点王を3回獲得。WBC日本代表でも中軸を担った。人気球団の巨人でも存在感を見せた。そんな中田選手でも3球団目のドラゴンズでのプレーに身が引き締まる思いだという。

中田翔選手
ここまで注目してもらえるのは久々のことなので、ありがたい気持ちが真っ先に来ます。もちろんプレッシャーはあります。1年間けがをせず、試合に出続けることをしっかりやっていきたいですね。

8年ぶり首位のチームを5試合連続打点で引っ張る

ドラゴンズは開幕ダッシュに成功した。セ・リーグ5球団との戦いを一巡した段階で、8年ぶりの単独首位に立っている。チーム防御率は12球団トップと評判通りの数字を残している一方で、チームの打撃成績は決してよくはない。それでも「ここぞ」という場面でタイムリーが出ている。その打線を引っ張っているのが中田選手だ。4月6日の広島戦から4月13日の阪神戦まで5試合連続打点をマークして4年ぶりに6連勝を達成したチームの原動力になった。

4月13日の阪神戦でタイムリーヒット 5試合連続打点とした

中田選手は連勝中のチームの戦いについて手応えを口にする。

中田翔選手
競った試合をものにするために個人個人がやるべきことができていると思う。だからここ最近の試合結果になっている。「守り勝つ野球」をするために守る時は守る、攻める時は攻めるということをしないといけない。ここまでできている競り勝つ試合を今後もっとしていきたい。

ひときわファンの注目浴びたキャンプ

球界を代表する中田選手の加入は、2月の春の沖縄キャンプでも大きなインパクトをグラウンドの内外で与えた。ウォーミングアップの段階からその一挙手一投足にファンの視線が注がれた。またキャンプ初日に中田選手が練習場所を移動する途中にサインの求めに応じると、すぐに黒山のひとだかりができた。そのあまりの人の多さに球団職員が急きょ安全確保のために間に入ったほどだ。

中田選手がいるところにファンが集まった

キャンプのフリー打撃は"逆方向"を徹底

通算303本のホームランを打っている中田選手。毎日ランチタイムに行われるフリー打撃で、ファンはどこまでボールを飛ばすのかに注目をした。しかしその期待を裏切るかのように中田選手は力感のないスイングでセンターから逆方向の当たりを淡々と打っていた。

2月春のキャンプでは逆方向への軽打が目立った

試合で見せる豪快なスイングを調整段階のキャンプでは封印。理想の打撃フォームを固めようとしていたのだ。厳しいプロの世界で生き抜いてきた中田選手には、日々のフリー打撃に確固たる考えを持って取り組んでいたのだ。

中田翔選手
それは徹底事項なんです。1時間の打撃練習で一気にバッティングが狂ってしまう経験を何度もしています。1回感覚が狂ってしまうと、戻すまでにすごく日にちがかかるんです。よいものが悪くなるのは早いんですが、悪いものをよくするのにはすごく時間がかかります。だからフリー打撃でも内からバットを出して丁寧に逆方向に入る。「フリー打撃で引っ張ってスタンドに入れなさい」と言われたらそれは簡単なことです。ただ練習でそんな簡単なことをやっても意味がないんです。逆方向にしっかり丁寧なバッティングをするのは心がけてやっていました。

これまでの経験を踏まえてキャンプで調整を続けていた中田選手だが、その仕上がりを確認するオープン戦では私たちが想像していなかった事態が起きた。キャンプ地の沖縄県北谷町で2月末に行われた2試合に出場したが4打数ノーヒット。バットの芯でボールを捉えられず、外野に飛ぶ打球もなかったのだ。

オープン戦不調で打撃フォーム変更を決断

中田選手はその時点で「バッティングフォームがしっくりきていない」と判断。立浪監督のアドバイスも踏まえ、名古屋に戻るタイミングでフォームの変更に乗り出した。

3月2日の試合前練習 変更後の打撃フォーム

2月のキャンプでは顔の近くでバットを構え上半身を前に傾けていた。それを変更後はバットを体から離して構えた上で上半身を変更前より起こしている。実はこの打撃フォーム、3回目の打点王を獲得した4年前(2020年)のシーズンがベースになっているという。

中田翔選手
ここ2年試していたバットの軌道とは全く違うんですけど、自分の中ではすごくリラックスした状態で振れるフォームだと思っています。常に自分に合ったフォームというかしっくりくるフォームを求めています。練習で試した中ですごく感触が良かったので今は継続してやっています。

オープン戦打率1割台も開幕カードで本領発揮

打撃フォームを変更した後もバットの角度を微妙に修正するなどシーズン開幕に向けた調整が続いた。オープン戦では38打数5安打の打率1割3分2厘、ホームラン1本とふるわず、最後の2試合は体調不良でベンチからも外れた。それでも立浪監督は「状態は悪くない。ぶっつけ本番のような形になるが、開幕は4番・ファーストで起用します」と実績あるベテランへの信頼感を口にした。

今季開幕戦で一時勝ち越しのホームラン

3月29日に神宮球場で行われたヤクルトとの今シーズン開幕戦。中田選手はすぐに周囲の不安を一掃した。第1打席はセンターフライ、第2打席は空振り三振だったが、1対1で迎えた5回の第3打席には高めのスライダーを捉え、一時勝ち越しとなる移籍後初ホームランを打ったのだ。ドラゴンズファンで埋まったレフトスタンドは大歓声に包まれた。

ドラゴンズベンチに向け右手を上げる中田選手

中田選手は3月31日の第3戦でも2号ソロホームランを打った。ドラゴンズは昨シーズン12球団最小のチームホームラン数(71本)に終わったが、さっそくその救世主となるべく存在感を示したのだ。

個人成績より「ドラゴンズで勝ちたい」

ヤクルトとの開幕3連戦は中田選手にホームランが出たものの、打線のつながりを欠いて2敗1引き分けに終わり開幕カードを負け越した。それでもドラゴンズは2カード目以降に投打がかみ合い、4月9日には約8年ぶりとなる単独首位に立った。

中田翔選手(3月31日試合後)
バッティングの形は個人的には悪くないですけど、勝ちきれていないので何の意味もない。切り替えてやっていくだけです。一生懸命、自分のプレーをするだけです。

中田選手が巨人との複数年契約をみずから破棄し移籍を決めた理由の1つは、立浪監督の「お前の力を貸してほしい」という熱意ある言葉に心を動かされたからだ。春のキャンプでチームに合流し、勝ちに飢えるドラゴンズの選手たちの思いに触れ、チームの勝利の貢献したいという思いがさらに強くなった。野球人生のラストスパートと位置づける3球団目となる新天地でもう一花咲かせたい、中田選手には今シーズンへの並々ならぬ覚悟がある。

中田翔選手
いろいろみんなと会話をする中で僕もこのメンバーで勝ちたいなと素直に思いましたね。自分の成績は二の次でね。チームに勝ちをつけるためにやりきるので、ファンのみなさんと選手、1つになって1年間戦っていきたいと思います。

  • 猪飼蒼梧

    名古屋局 記者

    猪飼蒼梧

    入局6年目。2023年8月からドラゴンズ担当。
    野球の経験はありませんが、
    競泳とライフセービングで鍛えた体幹と足腰の強さに自信があります。

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