ピアニスト亀井聖矢さん 2024年への思い
- 2024年01月11日
愛知県一宮市出身のピアニスト亀井聖矢(かめい・まさや)さん。2022年にフランスの国際コンクールで優勝し、活躍の場を広げてきました。そんな亀井さんに2024年の抱負を聞きました。
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2023年は 新しい自分と向き合った1年だった
亀井さんのインタビューしたのは、2023年12月23日。3日前に22歳の誕生日を迎えたばかりのタイミングでした。
NHK名古屋のスタジオでの撮影は、2022年11月にロン・ティボー国際コンクール(フランス)で優勝した直後につづいて2回目です。
2023年、亀井さん全国12か所で凱旋ツアーを行い15000人を動員、ヨーロッパでの演奏のチャンスも増えるなど、活躍の場を広げました。そんな1年を振り返ってもらいました。
「2022年にロン・ティボー国際コンクールで優勝したのをきっかけに、お仕事の規模、演奏会の規模が大きくなり、新しいお客さんに聴いていただく機会が増えました。
そんな中、10月からはドイツでの留学生活も始まり、色々な文化芸術に触れ、新しい先生のレッスンも受けるようになりました。そこで育んで勉強してきたものを、日本に帰ってきて演奏するというサイクルが新しく出来上がった1年になりました。
成長を実感し、新しい自分の音楽に向き合える、そんな1年だったと思っています」
作品をより深く感じられるように
演奏活動を広げる中で、亀井さんの音楽の捉え方に、少しずつ変化があらわれてきたといいます。
「今まではリストの激しい作品や、世界で一番難しいとも言われる「イスラメイ」といった難曲で、テクニックを駆使した勢いのある演奏を得意としていました。
それがこの1年は、ショパンなどの繊細な作品に向き合うことで、一瞬一瞬の味わいを大事にしながら、自分の心をより深く入れていくような感覚を感じられるようになってきました」
この日の撮影で亀井さんは、最近力を入れて取り組んでいるショパンの作品から「英雄ポロネーズ」を演奏してくれました。
華やかなだけでなく、ひとつひとつの音を慈しむような美しい瞬間がたくさんあり、スタッフ一同、うっとりと聴き惚れてしまいました。
ドイツ留学がスタート
亀井さんは、2023年3月に桐朋学園大学を卒業。同年9月にドイツに渡り、数々の名演奏家を輩出してきた名門、カールスルーエ音楽大学に留学しました。
「まだ2~3か月ですけど、本当に行ってよかったなと、この決断をしてよかったなと思っています。コンサートの本番がない時期に、勉強するためだけの時間をヨーロッパで設けることで、お客さんにどういうふうに聞いてもらうかではなく、本当に自分がどう弾きたいのか、どういう表現でどういう音色を出したいのか、そういうことにより深く向き合える時間ができるようになりました」
クラシック音楽の本場での生活は、亀井さんに新しい刺激を与えているといいます。
「素晴らしい演奏家のコンサートに行ってみたり、ピアノ以外のオペラやバレエなども鑑賞してみたり、そういう新しいインプットに費やせる時間がすごく増えました。本当に今、この生活ですごく自分を成長させられていると感じます」
背中を押してくれた恩師との再会
この日、スタジオでのインタビュー後、亀井さんは高校時代の恩師のもとを訪ねました。愛知県立明和高校の音楽科で教えを受けた杉浦日出夫さん(90)です。
ふたりが顔を合わせるのは4年ぶり。杉浦さんは「あなたのおかげで僕はとても名誉な気持ちです。本当に立派になったね」と目を細めていました。
亀井さんは高校2年生のとき「飛び入学」で桐朋学園大学に進学する決断をしました。それを後押ししてくれたのが杉浦さんでした。
「先生が背中を押してくださった」と亀井さんが感謝の気持ちを伝えると、杉浦さんはこう言って笑いました。
「僕は考えずに押すほうだから。何でも先に行ったほうがいいと思うからね。苦しみは大きいけど、やっぱり先に一歩足を出したほうがいいかなって」
その励ましが、新たな一歩を踏み出す力になったといいます。
「先生の言葉で僕の決心は固まりました。前例もない中で、そういう選択ってどうなのかな… と相談させていただいた時に、『そんな機会はめったにないから、ぜひ挑戦した方がいいよ』と言っていただいて、そこで覚悟を決めました」
懐かしいレッスン室で、ふたりはモーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ」を一緒に弾いたりして大切なひとときを過ごしました。
高齢でなかなかコンサートに足を運べなくなってしまった杉浦さんのために、亀井さんがリストの「ラ・カンパネラ」を演奏する一幕も。
これから世界に羽ばたいていく亀井さんにとって、ピアニストとしての原点を思い出す再会となりました。
2024年は「土壌を作る年」に
2024年も全国各地でのコンサートが予定されている亀井さんに、新しい1年の抱負を聞きました。
「自分の今持っているものを、もっともっと育てて、もっともっと自分の音楽を豊かにして、それをいろんな場所でアウトプットして、というバランスを大事にしながら、さらに何年後かに向けて、より大きい目標に向かっていけるような、そういう土壌を作っていく1年にしたいと思っています」
新生児用の手袋が入らなかった!?
この日のインタビューでは、亀井さんの「手」も話題に。生まれつき大きくて、新生児用の手袋が入らなかったのだとか!
今では「ド」から1オクターブ上の「ソ」まで届く大きさに成長しました。柔らかくよく開き、強くしなやかな指… まさにピアノを弾くための手。
この恵まれた手で、亀井さんがこれからどんな音楽を奏でていくのか、とても楽しみです。
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