土地の相続 どうすれば? 司法書士によるチェックリスト
今、土地の相続が注目されています。所有者が誰であるか明らかにするために、国に届け出る「相続登記」が4月から義務化されました。原則、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に「相続登記」をしなければ、10万円以下の過料が科される可能性もあります。「実家の土地を相続しそう…」「全然知らない土地を相続したけど、どうすれば…」というあなたのために、相続前・相続後に何をすればいいのか、専門家に聞きました。
(クローズアップ現代取材班)
【関連番組】NHKプラスで4/30(火) 夜7:57 まで見逃し配信👇
土地相続チェックリスト
不動産登記に詳しい司法書士の中本彰さん、齋藤毅さんに、土地を「相続する前/後」で何をすべきか、チェック項目をあげてもらいました。
相続前にできること
□土地の数や場所を把握
被相続人(例:自分の親)が、どこにどれだけの土地を持っているかを知るには「課税明細書」を見ることがオススメです。年に1回、郵送される固定資産税の通知書の中に入っているので、しっかりチェックしましょう。
1点注意として、非課税の土地(住宅街のごみステーションの土地や私道など)は「課税明細書」には記載されないことがあります。これについては、自分の親など被相続人にそうした土地がないかを尋ねたり、土地の権利書を確認したりすることなどが大事です。
□誰の名義か確認
親族が多かったり、先祖代々の土地があったりする場合は注意してほしいのですが、固定資産税を払っている人と、登記されている人が異なっている(たとえば曽祖父母の名義のまま)ケースがあります。こうしたときは、法務局で、登記簿謄本(登記事項証明書)を取得し、土地の所有者を確認するとよいでしょう(郵送でも取得可能です)。
オススメは、インターネットを用いた登記情報の取得です。法務局や郵送よりも費用が安く、手間も少ないので、我々もよく利用します。
登記情報提供サービス👇
https://www1.touki.or.jp/(※NHKサイトを離れます)
□相続後の扱い方を家族で相談
ここまで行えば一安心…ではありません。「相続人が多い…」「相続のときに紛糾しそう…」といった場合には、遺言書の作成や、生前贈与を検討することをオススメします。
「相続時に紛糾する」のは、決して価値のある土地に限った話ではありません。よくあるのは、被相続人に子どもがいないケースです。この場合、親やきょうだいが相続人になりますので、相続人が苦労する様子をたびたび見かけます。また、相続人に未成年者や行方不明者、認知症の方がいる場合も、後で述べるとおり、家庭裁判所での手続きが必要になりますので、同様に苦労します。こうした場合には、被相続人とよく相談し、上記の検討をすることを特にオススメします。なお、自分で遺言書を作る場合(自筆証書遺言)には、遺言として認められるための要件があるので、お近くの司法書士に相談し、遺言書の文案をチェックしてもらうとよいでしょう。
「遺言書を作るのはハードルが高い…」という方も多いので、日本司法書士会連合会では「エンディングノート」を作ることもオススメしています。遺言書のような法的な拘束力はありませんが、その人の持っている財産などが一目でわかるようになっており、相続後のいろいろな手続きの際に大変役立ちます。また、自分で情報を整理するうちに遺言書の作成へとつながっていくことも多いので、まずはエンディングノートの作成から始めてはいかがでしょうか。
日本司法書士会連合会のホームページ👇
https://www.shiho-shoshi.or.jp/gallery/panf/(※NHKサイトを離れます)
相続後に行うこと
□遺言書の有無を確認
相続が発生したとき、遺言書があるなら、原則としてそのとおりに相続の手続きをします。
遺言書がないときは、「遺産分割協議書」を作ることになります。亡くなった人の遺産を、相続人全員でどう分けるのかを話し合い、合意した内容をまとめた書類です。相続発生後のプロセスは、「遺産分割協議書」をいかにスムーズに作っていくかの道だと言って良いでしょう。
□法定相続人を確定
まず、市区町村の役場で、亡くなった親など被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などを取得しましょう。それによって、配偶者や子どもといった相続人となる者がどれだけいるのかを確認することになります。
□財産目録を作成
土地をどう相続するか、遺産の分け方を考える際には、どれだけ被相続人が遺産を持っているかを明らかにする財産目録を作ることが大事です。土地については、固定資産税の「課税明細書」をもとに作成することになりますが、先に述べたとおり、非課税の不動産や、固定資産税を払っている人と登記されている人とが異なるケースがありますので、注意が必要です。また、この後の遺産分割をスムーズに行うには、エンディングノートを活用しながら、土地以外の遺産(現金預貯金・借金等)についての目録も作っておいた方が良いでしょう。
□遺産分割の協議
遺産分割の協議の場では、相続人全員が、土地を含めた遺産をどう相続するのかを決めていきます。協議の場では、「管理コストがかかる“負”動産を引き継ぐから、お金を少し多めに…」などといった話もよく出てきます。財産目録をうまく活用し、土地だけでなく、土地以外の遺産を含めた被相続人の財産を誰がどう相続するのか、将来を見すえて、全体のバランスをとるとよいでしょう。
また、相続人に未成年者、行方不明者、認知症の方がいる場合には、遺産分割の協議をする前に家庭裁判所の手続きが必要になります。例えば、認知症の方がいる場合、成年後見制度を用いる必要があります。これらの手続きには、時間やコストもかかってきますので、早めにお近くの司法書士に相談し、対処してもらう必要があります。
□登記に向けて必要書類をそろえる
遺言書または遺産分割協議書の準備が整ったら、必要な書類をそろえて法務局に向かい、相続登記の申請をします。多くの種類の書類が必要になりますので、申請にあたっては、あらかじめお近くの司法書士または地元の司法書士会に相談することがベストです。この点、日本司法書士会連合会では、お近くの司法書士の事務所がわかる「しほサーチ」というサイトを運営しています。ぜひ活用してください。
しほサーチ👇
https://souzoku.shiho-shoshi.or.jp/lp/(※NHKサイトを離れます)
最後に
司法書士に、どのタイミングで何を基準に相談すべきか、気にする方が多くいらっしゃいます。
この点、相続前の段階では、遺言書が必要か否かが1つのタイミング&基準になると思われます。特に相続が紛糾するのは、①被相続人に子どもがおらず、きょうだいが相続人となるケース ②現配偶者とは別に子どもがいるケースです。これらの場合には、遺言書があったほうが良いので、早めの相談をオススメします。
被相続人が亡くなった後の段階では、先ほど上げた項目を自分でやってみて、行き詰まったら、すぐに相談すると良いと思います。タイミングとしては、四十九日の法要前後という方が多い印象ですが、相続放棄のタイミングである3か月目や、相続税を申告する10か月目を最終期限として、それらの期限に間に合うように相談をする方もいらっしゃいます。もっとも、こうしたタイミングは人それぞれであり、亡くなった直後に相談を受けることも少なくありませんので、あくまで目安としてお考えください。
相続は往々にして、配偶者や親族にすら悩みを吐露できないことも多いようです。抱え込まず、気軽に司法書士を頼ってください。
【関連番組】NHKプラスで4/30(火) 夜7:57 まで見逃し配信👇