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高校野球 花巻東10年ぶりベスト8進出 智弁学園に5-2で勝利

  • 2023年08月17日

花巻東10年ぶりベスト8 智弁学園に5対2で勝利
 

甲子園球場で行われている夏の全国高校野球。
岩手代表の花巻東高校は17日の3回戦で奈良の智弁学園と対戦し、5対2で勝って準々決勝に進みました。花巻東は2013年以来、10年ぶりのベスト8進出です。

    |123|456|789|計
花巻東 |201|101|000|5
智弁学園|010|001|000|2

花巻東は、1回、ワンアウト満塁のチャンスでキャプテンの千葉柚樹選手がタイムリーツーベースを打って2点を先制しました。
このあと2対1とリードして迎えた3回は、ヒットと相手のエラーでワンアウト一塁二塁として、キャプテンの千葉選手が再びタイムリーツーベースを打ってさらに1点を加えました。
花巻東は4回に1点、6回には3番佐々木麟太郎 選手のタイムリーヒットで再び1点を加えリードを広げました。
花巻東の先発、2年生の葛西陸投手は強打の智弁学園打線に繰り返し得点圏にランナーを進められましたが、味方の好プレーにも助けられ2点で抑えました。 
9回、葛西投手はワンアウト一塁二塁となったところでマウンドを降り、替わって登板した中屋敷祐介投手が後続を抑え、花巻東が5対2で勝ち準々決勝に進みました。
花巻東は、2013年以来10年ぶりのベスト8進出です。
花巻東は19日に予定されている準々決勝で宮城の仙台育英高校と対戦します。

【談話】先発 葛西「自分が抑えてやる」

花巻東高校の先発で、9回途中まで2失点と好投した2年生の葛西陸投手は、「相手打線がすごく良かったので悩んでいましたが、とにかく怖がらずにコースにしっかり投げ切ることを意識したことが結果につながってよかったです」と話しました。
佐々木洋監督から17日朝に先発を告げられたということで「とにかく全力でチームの勝ちに少しでも貢献する、自分が抑えてやるという気持ちで投げました」と話していました。
仙台育英高校と対戦する準々決勝に向けては「次はバッターもピッチャーもすごくいいチームなので怖がらず、先を見ず、冷静にしっかり抑えていけたらなと思います」と意気込みを語りました。 

【談話】佐々木麟「思い切ってバット振った」

3安打1打点と活躍した佐々木麟太郎選手は、「いままではちょっとバットを当てにいっていた部分もありましたが、きょうはしっかりタイミングをとって、思い切ってバットを振ることができました」と
話しました。
また、中軸であわせて10本のヒットを打ったことについて、「後続も信頼できるので、自分自身としては楽に、思い切ってやらせてもらえてると思います」と話していました。
次の試合に向けては、「とにかく1戦1戦勝ち上がることを考えて、ベストを尽くしていきたい。甲子園で戦わせてもらえていることに感謝して、誇りに思って戦っていきたい」と話しました。

【先発 葛西 急造サイドスローで好投】

10年ぶりにベスト8に進んだ花巻東は、先発を託された2年生の左ピッチャー、葛西陸投手が、試合前日に練習を始めたばかりという急造のサイドスローで智弁学園の強力打線を相手に好投しました。
花巻東が対戦した智弁学園は、前の試合で140キロを超える速球を投げる大会屈指の右の本格派ピッチャーからヒット18本を打って 12得点をあげた強力打線で、特にその試合でホームランを含む4本のヒットを打った1番の松本大輝選手を筆頭に力のある左バッターがそろっていました。
花巻東の佐々木監督は、この左バッターを抑えることが試合の鍵になると考え、先発を左ピッチャーの
葛西投手に託すことを決めました。
その上で、ある秘策を仕込みました。それがサイドスローへの転向です。
葛西投手はもともとオーバースローのピッチャーで1回戦の宇部鴻城高校との試合で登板した際も上から投げていました。
佐々木監督は試合前日の練習中に葛西投手にサイドスローにすることを提案したといい、その意図については「自分で打席立って葛西の球を見たが、上からだと怖さがなかった。どうしても強力な相手打線を抑えるイメージができなかった」と説明しました。
葛西投手本人によるとサイドスローは、これまで経験がなく、試合前日の練習でわずか30球程度を 投げただけで、「不安もあった」といいます。
それでも、このサイドスロー転向が智弁学園戦での好投につながりました。
サイドから投げることで、左バッターはインコースのボールがより見づらくなります。
葛西投手は、速球は120キロ後半ながら厳しくインコースを攻め、さらに「サイドにしてキレがよくなった」という変化球を効果的に織り交ぜる緩急を使ったピッチングで要所を締めました。
ヒット10本を打たれはしたものの、会心の当たりは少なく特に、警戒していた相手の松本選手はピンチで2回打ち取るなど仕事をさせませんでした。
佐々木監督は「相手は甲子園に来てからも、ちょっと見たことがない強力な打線だったが、器用な選手なので腕を下げたことで角度をつけながらコーナーを丁寧について投げ、本当によく頑張った」とたたえていました。
葛西投手自身も「いいバッターがいっぱいいたが、怖がらず1球1球丁寧に自信を持って投げられた。次の試合も焦らず1人1人をしっかり抑えられるようにしたい」と話していました。
葛西投手は今後もサイドスローでのピッチングを続けるということで、同じく左の強打者がそろう準々決勝の仙台育英高校との試合に向け、花巻東に強力なピースが加わりました。

好投した葛西投手

【ベスト8に東北勢3校は初】

夏の全国高校野球は、17日、花巻東高校のほか宮城の仙台育英高校と東北勢2校がベスト8に進み、
青森の八戸学院光星高校とあわせて東北勢の3校が
ベスト8に入りました。
東北勢の3校がベスト8に入るのは、105回目を迎えた大会史上初めてです。
19日に予定されている準々決勝は、第2試合で八戸学院光星高校が茨城の土浦日大高校と対戦し、花巻東高校は第4試合で同じ東北の仙台育英高校と対戦します。
準々決勝で八戸学院光星高校が勝てば、東北勢の2校がベスト4に進むことになります。

==試合成績(花巻東==

<投手>
□葛西
投球8回1/3、球数121、被安打10、奪三振1、四死球2、失点2、暴投1
□中屋敷
投球2/3、球数11、被安打0、奪三振0、四死球0、失点0

<チーム打撃成績>
安打16、得点5、三振11、四死球2、犠打0、盗塁2、失策0、打率.330

<個人打撃成績>
久慈   5打数2安打、得点2
熊谷   5打数1安打
佐々木麟 5打数3安打、得点2、打点1
北條   4打数3安打
千葉   5打数4安打、打点3、盗塁1
廣内   5打数1安打、盗塁1
堀川   4打数0安打
晴山   1打数0安打
葛西   4打数1安打
中屋敷  0打数0安打
小林   3打数1安打、得点1

<試合経過>

1回表(花巻東の攻撃)
花巻東はキャプテン千葉のタイムリーツーベースで2点を先制しました。
1番 久慈 センター前ヒット(0アウト一塁) 
2番 熊谷 見逃し三振(1アウト一塁)
3番 佐々木麟 レフト前ヒット(1アウト一塁二塁)
4番 北條 フォアボール(1アウト満塁)
★5番 千葉 レフトオーバータイムリーツーベース(1アウト二塁三塁)
6番 廣内 ピッチャーゴロ(2アウト一塁三塁)
7番 堀川 レフトフライ(3アウト)

先制2点タイムリーツーベースの5番千葉

【1回裏】(智弁学園の攻撃)
花巻東の先発、葛西はヒットでランナーを出しましたが無失点で抑えました。
1番 松本 センターフライ(0アウト)
2番 山家 ショートフライ(2アウト)
3番 中山 レフト前ヒット(2アウト一塁)
4番 山崎 サードライナー(3アウト)


【2回表】(花巻東の攻撃)
花巻東は、この回三者凡退でチャンスをつくれませんでした。
8番 葛西 セカンドゴロ(1アウト)
9番 小林 空振り三振(2アウト)
1番 久慈 サードゴロ(3アウト)


【2回裏】(智弁学園の攻撃)
花巻東の先発、葛西は2アウトから内野安打でランナーを出してからピンチを招き1点を失いました。
5番 池下 ファーストフライ(1アウト)
6番 知花 ライトファウルフライ(2アウト) 
7番 川原崎 内野安打(2アウト一塁)
★8番 高良 ※一塁ランナーが二塁へ盗塁(2アウト二塁)
センター前タイムリーヒット(2アウト一塁)
代打 砥出 センター前ヒット(2アウト一塁二塁)
1番 松本 ライトフライ(3アウト)

2回裏 6番知花のファウルフライを好捕するライト久慈

【3回表】(花巻東の攻撃)
花巻東は再びキャプテン千葉のタイムリーツーベースで1点を追加しました。
 ※智弁学園 投手交代 藤田→田中
2番 熊谷 空振り三振(1アウト)
3番 佐々木麟 センター前ヒット(1アウト一塁)
4番 北條 ショートエラー(1アウト一塁二塁)
★5番 千葉 左中間タイムリーツ−ベース
 ※二塁からホームを狙った北條はタッチアウト(2アウト二塁)
6番 廣内 空振り三振(3アウト)

2打席連続タイムリーの5番千葉

【3回裏】(智弁学園の攻撃)
花巻東の先発、葛西は得点圏にランナーを背負いましたが、無失点で切り抜けました。
2番 山家 センターフライ(1アウト)
3番 中山 内野安打と悪送球(1アウト一塁)
4番 山崎 ライトフライ(2アウト一塁)
5番 池下 ※ワイルドピッチ(2アウト二塁)
      サードゴロ(3アウト)


【4回表】(花巻東の攻撃)
花巻東は、デッドボールからチャンスを作り1点を追加。リードを3点に広げました。
7番 堀川 見逃し三振(1アウト)
8番 葛西 ファーストゴロ(2アウト)
9番 小林 デッドボール(2アウト一塁)
★1番 久慈 ファーストゴロエラー 
   ※一塁ランナーが生還(2アウト二塁)
2番 熊谷 ピッチャーゴロ(3アウト)


【4回裏】(智弁学園の攻撃)
花巻東はランナー2人を出しましたが、この回も無失点で切り抜けました。
6番 知花 ライト前ヒット(0アウト一塁)
7番 川原崎 センターフライ(1アウト一塁)
8番 高良 レフト前ヒット(1アウト一塁二塁)
代打 高橋 センターフライ(2アウト一塁二塁)
1番 松本 レフトフライ(3アウト)


【5回表】(花巻東の攻撃)
花巻東はこの回も得点圏にランナーを進めましたが追加点は奪えませんでした。
※智弁学園 投手交代 田中→楢林
3番 佐々木麟 空振り三振(1アウト)
4番 北條 センターツーベースヒット(1アウト二塁)
5番 千葉 ライト前ヒット(1アウト一塁三塁)
6番 廣内 ※一塁ランナー盗塁成功(1アウト二塁三塁)
      見逃し三振(2アウト二塁三塁)
7番 堀川 ショートゴロ(3アウト)


【5回裏】(智弁学園の攻撃)
花巻東は先発の葛西がこの回三者凡退に抑えました。
2番 山家 セカンドフライ(1アウト)
3番 中山 ライトフライ(2アウト)
4番 山崎 レフトフライ(3アウト)


【6回表】(花巻東の攻撃)
花巻東は佐々木麟のタイムリーで1点を追加しました。
8番 葛西 見逃し三振(1アウト)
9番 小林 ファーストゴロ(2アウト)
1番 久慈 ライト前ヒット(2アウト一塁) 
2番 熊谷 レフト前ヒット(2アウト一塁二塁)
★3番 佐々木麟 センター前タイムリーヒット
     ※ランナータッチアウト(3アウト)

センター前にタイムリーを打つ佐々木麟太郎

【6回裏】(智弁学園の攻撃)
花巻東は先発の葛西引き続きマウンド。この回2本のヒットで1点を追加されました。
5番 池下 センター前ヒット(0アウト一塁)
6番 知花 セカンドゴロ(1アウト二塁)
★7番 川原崎 センターへのタイムリーヒット(1アウト一塁)
8番 高良 ショートフライ(2アウト一塁)
代打 谷口 ファウルフライ(3アウト)


【7回表】(花巻東の攻撃)
花巻東は先頭の北條がノーアウトで出塁しましたが、チャンスを生かせんでした。
※智弁学園 投手交代 楢林→中山
4番 北條 レフトツーベースヒット(0アウト二塁) 
5番 千葉 ※ランナー盗塁失敗(1アウト)
      セカンドゴロ(2アウト)
6番 廣内 レフト前ヒット (2アウト一塁)
7番 堀川 ※ランナー二塁へ盗塁成功(2アウト二塁)
      空振り三振(3アウト)


【7回裏】(智弁学園の攻撃)
花巻東は得点圏にランナーを出しましたが、無失点で切り抜けました。
1番 松本 センター前ヒット(0アウト一塁)
2番 山家 送りバント(1アウト二塁)
3番 中山 センターへの犠牲フライ(2アウト三塁)
4番 山崎 センターフライ(3アウト)

4番山崎のセンターフライを好捕するセンター廣内

【8回表】(花巻東の攻撃)
花巻東はノーアウト一塁二塁とチャンスを作りましたが後が続きませんでした。
8番 葛西 ライト前ヒット(0アウト一塁)
9番 小林 レフト前ヒット(0アウト一塁二塁)
1番 久慈 ファウルフライ(1アウト一塁二塁)
2番 熊谷 ショートゴロ(ダブルプレー3アウト)


【8回裏】(智弁学園の攻撃)
花巻東の先発、葛西が三者凡退に抑えました。
5番 池下 ファーストゴロ(1アウト)
6番 知花 ショートゴロ(2アウト)
7番 川原崎 ショートフライ(3アウト)


【9回表】(花巻東の攻撃)
花巻東はこの回もチャンスを作りましたが、追加点は奪えませんでした。 
3番 佐々木麟 見逃し三振(1アウト)
4番 北條 センター前ヒット(1アウト一塁)
5番 千葉 レフト前ヒット(1アウト一塁二塁)
6番 廣内 ファウルフライ(2アウト一塁二塁)
7番 晴山 空振り三振(3アウト)


【9回裏】(智弁学園の攻撃)
花巻東はこの回途中からリリーフした中屋敷がピンチをしのぎ、智弁学園に追加点を許さず5対2で勝ちました。
8番 高良 デッドボール(0アウト一塁)
9番 西川 空振り三振(1アウト一塁)
1番 松本 デッドボール(1アウト一塁二塁)
 ※花巻東 投手交代  葛西→中屋敷
2番 山家 ピッチャーゴロ(2アウト一塁三塁)
3番 中山 ファーストゴロ(3アウト)
 《試合終了 花巻東5‐2智弁学園》

勝利を喜ぶ佐々木麟太郎

【両チーム選手】

<花巻東>
▽先発
(打順)(背番号)(氏名)(学年)
1番   14  久慈颯大 3年
2番   6   熊谷 陸 3年
3番   3   佐々木麟太郎 3年
4番   1   北條慎治 3年
5番   4   千葉柚樹 3年※主将
6番   8   廣内駿汰 3年
7番   5   堀川琉空 3年
8番   16  葛西陸  2年
9番   2   小林 然 3年
▽控え
(背番号)(氏名) (学年) 
  7  中嶋禅京  3年
  9  今野憲伸  3年
 10  阿部颯太  3年
 11  佐藤龍太  3年
 12  寿時東弥  3年
 13  佐々木唯天 3年
 15  晴山太陽  3年
 17  小松龍一  2年
 18  中屋敷祐介 3年
 19  五嶋真生  3年
 20  簗田蒼汰  2年

【智弁学園】
▽先発
(打順)(背番号)(氏名)(学年)
1番   9   松本大輝 3年
2番   8   山家拓人 3年
3番   1   中山優月 3年
4番   4   山崎蓮音 3年
5番   3   池下春道 3年
6番   17  知花琉綺亜 2年  
7番   7   川原崎太一 3年  
8番   2   高良鷹二郎 3年※主将
9番   10  藤田健人 3年
▽控え
(背番号)(氏名) (学年)
 5   近藤大輝  1年
 6   西川煌太  2年
 11  青山輝市  2年
 12  佐坂悠登  2年
 13  小泉輝妃一 2年
 14  砥出隼介  3年
 15  谷口志琉  3年
 16  高橋響希 2年
 18  田中謙心  1年
 19  國島来夢  2年
 20  楢林勇生  1年

【見どころ】

今大会、花巻東は1回戦で山口の宇部鴻城高校に4対1で勝ち、2回戦は北北海道のクラーク記念国際高校に2対1で競り勝ち、8年ぶりに3回戦に進みました。
2回戦で花巻東は相手の好投手に苦しめられたものの打線が少ないチャンスを生かして終盤に勝ち越し、また投手陣も3人目で登板した中屋敷祐介投手が好リリーフをみせて最後までリードを守りました。
3回戦で対戦する奈良の智弁学園は、前回出場の2年前の2021年の大会で準優勝した強豪です。
今大会は初戦で香川の英明高校に延長10回7対6でサヨナラ勝ちし、2回戦の徳島商業戦はチーム18安打と打線がつながり、12得点を挙げて相手エースを打ち崩し12対6で逆転勝ちしました。
花巻東としては相手打線を勢いづかせないよう投手陣の奮起が期待されます。

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