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通級や特別支援学級について保護者が知りたい情報まとめ

子どもに発達障害などがあり、通常の学級ではしんどい。対人関係に苦労している、集中して物事に取り組むことが難しい…。こうしたことで悩み、特別支援教育を検討したことがある保護者は少なくないのではないでしょうか。

障害など、困難を抱えている子どものための特別支援教育。いま、日本ではどのような仕組みになっているのでしょうか。実際に子どもが特別支援学級に通っていた保護者の声と合わせて取材しました。

おとなりさんはなやんでる。

【関連番組】おとなりさんはなやんでる。「特別支援教育」

2023年6月24日(土)午後12時30分放送[NHK Eテレ]
※放送から1週間は見逃し配信をご覧いただけます。

特別支援教育、受けてみたいけれど…

日本で特別支援教育を受けたい場合、いくつか選択肢があります。

特別支援学校、特別支援学級、通級教室、そして制度上は通常の学級でも受けることができます。しかし、「それぞれの違いが分からない」「どんな教育をしてくれるのか不安」「子どもはそこで楽しく過ごせるの?」と悩む保護者の声を取材で多く耳にしました。

「実際の特別支援教育の内容を知らないため、全般について知りたいです。クラスで、座っていることが難しい生徒なども対象になるのでしょうか?保護者の希望で対象となるのでしょうか?子供に障害の兆候が見られる時、学校から提案してもらえるものなのでしょうか?」(小4長男、小2次男、小1三男の母)

「支援学級は、その子にあった指導をしてくれるのは分かっているけど、学校での周りの子供たちからの目や対応がどうしても気になってしまいます。もし支援級に行ったら今まで仲良くしてくれた子が、もしかしたら急に仲良くしてくれなくなっちゃうかもしれないし、子どもが楽しいか、幸せかどうかを知りたいです」(中1娘の母)

「一体どんな支援が受けられるのかもわからず、勉強に遅れが出るのではないか、そうしたら中学も支援級になってしまうのか…高校は?就職は?と、考えれば考えるほど不安になっています」(小3長男の母)

10年で2倍 特別支援教育を受ける子どもが増えている

今、特別支援教育を受ける子どもの数は、増えています。

2022年度、義務教育を受けている児童生徒数は減少しているのにも関わらず、特別支援教育を受ける子どもたちの数は過去最多のおよそ60万人。10年前の2倍以上にのぼります。中でも特に増えているのが、発達障害など、対人関係や学校で集中して物事に取り組むことに難しさを感じる子どもたちです。

特別支援教育を受ける児童生徒の数
特別支援教育を受ける児童生徒の数

特別支援教育受けられる場所は主に3つあります。

①「特別支援学校」:何らかの障害がある子どもたちだけが通う学校
②「特別支援学級」:通常の学校の中に設置されていて、在籍する子は主にその学級で過ごす
③「通級」:通常の学級に在籍しながら、週に数時間だけ通う
※制度上、通常の教室でも特別支援教育を受けることができます

特別支援教育を受けられる場所
特別支援教育を受けられる場所

特別支援教育 何を学んでいるかというと…

文部科学省の定めによれば、特別支援教育の目的は“自立に向けて、生活上や学習上の困難を克服すること”。

そのため、コミュニケーションの方法を学んだり、物事を整理して考える練習をしたりなど、それぞれの子どもに合わせた「自立活動」を行っています。

コミュニケーションの授業の様子
コミュニケーションの授業の様子

こちらの都内の公立中学校の通級教室で行われていたのは、コミュニケーションの授業です。

先生

「“もっとうまく説明できたらな”と思うこともあると思うんですけれど、そんな人のために、こちら!“ブロック伝達”をやっていきたいと思います」

ブロックの形をことばだけで説明し伝える
ブロックの形をことばだけで説明し伝える

自分が組んだブロックの形をことばだけで説明し、相手にも同じ形を作ってもらう、というもの。楽しみながらゲーム感覚でことばで伝えるスキルを磨きます。

先生と1対1の個別授業
先生と1対1の個別授業

さらに、先生と1対1の個別の授業もあります。中学3年生のある生徒は、毎週月曜の1時間をこの通級で過ごしているそう。この日の個別の授業は、苦手な「計画を立ててその通りに実行する」という課題に先生と一緒に取り組みました。長期休みの間の宿題の進め方について、計画表を一緒に作りながら、実現しやすいような計画を立てます。

「特別支援学校」「特別支援学級」では、自立活動だけではなく、国語や算数など教科の学習も行いますが「通級」では教科の学習はしない場合が多いそうです。

特別支援教育を受けたい場合、申し込み方法は自治体によって異なります。しかし多くの場合はまず、その子どもが特別支援教育を受けることが適切かどうか、本人・保護者・学校が話し合います。その後、教育委員会が判断しているそうです。

わが子が特別支援教育を受けた 保護者の実感とは

おとなりさんはなやんでる。

特別支援教育を受けるかどうか悩んでいる方の参考になればと、子どもが特別支援教育を受けたことがある、という3人の保護者が話を聞かせてくれました。

イルカさん
イルカさん(中3息子 特別支援学級・小1~現在)
2歳で軽度の発達障害と診断。保育園卒業時に「通常級は難しいと思う」とアドバイスを受け、小学校から特別支援学級へ
カブトムシさん
カブトムシさん(中1息子 特別支援学級・小2~6 中1から通常級)
小1は通常級だったが、友だちとトラブルが起きがち、宿題ができない、授業では気が散るなどの課題があり、小2から特別支援学級へ
つばめさん
つばめさん(高1娘 通級・中1~3 私立高校に進学)
中1のとき、先生から「学校には来ていますがクラスに入れていません」と連絡があり、友だちとのトラブルもあったことから、通級へ

特別支援学級や通級、すぐになじめた?

ディレクター

特別支援級や通級に、お子さんが通い始めて、すぐになじめたのでしょうか?

カブトムシさん(息子が小2~小6特別支援学級)

小2のときに、通常級から特別支援学級に移ったんですが、本人は行きたくないと。実際に行ってみたら、最初は不登校気味になったりとかして、病院の先生とかリハビリを受けていく中でなんとか通えた1年でした。

つばめさん(娘が中1~中3通級)

うちは、中1の2学期から通級に行ったんですけど。最初は、友だちと結構衝突して、硬い表情で帰ってくるときとかがあって。それでも通常級よりマシだから行くみたいな感じだったんです。けれど、通っている間にすごく楽しくなってきて、最後は卒業したくないって言いながら卒業しました。

ディレクター

卒業したくないほど楽しくなったのは、どんなことがきっかけだったのでしょうか。

つばめさん

はじめは自分の意見と友達の意見が違ったときに結構コテンパンにやられることがあって、「自分は絶対間違ってないのに」とうるうるしながらその日にあった話をしていました。そのうちに「どっちが正しいか」という見方から、「あの人はこういう意見、この人はこういう意見で、どれも間違ってもないし正しくもない」と、気持ちも変わって、意見の相違があっても怒らなくなった感じがありました。それは自分を認めてもらって、自信とか余裕が出てきて、初めてできることだと思うので、きっと通級の先生方の関わりが大きかったのだと思います。

カブトムシさん

3年生になって、すごくいい先生に出会って。先生のフォローとかアプローチの仕方がよくて、本人が楽しいと思える学校づくりをしてくださいました。とにかく自己肯定感を上げてくれる先生で。「今日は~ができたよ」って一日一言、もうなんでもいいんですよ。「学校に来たよ、すごいね」とか「友達と仲良くできたよ」「給食食べたよ」とか。そういう通常級にいたら褒められないことを褒められる積み重ねで、「めっちゃ俺のことわかってくれるじゃん」「先生好き!」ってなって。そこから徐々に不登校気味でもなくなって、学校に行けるようになりました。

イルカさん(息子が小1~中3現在 特別支援学級)

うちはもう逆で、最初は楽しく行っていた感じだったんですが、だんだん悪くなっちゃったんですよ。小1ぐらいまではよかったんですけど、3年になったら、友達との差も出てきちゃって。だんだん孤立して、先生から見ると悪いことをするんですよね。支援級の部屋にもいたくなくて、どっか行っちゃうんですよ。クールダウンする場所にもいない。で、もう大変だから注意ばっかりで、毎日っていうぐらい学校から電話があって、「こういうことがありました」「こういうことがありました」って、本当にもう悪い報告ばっかりで、いいことは1つもなかった。

カブトムシさん

担任の先生がそうだったって感じですか。

イルカさん

もう学校全体の風潮がそうでしたね。

そんな状況で本人よりも私の精神面を安定させないと絶対うまくいかないと思ったんで、私が友だちに話を聞いてもらったり。ソーシャルワーカーの先生とか、心理士さんとか、頼れる人を一生懸命見つけてきましたね。もう聞いてもらうしかなかったんですけど、そうすると子どもの良いところを言ってくれるんですよ。それで、そっかそっかと思って、一生懸命自分を保った感じですね。そうだよな、いいところあるよなと思いながら。

中学に入ると担任の先生が3年間一緒で、すごくよく見てくださって。やっぱりいいところを見てくれてるなと思って。本人も先生が大好きだし、安心して行っている感じがします。


カブトムシさん

よかったですね、小学校のとき大変だったから、本当にやっと出会えたって感じですよね。

イルカさん

そうですそうです、本当に。部活の顧問の先生とも連携してやってくれてるんで。何かあると担任の先生に顧問が聞いたりとか、「こういうときどうしたらいい?」っていうのは最初はあったみたいですけどね。いまはもう顧問の先生もわかっているから、「そろそろ調子悪くなるな、休むか?」みたいな感じで声かけてくれたりしてるみたいで、すごく落ち着いています。

カブトムシさん

本当にね、いい先生との出会いで変わりますよね。

“あっちのクラスの子”と言われて…

ディレクター

「特別支援学級に子どもを行かせたいけれど、偏見の目で見られるのではないか、不安がある」という悩みを取材の中でよく聞きました。みなさんはどうでしたか?

カブトムシさん

やっぱり通常級と支援学級と分かれている時点で、「“あっちのクラスの子”が来た」とか「“あっちのクラスの子”がまた向こうに戻った」と言われるのは最初からあったんですけど。「かわってる子」って3年生ぐらいから徐々に言われるようになってきて。「かわってる子が行くクラス」とか、それを誰かが言うと、その周りもそう思っちゃうんですよね。で、先生は「そういうこと言うなよ」って言うけど、そこで終わっちゃう。

通常級の参観日に行ったときも、「ちょっとかわってる」と思われている雰囲気が周りにただよってるなとか、他のお母さんの目線とかで感じるので。

おとなりさんはなやんでる。
つばめさん

わかります、参観日すごく行きにくかった。

カブトムシさん

そう、だから通常級の教室の中に、私、参観日のとき入らなかったんですよ、気まずくて。たまに息子が通常級にポンって行かせてもらったときの、図工の日とか。そういうときの参観日に、私が中に入ってしまうと、何もしてないのに目立ってしまうような気がして。「なになに君のお母さん来たよ」という子もいて。そうしたら、いつも通常級にいないのにそこに来ているから、保護者たちもこっちを見るみたいなのもあったりして、そのクラスにはもう入れない感じはしてました、ずっと。

イルカさん

うちはやっぱり小3ぐらいからみんなとちょっと差ができてきて。本人の事を理解してくれる友だちもいたんですけれど。でも息子は人との関わり方がやっぱり分からないから、「ねーねー」と声をかけるのがものすごく強かったり。そうすると相手の子が「叩かれた」ってなって。だんだんみんなが離れていって。一番ショックだったのは「障害を持っているから一緒にゲームができない」と言われて、貸してもらえないとか。ありましたね。

カブトムシさん

それはきついですよね。親からすると、「それ言っちゃう?」って思いますよね。

イルカさん

あとは、小4までは理解ある先生がいらしたんですよ。それが、いなくなっちゃったんですよね。

カブトムシさん

いなくなったパターンなんですね、出会ったんではなくて…

修学旅行のグループ決めで…

イルカさん

その先生は、学校の行事のときは支援級の子を中心にグループを決めていくやり方だったんですけど、6年生の修学旅行のときは、その理解ある先生がいなくなっていて。通常級の子たちだけで先にグループを決めちゃって、じゃあうちの子どこに入れてくれる?ってみんなに聞くじゃないですか、みんな「嫌だ嫌だ嫌だ」って言っていますと。その報告が学校からあって。

カブトムシさん

なんともいえないですよね。

イルカさん

もう心理士さんとかソーシャルワーカーの先生に聞いてもらうしかなくて。ソーシャルワーカーの先生が学校に来て、うちの子と面談しながら、野球好きだからキャッチボールしながら話してくれたりとか。「もう修学旅行も行って帰ってきたっていうだけでOK」って言ってくれて。だからもう班はどこにも入らず。

カブトムシさん

じゃあもう先生と行動したんですか?

イルカさん

そうです、先生と。でも寝る部屋はね、ちょっと班に入れさせてもらったりしたんです。でも、修学旅行のしおりには名前がなかったです。

カブトムシさん

それは排除するみたいな感じですよね。

イルカさん

なんかそんな感じでしたね。小学校の間は。

「うらやましい、わたしも行きたかった」ということばで前向きになれた

つばめさん

うちは、通級に通ったほうがいいねってなった時に、やっぱり偏見みたいなので、子どもが傷ついちゃうんじゃないかなっていうのはすごく心配で。ちょっとずつ「通うか通わないかは別にして、見学行ってみる?」とか、恐る恐る声掛けていたんですけれど。いざ「入れます」っていう通知をもらった時に、2つ上のおねえちゃんが「え?ついに通える事になったの?うそ、羨ましい、私も行きたかったのに!」って言ったんですよ。そうしたらその一言がすごく響いたみたいで。ノリノリになって、「私行けるんだ!」みたいな。「選ばれし民」みたいになっちゃって。

カブトムシさん

ポジティブにね、いいですよね。

つばめさん

私が心配してたような事は全くなくて、すごくすんなりと受け入れてくれたので、子どもは結構馴染んでいました。通級に通ってるお子さんが結構多い学校だったと思うんですけど、あの子も行ってるよとか、この子も行ってるよ、友達の友達が行ってるみたいな感じで、わりと身近でした。うちの子は部活も入っていたんですけど、部活の友達はいつもちゃんと仲間として見てくれていました。

でもやっぱり通級は場所も全然違うし、逆に私のほうが、気後れしちゃって、あんまり学校に足が向かないところがありました。保護者会とか行っていいのかな?と思いながら過ごしてましたね。

子も親も、自己肯定感が上がった

ディレクター

お子さんだけではなく、親のみなさんも様々な葛藤を抱えながら特別支援教育を受けてこられたのですね。それでも、やっぱり特別支援教育を受けてよかった、と感じることが多かったということでした。どんなところがよかったでしょうか。

カブトムシさん

個々のアプローチをしてもらえるようになったことです。通常級だったら30人一緒の行動を取りましょう、課題も皆同じで、宿題を忘れたら「なぜ忘れたの?」って言われますけど、特別支援学級では一人一人にあった課題と宿題を変えてくれて。一人一人にあったアプローチをしてくれるから、一個一個乗り越えたね、とステップアップをしていくのが目に見えるというのはありますね。

それから、自己肯定感が上がる。小3の時、子どもが先生にほめてもらえることで、私もほめてもらえた気持ちになりました。今までだったら「なんで学校来ないの?」って言われていたのが、「学校に来たよ、すごいね」って毎日連絡票に書いてあると、何か親の私も「いい事したのかな」って、勝手に気持ちが上がって。本人も学校で褒められる事が多いから、そうすると帰ってきた時に当たり散らすことも少なければ、イライラさせることもなくて。いい循環になっていって、私も子どもをほめられるようになって。そうしたら気持ちが明るくなって、2人の関係もちょっとよくなっていく。ほめられると嬉しい。子どもだけじゃない、私も嬉しいと思って、自己肯定感がお互いあがって。その当時の先生にはすごく感謝しています。

「みんなより遅い」から「自分はできる!」へ

つばめさん

うちの子が言っていたのは、今日は何をやるかを自分で選べる事とか、あと自分で何かを企画して、周りの協力も得ながらそれをやってみるとか、そういう事の積み重ねで「自分はできる」という自信がついてきたという風に言ってました。自分が「やれた」とか「できた」って思えることが、通常級にいるときはほとんどないじゃないですか。「みんなより遅い」とか「みんなと違う」とか、できない、できないと思って過ごしていたのが、逆に「今日はこれができた」とか「自分でやり遂げた」とか、そういう経験が積めたことがすごくよかったと言ってました。

あと私が感じたのは、自分のことがよく分かるようになったなということ。「自分ってこうで、これが苦手だから、ここは頼みたい」とか、そういうことが高校生になって言えるようになっていました。通常級じゃなくて通級にいたからこそ、自分の解像度が上がってきたんだなっていうふうに感じました。以前は、自分が何ができないのかわからなかったり、自分がなんで悲しいのかとか、なんでイライラしてるのかとか、全然分からなくてフラストレーションがたまっていたのが、ちょっとずつ、「ここが嫌なんだ」とか、「ここが苦手なんだ」とわかることで、自分のイライラの本質がわかってきたんだと思います。

カブトムシさん

すごい成長してますよね。

つばめさん

もうなんか全然違う人みたいになりました、3年間で。
それとあとは、私としては相談する先ができて。すごく気持ちが楽になったというのもあります。よく見て分かってくれている人で、私が困ったり迷ったりした時に信頼できる先生が身近にいてくれる事が自分の安定にもすごくよかったなと思いました。


小学校から中学校、中学校から高校に上がるときの進路は?

ディレクター

特別支援学級や通級に通うと、その後の進路はどうなるのかが心配だという声もありました。みなさん、進路はどうされましたか?

イルカさん

うちは、高校は特別支援学校に行く予定です。でも今、中3で、みんなは県立高校だったり私立高校に進学するのにって悩んでいて、「僕は行けないのか」という思いもやっぱりあるので。葛藤はあります。

でも、野球が好きで、同じように野球をやっている特別支援学校や特別支援学級の子たちと繋がって。「あ、僕の仲間がいっぱいいる」みたいな。今まで学校ではそんなに支援級の子がいなかったので、やっぱり「僕だけ」「僕だけ」っていうことが多かったですけど。「あ、いっぱいいるんだ」っていうのを見て、だんだんと気持ちが変わっているかなぁとは思いますね。

カブトムシさん

本人の希望もあって、中1から通常級に通っています。小6の通常級の担任の先生が、「彼はいま頑張ってるからみんな応援して」と本人のいない間に言ってくれていたみたいです。「こういうとき、声かけてね」「移動教室の時、わからなくてぼーっとしていたら、“次、理科室だから、準備して”とか教えてくれたら行けるから」とか、クラスの子たちに話してくれたんです。それで当たり前みたいにみんな声かけてくれるようになって。「変な子」扱いでなく「行くよ!」と言ってくれる。そうやって徐々に通常級で過ごす時間を増やして慣れていき、中学からは通常級に入りました。

つばめさん

通常の学級で授業を受ける時間が少なくなるので、やっぱり勉強が遅れるし、習ってないから分らないっていうことが多くて、成績は「これじゃあ公立の高校はむずかしいね」みたいなところはありました。

でも、本人が将来やりたい仕事に就くには大学に行く必要があるので「じゃあ高校どこに行く?見に行こうか?」と言ってあちこち見に行きました。

受験の時は、内申点の配点の高いところは諦めて、当日のテストの点数で行けるところ、自分のやりたいこと、こうなりたいっていうことをアピールして試験を受けられる学校とか、そういうところを中心に私が情報収集しました。「ここなら行けそう」という学校を見つけたあとに子どもを連れてって、どこが気に入るか見ました。入試の時は全日制の普通科と、公立の定時制のクラスと、通信制で通えるところと3つ受ける予定でした。どこも本人に合う学校だから、どこに受かっても大丈夫って本人に言いながら受けましたね。結局、うちの子は全日制の普通科に入学しました。

「普通になってほしい」 から 「この子にしかない良いところをのばす」へ

おとなりさんはなやんでる。
つばめさん

私は娘が通級に入ったばかりの時は「なるべく普通の人になってほしい」みたいな気持ちがあって。「ちょっと自己主張が強い」とか、「こういうことが苦手」という点を直していきたいと先生に話しました。でも、通級の先生から「ここはこの子のいいところだから、あまりここを一生懸命普通の人にしようとすると、いいところが消えちゃうから残していきつつ、うまくできるようにやっていきましょう」というような話を何度かしていただいて。そこですごい「ここは直してほしい」って思っていたことが、見方を変えれば長所なんだなっていうふうに思えた事が結構ありましたね。例えば国語の四択問題とかで8割の人が3に丸を付けるところを、すごい変な視点から見て、「これは4に違いない」みたいな事を言っちゃうところがあって。「それ、ずれてるから!」と思っていたんですけれど、「でもそこがこの子しかない視点でいいところなんだ」というふうに先生に言ってもらって。そうなんだって思えるようになってきました。

特別支援 どう選べばいい?

ディレクター

これから特別支援学級や通級にお子さんが入ることを検討していて、見学に行ったり調べたりしてみようとしている保護者に対して、どんな点に注意して見たり、調べたりしたらよいか、アドバイスをいただけますか?

つばめさん

私は娘に、アドバイスあるかな?って聞いてみたんですけど。そうしたら、「まず保護者がちゃんと見に行って、よくそこの人とお話をしてどんなところか知って。子どもにとって成長できる場所かなっていうのを知ることが大事。」って言ってました。

カブトムシさん

臨機応変に対応してもらえるかどうかっていうのもすごい大事だと思っていて。たとえばうちの息子は通常級から支援級に移ったんですけど、子どもが「また通常級に戻りたい」と言うこともあると思うんですよ。そういう場合に、たとえば「国語、算数だけを最初は通常級にして、そのあと他の教科も少しずつ通常級に戻れるようにしてくれますか?」とか「徐々に戻れるようなアプローチをしてくれますか?」など、こちらの希望に対応してくれるかどうかを最初に聞いておくのもいいかと思います。「うちの学校のルールではむずかしいです」っていう学校もあったり。「大丈夫ですよ」とか、「そのお子さんに合わせて変えていくので」って言ってくれたところは、ちょっと自信持って行かせられるかなとか。

取材を通して

保護者から寄せられたお悩みの中には

「特別支援学級は、学校の中でも離れた場所にあるし、そこに通う子に会うこともなく、謎のベールに包まれている」

というものもありました。

取材を進めると、特別支援学級も通級も、地域や学校によって行われていることはかなり違っていて、ひとくくりに「特別支援学級や通級では、こういうことをしている」とは言いにくいものなのだということに気づきました。さらに、一つ一つの学級も雰囲気は異なりますし、同じ特別支援学級でも担任の先生が変わると雰囲気はとても変わる、というお話も聞きました。

入級の要件も自治体によって異なります。発達障害の診断が必要なところもあれば、診断がなくても支援が必要だと認められれば入級できるというところもあります。毎月、入級を受け付けているところもあれば、1年に1回しか受け付けていないところもあって、本当に様々…。特別支援教育は、地域・学級ごとに様々であるということ自体が、その実態の分かりにくさにつながっているのではないかと感じました。

2022年12月、文部科学省は「通常の学級に在籍する8.8%の子どもたちは特別な教育的支援を必要としている」という調査結果を公表しました。通常の学級でも、しんどさを抱える子どもが大勢いるということです。これからは、通常の学級が様々な子どもにとって過ごしやすい場所に変わる必要があると感じ、番組では、障害のある子もない子も、その他様々なマイノリティの子どもたちも一緒に学ぶ「インクルーシブ教育」についても触れました。どんな子も過ごしやすい学校とは、どんな場所なのか?これから、社会全体で考えていかなければいけないと、強く感じています。

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おとなりさんはなやんでる。
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この記事の執筆者

「おとなりさんはなやんでる。」班 ディレクター
渥美 素子

不登校取材歴16年。フリースクール、ホームエデュケーション、インクルーシブ教育に関連する番組も多数制作。自身も不登校経験者。

みんなのコメント(4件)

感想
リコ
30代 女性
2023年12月13日
すごく参考になりました。現在年中、軽度発達障害の息子がおり、発達テストの結果支援級を勧められているところです。いろいろ調べて頭では分かっていながらも出来れば普通級にという希望をどこかで抱いていますが、本人が楽しく通って、生きていってほしいと思い支援級について前向きに考えれるようになってきました。仕事をしながらの療育など課題はありますが、家族が笑って過ごせるように親にも子供にも負担なく生活できるよう模索していきたいです。
感想
さげまゆ
50代 女性
2023年10月28日
教員ではない学校職員です。
数年ぶりに学校勤務になり、大きな変化を感じ、個人的な感想ですが…

①発達障害を教員が認知、周知するようになり気づきが増えた
②wisc検査が一般化し、検査優勢、数値優勢でひとり歩きしている。
③教員数の不足、質の低下及び社会全体の多様化により、集団指導・一斉指導が困難、迷走している印象

なので、不登校、発達障害の生徒など集団生活をおくれない生徒は、特別支援枠に入れようとする学校側の事情もあります。

確かに個別指導の利点は将来において意味がありますが、選別や大人の事情で特別支援に入れることがないことを願います。

※ 昭和の時代から変化ない差別を助長するような「特別支援」の名称変更は、必須事項です。また、成績表がつかない為に、進路選択が厳しくなることは将来の就労機会を奪う事にもなり必須検討事項です。
体験談
ころすけ
40代 女性
2023年7月6日
長女(小学校3年生)が特別支援学級(知的)に在籍しています。1年生から特別支援学級にいます。そのためなのか、通常級のお友達とも普通に遊んだり登下校したりしていますが、やはり通常級の子供とは遊びの内容が違ってきたことを最近よく感じています。
勉強面では子供が苦手なところ、わかっていないところはゆっくりと、好きな科目についてはどんどん進めてくださって子供にはあっていたのだとおもっています。
悩み
はとんとん
40代 女性
2023年7月4日
ASDの年長男児の来年の就学先に悩んでいます。学校が勉強するのが本分と捉えたとして集団でついていけずに遅れるのか個別で最小限むしろマイナスな授業内容で終えるのかどちらがベターなのか。学歴を求めるわけではないですが勉強するのが楽しくなってほしいだけなのですが。人間関係も今はまだ幼稚園で先生が介入してやっていけているものをどう本人が処理していけるのか。人見知りしないむしろグイグイいくタイプの性格なのでちょっと見は問題どころか長所に見えるのも厄介で。
将来を考えると定型発達の子も巻き込んで共生ということを学んでほしくインクルーシブ教育に期待しますが、、まだまだ過渡期だなと感じます。それに自分の子で苦労させるのも嫌だなという親のエゴもありますが誰かがやっていかなければならないとも思います。この先、この子はどうなるのか今の選択は間違っているのではと思うだけで死にたくなる日々でつらいです。