
朝ドラ「カムカムエヴリバディ」主題歌を歌うAIさんと考えるSDGs
11月から始まった連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」の主題歌、「アルデバラン」を歌うAIさん。実はことし6月、SDGsをテーマにするインスタグラム「TAP:Take Action for Peace」立ち上げ、SDGsの達成に向けて起こせるアクションについて発信も行っています。 11月21日(日)には、「未来に残したい地球の姿」をテーマに行われるNHK音楽祭2021「地球のミライコンサート」に出演。SDGsについて発信する思いや、ふたりの子どもたちのためにこれからどんな未来を作っていきたいかなどお話を聞きました。
(「地球のミライ」取材班 伊藤加奈子、酒井利枝子)
AIさんは、ことしSDGsについて発信するインスタグラムを立ち上げられましたが、
SDGsに関心を持つようになったきっかけは何だったのですか?
AIさん:実は、SDGsっていうことばが出てきた時に、「何の話だろう?」と思ったのが最初で。どういうことか分からない中で、取材で「どれかやっていますか?」と聞かれて「どれかやっているってどういうことだろう?」と思っていました。「エコ」っていうことばが出てきた時もそんな感じだったんですよね。「みんなエコエコ言っているけど、なんだエコって?」みたいな。
でも、SDGsの中身を見ていくと、環境によかったり、人の幸せにつながったり、平和につながったり、すごくシンプルなことだなと思って。そういうことにはもともと興味があったんです。なので、SDGsに興味を持ったって言うより、ふだん自然とやっていることに、ただ「SDGs」っていう名前が付いているんだなと思うようになったという感じです。
SDGsは難しいことではなくて、ふだん関心を持っていることや、やっていることそのものだったんだという気づきがあったんですね。インスタグラムは、なぜ立ち上げようと思ったのですか?
AIさん:SDGsって何個もあるじゃないですか。「17個全部分からない」とか「何番と言われても、何の話ですか」みたいな人も、まだ知らない人も絶対いっぱいいるし、私の友達なんか「は?」って感じだと思うんです。それで、SDGsについて私も含めて一緒に学べていけたらなというのがきっかけでインスタグラムを立ち上げて、そこからいろんな人に会って話を聞いたりするようになりました。「これもSDGsなんだ」とか、「こんなことをやっている人もいるんだ、こういうことにつながるんだ」とか、すごく楽しくいろんなことを教えてもらっていますね、今。

「Take Action for Peace」に込めた思い
AIさんが立ち上げたインスタグラムの名前は、「TAP:Take Action for Peace」で、SDGsに対して起こせるアクションについても発信しています。「Take Action for Peace」ということばには、どんな思いを込めたのでしょうか。
AIさん:まず、「Peace(平和)」ということばには全部が入るなと思っているので、「Peace」は入れたかったんです。それから、わかりやすい方がいいと思って「Take Action(アクションを起こす)」。それを略して、「TAP(タップ)」って言えば、覚えやすいかなと思いました。子どものころ、タップダンスをやっていたということもあって(笑)
「Peace」ということばに関しては、子どものときに見た、ごはんが足りなくて汚い水を飲んで、おなかがポッコリになって子どもが亡くなっていく映像とか、アメリカのアーティストたちが行った「USA for Africa」のチャリティーソング「We Are The World」が印象に残っていて、ずっと世界が平和になったらいいなと思ってきました。そうすると全部がクリアになると思っていて、環境破壊も、亡くなる子どもたちも、差別とかも、いろんなことがなくなっていくかなと思って。
私の子どもも上の子が「平和」っていう名前で、平和ということばもいいし、呼ぶたびに思い出すかなと思ってつけました。たまに怒っている時は、全然思い出さないんですけどね(笑)でも落ち着いている時は、やっぱり名前を呼ぶと思い出しますよね、平和に育てないとなと。
主題歌を歌っている「カムカムエヴリバディ」で、まさしく戦前、戦争中、戦後が描かれますが、もうどれだけ今の時代が、なんというか、恵まれているかというのを感じたりもしています。

「Take Action(アクションを起こす)」ということに関しては、AIさん自身は、ふだんどういうアクションを心がけていますか?
AIさん:何か特別なことをしなくても、みんな自然とやっていることがいっぱいあると思うんですよね。だから、ただ回数を増やすとか、いつもよりちょっと意識をするだけで、何かさらにいいことにつながると、自分では思っていますね。子どもたちに優しくする、ちゃんと子どもを育てる、食べ物や健康を意識するとかもそうですよね。
「意識がある」というだけでも大事かなと思います。こうしないといけないとか気合いを入れすぎると続かないし、疲れるよね。みんなだって、毎日自分の生活があるから、それだけで十分。コロナというだけでも気をつけないといけないし、子どもがいたら何でも触るし、なめるしね。自分に加えて、家族の健康を守るというだけでもやっぱり大変なので。
あとは、自分が毎日、普通に暮らしていくために、なるべく自分の感情をコントロールしていきたいなというのは意識しています。家ではよく夫とか子どもとかとよく言い合っていますけど、そんなのはいいんですよ。そうじゃなくて、「憎しむ」とかそういう気持ちにならないように。そういうことが全部、平和や多様性につながっている感じがします。
おふたりのお子さんを育てていらっしゃいますが、そのことがAIさんがアクションをする上でのモチベーションになっている部分はありますか?
AIさん:子どもたちからは、パワーももらうし、かわいくてしょうがないですけど、やっぱり大変っていう、そのどっちもが同時にあるんですよね。でも、そのおかげですごく鍛えられていて。私が適当にぱぱってやると見ているからね、あの人たちが。小さい時は、よく親に「神様が見ているとか誰かが見ているから、罰が当たるよ」と言われたりしていたけど、今は、子どもが見ているから。
上の子の平和は6歳ですけど、すごくしっかりしているんですよね。ちゃんとよくなさそうなことを注意されますし。だからしっかりやらないとなと、やっぱり鍛えられていますね。下の子は博愛(はくあ)って言うんですけど、全然「博愛感」がなくて、何にも欲張りで、やっぱ下の子なんでね(笑)。「シェアしないと!」っていつも言っているんです。まだ2歳ですけどね。

環境問題への関心は?
私たちはSDGsの中で、主に環境問題について取り上げる「地球のミライ」というWEBサイトとインスタグラムを運営しているのですが、AIさんは、環境問題について何か関心を持っていることはありますか?
AIさん:知り合いがプラスチックごみを拾いに行っていたり、海外の友達から「プラスチックを減らす取り組みをしているからコメントちょうだい」と言われたり、プラスチックに関してそういう話が一気に来るようになりましたね。対応しているうちに、自分でもプラスチック使わない方がいいんだっていう感じにだんだんなるんですよ。どうしてもレジ袋を買わないといけない時に、罪悪感を覚えるようになりました。商品のパッケージも含めて、プラスチックを使わないように変えられないのかなとも思います。
環境の問題を見えるようにすることで、それをみんながたまたま見て、「ああこんなにやばいんだ」って思って、ちょっとずつ変わってくるかもしれないから、すごくいいことだと思う。自分がいいことだと思うことをするときって、やっぱり危機感を感じる時だと思うんですよね。
罪悪感とのバランスは難しくないですか?
AIさん:あー難しいですよね。多分もうほとんどの人たちがいいことをいっぱいしていると思うんですよね。これも、あれもしないとって思うと罪悪感も出てきたりするけど、だったら次に倍やればいいとか、私はそういう感じ。ちょっとずつでいいと思うんですよね。 あとは、自分が楽しまないと。これしないといけないってなると苦しいし疲れるから。いいアイデアだなとか、自分のためになるなと思えば苦がない。ポジティブでいないとね。
SDGsのことを発信する上で意識していることや、ここは難しいなと思うことはありますか?
AIさん:あんまり難しいとは思ってなくて。難しいことはないから、難しく言わなければいいかなと思って。単純に何でも自分がいいと思うことをやればいいんだと思いますね。私だったら、優しくなりたいなとか、ごみを拾うかとかそういう感じで。人が見ていない時に、どれだけ自分がちゃんとやれるかも大事ですよね。
それから、やっぱり自分とのつながりを考えます。自分がいいことをすると何かいいことが返ってくる、悪いことすると悪いことが返ってくるっていう考えなので。

「地球のミライ」のために歌が持つ可能性とは?
NHKでは、11月21日にSDGsキャンペーン「未来へ 17action」の一環としてNHK音楽祭2021「地球のミライコンサート」の8K公開生放送を行います。「未来に残したい地球の姿」をテーマに、音楽の力で、未来に向けて「持続可能な地球環境」を引き継いでいくことの大切さを伝えるコンサートです。
AIさんも「地球のミライ」コンサートに出演し、「アルテバラン」と「ハピネス」を歌われる予定です。どんな思いを込めて歌いたいと考えているのかうかがいました。
AIさん:曲たちも歌う時によって、毎回感情が違うんですけど、「地球のミライ」のためと言われたら、そういうことを気持ちに込めないとなと思うので、「ハピネス」だったら「君が笑えば この世界中に もっともっと幸せが広がる。君が笑えばすべてがよくなる。この手でその手でつながる」という歌詞があるので、どっちかというと世界中に向けて、未来に向けて歌いたいな。「ハピネス」は、本当にぶわっとみんなを喜ばせたいっていう感じで、「アルテバラン」は逆にひとりひとり近い人に対して、元気がないとか、毎日苦しいという人に向けて歌いたいですね。その2つのバランスがちょうどいいかなと思いますね。
森山直太朗さんが書かれた「アルデバラン」のサビは、「笑って笑って愛しい人、不穏な未来に手をたたいて」という歌詞です。「誰ひとり取り残さない」というSDGsの精神にもつながっているようにも感じられるこの歌詞。AIさんはどう捉えて歌っているのかを聞いてみました。
AIさん:歌詞で、すごくすてきだなって思ったのが、本当に「今のこの世の中の感じ」がすごく出ているなって思っていて。みんなある意味、このウイルスのせいで自由じゃないというか、やりたいことがスムーズにいかないですよね。やろうとしても人の命が懸かっていると思ったら制限されるとか、いろいろ自分の気持ちがモヤモヤして。その感じにすごく「アルデバラン」ってぴったりだなと思っていて。
「不穏な未来に手をたたいて、君と君の大切な人が幸せである そのために」というのは、ハピネスも似たような歌詞ではあるんですけど、全然違うんですよね。直太朗くんがどんな感じで書いたかは分からないですけど、「アルデバラン」ってひとりの人に向けてっていう感じがすごく伝わってきて、「目の前のこの人だけに言いたい」というパワーっていうのがすごいと思うんですよね。私はそういうふうに歌っていますね、気持ちは。私も自分がやっぱり音楽と歌に救われてきたので、自分もそういうふうにできたらいいなって思っています。
「地球のミライ」のために
これから、インスタグラム「Take Action for Peace」をどういう場にしていきたいなど、目指していることはありますか?
AIさん:今コロナ禍であんまり頻繁に人に会ってしゃべれないけど、もっとSDGsについていろいろ頑張っている人や何かやっている人たちとか、いろんな人のところに行って、見て、経験するのが一番いいなと思っています。それをみんながインスタグラムで見て、これなら自分でもできると思ってもらえたらいいと思います。あとは、例えばネット上の募金に協力するとか、何かの情報を拡散するだけでも力になるとか、いろいろなやり方があると思っています。
お話の中で、ふたりの子どもたちのこともたっぷり語ってくれたAIさん。子どもたちのために、これからどういう未来を作っていきたいと考えているのでしょうか。
AIさん:一番はやっぱり平和が続いてほしい。子どもがいるとだんだん自分というよりも子どもたちが楽しんでほしいな、長生きしてほしいなと思うので。子どもたちに対してはみんな、ぜいたくなことじゃなくていいから、ただもう普通の生活ができるようにしてあげてほしいなとは思いますね。普通に家があって、普通にごはんが食べられて、普通に遊び行けて、普通にお風呂に入れて、普通に起きて、外に行って・・・っていうその「普通」っていうのが、すごく今でも難しいと思うんですよ。だって問題がちょっと出てくるとそれでみんな普通ではいられなくなるし、余裕も無くなるし、そうなると崩れやすくなるから、やっぱり普通の毎日が過ごせるような、そういう環境とか未来であってほしいなと思いますね。

最後に「地球のミライ」のために、AIさんがこれからやっていきたい「アクション」について、色紙に書いていただきました。

AIさん:「いい事を思うことをする」これです。
単純ですけど、結局これが全部つながってくる。子どもに対しても、いいことと思うことをやったり、町に対しても、人に対しても、これならできるかなと。「私は毎日こうする」とか具体的に書くと、それをしないといけなくなって、苦しくなってできないわけよ・・・!自分のハードルを上げたくないので、よけいなことは書かない(笑)。だから「いい事と思うことをする」。この大ざっぱなこの感じで、ちょっとずつやっていきたいです。
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