日本でも…『スポーツ賭博』の闇 ―あなたは大丈夫?ギャンブル依存症
「まじめで礼儀正しい息子が、まさかスポーツ賭博で依存症になるとは想像もしていませんでした。」
電話口で涙ながらに取材に応じてくれたある女性の言葉です。
女性の息子は、スポーツ賭博で多額の借金を抱え、窃盗で逮捕されました。
水原一平元通訳が関与していた「スポーツ賭博」。
日本でも、水面下で危険な実態が広がっていました。
(「クローズアップ現代」取材班)
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日本で広がる違法「スポーツ賭博」
「あしたまでに借金を返済しないとネットで脅すと言われた。助けてほしい。」
3年前のある日、息子から借金があると相談を受けた母親の佐藤さん(仮)。
そこで初めて息子がスポーツ賭博にはまっていた事実を知りました。
息子は知人や消費者金融からの借金にとどまらずヤミ金にも手を出し、すでに数百万円の借金を抱えていました。
「息子は、お金を借りてはスポーツ賭博に入金して、1週間で100万円、2週間で200万円と借金が膨らんでいました。ヤミ金で借金するために、顔写真や私たち家族の電話番号、会社名まで渡していたので、必死に借金を肩代わりしてしまいました。」
これ以上周囲に迷惑が及ばないよう、母親の佐藤さんは借金の返済を必死で手伝い、息子をギャンブル依存症の回復施設にも入れました。しかし、スポーツ賭博への依存は断ち切ることができず、息子はお金欲しさに無銭飲食や窃盗で逮捕され、現在勾留されているといいます。
日本でスポーツ賭博は違法。賭博罪などが適用される犯罪です。
ただ例外として、特別法で認められているものもあります。競輪・競馬・競艇・オートレースの4つの「公営ギャンブル」、サッカー・Jリーグなどの試合結果を予想するtotoやBIGといった「スポーツくじ」は、特別法で認められています。
しかし今、海外に拠点を置くとみられる賭博事業者のオンラインサイトで、日本から違法にスポーツ賭博を行う実態が広がっています。
依存症・借金・・・さらに犯罪に繋がる危険性も
「スポーツ賭博は、ギャンブルの中でも特に危険です。」
ギャンブル依存症の当事者や家族の支援を行う団体「ギャンブル依存症問題を考える会」代表の田中紀子さんです。いま水面下で急速に広がるスポーツ賭博の実態に危機感を訴えています。
「スポーツ賭博は違法であると認識されていないことが一番の問題。スポーツ賭博はオンラインカジノの中でも特に危険。好きなスポーツを応援する興奮と賭け事の興奮が掛け合わさり、のめり込みやすい。さらにスマホで24時間365日賭けることができて、やめどきがないことも危険です。」
コロナ禍をきっかけにオンラインカジノの相談が急増。以前は4%台だった相談件数も、去年は20%に上りました。ギャンブル依存症当事者の中心は若年層で、最近は高校生の相談も増えているといいます。
「部活でスポーツに親しむ高校生が、自分たちが興味を持っているスポーツから、スポーツ賭博を始めてしまったり。」
さらに田中さんが指摘するのは、スポーツ賭博をきっかけに犯罪に手を染めていく若者の実態です。
田中さんらが運営するギャンブル依存症の家族会に相談に来た事案のうち、違法なオンラインカジノ(スポーツ賭博含む)をやっていた相談者の36.1%が犯罪に繋がっていたといいます。
「スポーツ賭博は短期間でのめり込み、借金が膨らむスピードも速いのが特徴です。多額の借金を抱え、返済のために横領や窃盗などをする人もいました。自分の銀行口座や携帯番号などの個人情報を売り飛ばしてブラックリストに乗り、“闇バイト”の勧誘を受けてしまった人もいます。」
一度はまってしまうと、自力で抜け出すことが難しいギャンブル依存症。
田中さんは、自分や家族だけで解決を目指すことは危険で、すぐに自助グループや病院などの専門機関に頼るべきだといいます。
「ギャンブル依存症」は病気―あなたは大丈夫?4つの質問でチェック
「ギャンブル依存症」は病気として認知は低いですが、精神疾患のひとつです。ギャンブル依存症の疑いある人は日本国内で約70万人いるといわれていますが、実際に治療している人はそのうち1%にも満たないといいます。当事者や周囲が気づきにくい病気ですが、早い段階で治療をすれば依存を最小限にくいとめることができます。
☑ ギャンブルをする時は予算・時間の制限決めない、決めても守れない
☑ ギャンブルに勝ったときに『次のギャンブルに使おう』と考える
☑ ギャンブルをしたことを誰かに隠す
☑ ギャンブルに負けた時にすぐに取り返したいと思う
⇒☑ 2つ以上あてはまったら、ギャンブル依存症の可能性あり。
(監修 ギャンブル依存症問題を考える会田中紀子・国立精神・神経医療研究センター松本俊彦博士・筑波大学医学医療系森田展彰)
相談窓口はこちら
●ギャンブル依存症の支援団体
・公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会
●借金問題の相談窓口
・消費者ホットライン
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