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KOM_Iさん「若い子に頼らず大人も行動」

「水曜日のカンパネラ」の初代ボーカルで、アーティストのKOM_I(コムアイ)さん。気候変動について危機感を覚え、仲間とプロジェクトを立ち上げてSNSでSDGsについて発信、イベントも行っています。実は、数年までは地球温暖化について真剣に考える事はなかったというKOM_Iさん。行動をおこすきっかけとなった出来事や、気候変動を訴える若者たちとの連携についても聞きました。さらには、私たちメディアに対してリクエストも…。
(地球のミライ取材班 「NHK首都圏ネットワーク」より)

地球温暖化は大丈夫だと思っていた

KOM_Iさん

「紛争問題に興味があった10年くらい前は正直、環境問題はそこまで大きな問題じゃないと思っていました。私は1992年生まれですが、ずっと油断していて、全然大丈夫そうだと思っていました。それがここ数年、NPOが行っている気候変動について学ぶ講座を受けて、例えば、産業革命以降で平均気温が1.5℃上がるとこれぐらい、2℃あがるとこれぐらいっていう予測を見た時に、本当にまずい状況にあることを実感して、意識が変わりました」

気候変動に危機感を覚え、仲間とともに立ち上げたのが「水」をテーマにしたプロジェクトです。生きるために欠かすことが出来ない「水」をテーマにすること、気候変動問題を「自分事」としてとらえることができると考え、アート作品にして訴えています。

左・HYPE FREE WATER「GoGreenGroup」enoshima 右・HYPE FREE WATER「贅沢な水分補給「紙パックの飲料水」Hydration Lux 3」
KOM_Iさん

「地球環境って大きいですが全部つながっていて、自分の行動や肉体とのつながりを感じられるか、感じられなというところがとても大事なポイントになってくると思うんです。
自分たちの体も70、80%水でできていると言われているし、水は気体になり、液体になり、固体にもなって、形を変える。国境とか気にしないですよね。

海ですべてつながっているし、雲になって、雨になって、川になって、氷になって、人間たちが引いたラインとか気にせず、地球上を駆け巡っている。地球環境と自分という関係で考えた時に、その水が自分の中にもあるということが、“自分の問題でもある”と分かりやすく考えられると思ったんです。

最近興味があるのは日本の下水処理についてです。自分たちの排水が河川に流れ出ているということを知らなくて、そういう状況をもっと知りたいと思って、新しいテクノロジーで水を再生し、もう1回使うことに取り組んでいる会社に話を聞きに行ったり、東京海洋大学の先生に海の生態系について話を聞きに行ったりしています。
取材しながら得たことを、みんなに知ってもらうためにグラフィックや映像にして伝える活動もしています。

個人ではパワーシフトというのを呼びかけています。電気を買う先を変えるのって1回の手続きで済みます。毎月電気代を払っていて、そのお金の行き先が変わるわけですよね。
生活のベースにあるものとかを変えた方がすごく楽だし、インパクトが大きいなと思っています」

気候変動ではなく「気候危機」

KOM_Iさんは気候変動を表現するときにあえて使っているのが“気候危機”ということば。近年頻発している災害を目の当たりにして、“気候危機”と言うことばを選んで使うようになったといいます。

「自然災害も本当に増えましたよね。ドカ雪とかは気候変動の影響もあるんですよね。
寒くなったりとか、大量に雪が降ったりするんだったら大丈夫じゃないか?みたいなふうに思われる人もいるかもしれませんが世界的に見てよくないと思います。(詳しくは→気候変動と寒波について)。
地球温暖化で海面も上昇するし、永久凍土も溶け出すし、後戻りがどんどんできなくなる。詳しくは→永久凍土と「モリウイルス」)。生物多様性の面でもそうですし、人間が住めなくなる場所も増えています。

気付いたときにはもう遅いっていうのが“気候危機”だと思っていて、英語ではClimate Change(気候変動)とClimate Crisis(気候危機)と両方のことばが使われています。
“気候変動”だと『よくなる場所もあるんじゃない?』『悪くなる所もあるけどよくなる面もあるんじゃない?』みたいに考える人がいると思いますが、気温の上昇を1.5℃に抑えなくてはいけないと思っているので、私はあえて“気候危機”ということばを使うようにしています。

本当に気候変動に危機感を持っていると、すべての見方が変わってしまうんですよね。
『これ何でできてる?』とか『誰がどこでどんなふうに作って、どういうふうに運ばれてきている?』とか、食べ物とかもそうだし、自分の関わるすべて、生活のすべての事柄に地球環境への影響がある、負荷があるというふうにいろいろチェックするようになりました」

「縛られ過ぎたら、そもそも都会で生活するのが間違っているってことになってしまう、でも開き直るのもまた違うと思っています。そういう意識がある人が増えるだけでも違うので、生活を変えないにしても、やはり知っている人は増えないといけないと思っています。

いろんな仕事をしている人たち、いろんな職種の人たち、いろんな年齢層、いろんなジェンダーの人たちがそれぞれの場所でいつものことをしながら、気候危機と自分の生活は何か結びついているという意識がある。

そういうことが増えていったら法律も変わりやすくなったり、売れる商品が変わってきたりして“気候危機”の助けになると思います」

「聞いてみたい」という姿勢で話す

KOM_Iさんに2022年のことし、あるライブに参加してほしいとのオファーがありました。
20代の若者たちが中心となって10月に開いた、気候変動を訴えるライブ「ClimateLiveJapan」です。このライブ、海外の若者たちとも連携していて、2021年「Climate Live」は世界23か国で行われました。

気候変動対策に取り組む若者たちの姿が多く見られるようになりましたが、まだまだ一緒に活動する同世代の仲間たちが少ないことが彼らの悩みです。気候変動について関心がない同じ世代の人たちにどう伝えていけばよいのか、KOM_Iさん自身は「伝え方」についてどう考えているのでしょうか。

10月に開催されたClimateLiveJapan
KOM_Iさん

「伝えたいことが決まっているときって、聞く耳を持てなかったりとかするから、それがすごく難しいなと思います。自分が話をする時には『知ってほしい』というふうに言うのではなくて、『聞いてみたい』という姿勢で話し出すようにしています。

例えば、気候危機がこれぐらい進んでいて、自分たちの子どもの世代とかが本当に生きていけるかわからない危機的な状況にある、となった時に『どうしたらいいと思う?』みたいな感じで言ったらいいのではないかと思います。一緒に考える人が増えないと分からないし、解決できなそうだから人に伝えたいわけじゃないですか。そういうことを大事にして、話せたらいいなと思っています。でも、すごく難しいですが。

ただ音楽は何かメッセージを伝えるための道具ではないと思います。私が音楽活動を始めた時は、実はそう思っていて、音楽を“道具”にするつもりで始めました。ですが芸術、芸能や音楽の方が全部を超越しているような気がして、考え方が変わったんですよね。

1つのメッセージを伝えるために使うにはあまりにも美しすぎるし、広大ですし、あまりにも漠然とした変化を体とか意識にもたらすものだと思っています。何か具体的なメッセージを伝えるのだったら、ことばで言った方が絶対に伝わると思います。

ただ対立してるはずの人どうしが音楽でだったらまとまれたりだとか、意識が違うはずなのに1つになれたり、手をつないでいないのに全員で手つないでるような感覚になれたりだとか、そういうすごく不思議なことが音楽にはあります。

私がやりたいのは、そういうメッセージを直接的に伝えるための道具に音楽をするのではなくて、その日いろんな音楽がその場で響くことによって、その場にいた人がもっと解放されたりとか、生命力を上げるみたいな。その結果、もっとポジティブにこの地球に長く人間が住めるようにもっとできることがあるよね、やりたいっていう感じに内側から上げていくようなことができたらいいと思っています」

最後に、KOM_Iさんは“気候危機”を解決するためにとメディアや大人に対しての「リクエスト」も…。

KOM_Iさん

「若い子に頼っていてはダメだなと思いますね。大学生とか一生懸命やってくれているのに、もっとしっかりしてなきゃいけないはずの30代がこんなにのんびりしてていいんだろうか?と思います。権力もお金もある大人たちが、もっとこんなんじゃダメだろうって思う方がいいと思います。

私がテレビに対して言いたいのは、例えば、『これぐらい永久凍土が溶けてきていますよ』とか『このままいくと本当にやばいですよ』という気候危機の現状や悲惨さみたいなことは伝えていますが、実際にそれをどのように止めたらいいかはあまり伝えられていません。

(気候変動の対策として)今の経済活動を弱めていかなくてはいけないし、減速させていかなければならないと思います。いまのような物質社会ではダメですし、物も作りすぎているし、企業の活動も少し縮小していかなくてはいけないと思います。

違う豊かさがある未来をつくる方向にいかなくてはなりません。実際にどうしたらいいかについてあまり言わないですよね。そんなことでは変わらないですよね。そういうことがフラストレーションになっていると思います」

取材している私たちは、“気候危機”の解決するためのヒントや手がかりをもっと伝えていかなければならないと感じました。

KOM_Iさんのことばからあなたは何を受け取りましたか?気候変動に対して、みなさんが考える解決のヒントはありますか?
ぜひコメント欄で教えてください。

若い世代がライブで伝える“気候変動”

首都圏ネットワーク(東京・神奈川・千葉・埼玉)

担当 地球のミライの
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みんなのコメント(1件)

提言
19歳以下 女性
2022年12月14日
気候危機に対して大人がもっと行動してほしいです。学生がやっていると注目はされますが、大人の方が権力もお金もある人が多くより大きな変化を起こしやすいと思います。それに、1.5度に抑えるには私たちが大人になって力をつけるのを待っていたのでは間に合わないことは科学的に明らかになっています。「若者の皆さんより良い世の中を作ってください」は間違いです。若者ももちろん行動する必要がありますが、大人の方も力を持っていると意識して行動していただきたいです。