久慈川 命を守るために知るべきポイントは?
住野博史(記者)
2023年11月29日 (水)
茨城県の北部を流れる久慈川。流域には19万人が暮らしています。
2019年の台風19号をはじめ、戦後、7回にわたってたびたび氾濫してきた川でもあり、昔から周辺に住む人々を悩ませてきました。
久慈川とはどんな特徴のある川なのか。そして、氾濫や土砂災害などから自分たちの命を守るためにはどうしたらいいのか、下記の3つのポイントをもとに解説します。
(NHK水戸放送局 住野博史 記者)
久慈川ではどんな被害が?
久慈川は、茨城・福島・栃木の3県にまたがる八溝山地(やみぞ)が源流です。福島県から、茨城県北部の山間部や平野部を通り、太平洋に注いでいます。
2019年に東日本各地に大きな被害をもたらした台風19号。
久慈川では4か所で堤防が決壊し、支流でも堤防の決壊や水があふれた場所が相次ぎました。流域では茨城県大子町で1人が死亡し、住宅1500棟余りが浸水しました。
命を守るポイント① 急激な水位上昇に注意
久慈川で命を守るポイント、1つ目は「急激な水位上昇に注意」です。
上流の山間部では、川の左右は山が切り立っているため、降った雨水は山の斜面からすぐ川に流れ込み、下流に流れ始めます。
また、久慈川の流域は南北に縦に長くなっています。
2019年の台風19号では、台風が南から北に向かう際に次々に雨雲が流れ込みました。
流域全体に雨雲がかかり、同時に雨が降り注ぐため、災害のリスクが急激に高まります。大雨が降り続いたら、すぐに氾濫への備えが必要です。
国や茨城県は、上流の各地に雨量計を設置しています。上流の広い範囲で強い雨量を観測し続けていれば、災害の危険性が高まります。
国は、急激な増水への対策を急いでいます。台風19号で被害を受けた場所を中心に、緊急的に堤防の整備や川底を掘る工事を進めています。
例えば、洪水の拡大を防ぐために伝統的に使われてきた「霞堤」の整備。
川が増水した際に、内部を緩やかに浸水させて川の水を一時的に蓄えることで、堤防の決壊を防ぐことができます。
また、上流で堤防が決壊したとき、川からあふれた水を再び川に流すことができます。
緊急対策工事は、2026年度の完成を目指しています。
工事が終わるまでにはまだまだ時間がかかる。 自分が住んでいるところのリスクをしっかりと把握しながら、必要な情報を速やかに入手し、いざとなれば避難行動につなげられるような事前準備が必要になってくる。
命を守るポイント② 「富岡」の水位を確認
下流の平野部に住む人は、平野部の手前の水位を確認することが重要です。
久慈川の場合は「富岡観測所」の水位がポイントになります。
水位2.9mが高齢者等避難の目安で、3.5mが避難指示の目安です。
台風19号のときには、午後10時に高齢者等避難の目安になりました。
そして、わずか1時間で避難指示の目安を超えました。最終的には観測史上最高となる5mを超える水位になり、決壊が起きました。
新たな水位計の設置も進んでいます。過去の水害の教訓を踏まえて、国は28か所に水位計を設置。
従来の水位計では、「川底から何m」かが表示されています。
一方、この水位計にはセンサーがあり、水が「堤防の高さまであと何m」に迫っているかを知ることができます。
簡易型のカメラも新たに7か所に設置。いざというときに川の状況が見た目でもわかるようにしています。
こうした情報は、国土交通省のホームページ「川の防災情報」で見ることができます。
(国土交通省「川の防災情報」 https://www.river.go.jp/ 外部リンクに遷移します)
近隣の水位観測所やカメラの映像で川の状況を確認しながら、避難の必要があるかどうか情報収集するといいと思います。
命を守るポイント③ 支流の合流点にも注意
久慈川には多数の支流が合流しています。
そうした場所の1つ、浅川と久慈川の合流点の周辺では、浅川が決壊し、広い範囲が水につかりました。
国は、氾濫が起きていないかをチェックするセンサーを合流点の付近に重点的に整備しています。
こうした場所で氾濫のリスクを見るために活用できるのが、気象庁のホームページ「キキクル」です。
氾濫の危険度が高い場合は、黄色・赤色、そして紫色に変わっていきます。
(気象庁「キキクル」 https://www.jma.go.jp/bosai/risk/ 外部リンクに遷移します)
雨量に加えて近隣の水位状況、川の状況を広く情報収集していただくことが重要になってくると思います。
NHKニュース・防災アプリも活用を
NHKのニュース・防災アプリでも、各地の水位や氾濫の危険度を確認することができます。「マップ」機能では、見たい場所の現在の水位を確認できるほか、特に注意が必要な場所ではNHKのアナウンサーが取材した「防災のポイント」をお伝えしています。
ぜひ活用してみてください。