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愛媛で発見!謎の食材「テッポウ」とは?

~手ごろなお値段だった謎の食材を取材、おいしくいただくまで~ 
  • 2023年08月14日

初めてのひとり暮らしで自炊に励む入局1年目、松山放送局アナウンサーの熊井幹(くまい・もとき)です。愛媛のスーパーマーケットで発見した謎の食材「テッポウ」について取材し、おいしくいただくまでをまとめました。                                         (NHK松山放送局 熊井 幹)

愛媛で発見!謎の食材「テッポウ」とは?

見つけた謎の食材「テッポウ」はこちら!

「テッポウ」と書かれた謎!?の魚の切り身

「テッポウ」と書かれていた謎の魚の切り身です。しっかり量も入っていて、お値段も手ごろな感じ。神奈川出身の私にとって、初めて目にする「テッポウ」とは、どんな魚なのか。早速、購入してみました。

「テッポウ」とは?

この「テッポウ」、実は「サメの別名」でした。
松山市内を含めた愛媛県の中予(ちゅうよ)地方で主に使われる名称だといいます。
地域によっては「マブカ」や「ホシザメ」などと呼ぶこともあるそうです。

なぜ「テッポウ」と呼ぶ?

取材した松山市の鮮魚店の方は、ほかの鮮魚店にも確かめてくださいました。
はっきりとした理由は不明でしたが、魚の形が「銃に似ている」説が濃厚だということでした。

愛媛の郷土料理について書かれた書籍を図書館で調べてみると、その中にも「サメの形が鉄砲の形に似ていることからテッポウと呼ばれる」いう記述がありました。

ちなみに、この「テッポウ」。「フグ」のことを指す地域もあるそうです。「当たると命に関わる」ことが、その理由だということでした。

”呼び方”は 地域によって違う?

サメは、一般的には「フカ」と呼ばれることが多いようですが、調べてみると、さまざまな呼び方があることがわかりました。

例えば、愛媛県の南予(なんよ)地方にある宇和島市(うわじまし)では、私が気になった「テッポウ」という呼び方はなじみがないということで、一般的な「フカ」のほかに「ノウグリ」という呼び方があるそうです。

ほかにも変わった呼び方がないか調べてみると、瀬戸内海を挟んだ四国のお向かい、中国地方の一部では、サメのことを「ワニ」と呼んでいることがわかりました。

なぜ「テッポウ」を食べる?

この「テッポウ」。海の幸が豊富な愛媛では、特産の「じゃこ天」や「かまぼこ」などの原料、いわゆる「すり身」にして活用されてきました。

昔は、どの地域でも、今のように冷蔵・冷凍技術は発達していません。当然、山間部など、海から遠く離れるほど、運ぶ間に魚の鮮度が落ちてしまいます。当然、おいしく安全に食べることは難しかったのです。

その一方で重宝されたのが「テッポウ」でした。傷みにくく、腐りにくかったからですが、その理由は、体内にため込む「アンモニア」の影響だと言われています。

「テッポウ」の食べ方は?

調べてみると「湯引き」という料理法が見つかりました。
愛媛の郷土料理の1つとして紹介されていて、その記述の中には、
「皮を引き、つくりて、煮湯をかけ、よく白め、生姜酢にてよし、さっと茹がきてもよし」と、江戸時代の料理書に紹介されていると書かれていました。

「テッポウの湯引き」を作ってみた!

水を沸騰させた鍋の中へ「テッポウ」を入れて、2分ほど、ゆでます。

入れるとすぐ「テッポウ」は白っぽくなる

その後、冷水にさらし、食べやすい大きさに切ります。

頑丈そうに見える骨は意外にも!?

頑丈そうに見える骨がありました。
ところが、包丁を入れてみると、意外にも柔らかく、切りやすかったです。サメが「軟骨魚類」に分類されるゆえんです。

皿に盛りつけ、お好みで、ネギのほか、みがらしみそなどを添えれば、できあがりです。
「みがらしみそ」とは、愛媛県の南予(なんよ)地方で代表的な調味料です。愛媛特産の「麦みそ」に「からし」「酢」「砂糖」などを練り込んで作られます。

「テッポウ」は「みがらしみそ」(写真 右)とよく合う

調理は、思った以上に簡単でした。
「テッポウ」自体は、淡白な味でしたが「みがらしみそ」と一緒にいただくと、上品でおいしく、ごはんがすすみました。もちろん、しょうゆなどでシンプルに味わってもおいしかったです。

「テッポウ」取材、継続中!

調べれば調べるほど「テッポウ」は奥深いと感じています。

例えば、専門の漁業者はいるのか、どのように捕るのか、どの海域で多く捕れるのか、数は増えているのか減っているのか、謎は多いままです。
鮮魚店に伺うと、テッポウ1匹のうち、食べられる身の部分は少なく(5キロのテッポウで、およそ1キロだそう)、さらに、その下処理も大変だということで、取り扱う鮮魚店や小売店の数は減少傾向にあるということでした。

私が赴任した愛媛はおいしい食べ物が多く、中でも「テッポウ」は存在感がそれほど強くない食材なのかもしれませんが、スーパーマーケットで偶然目にした魚の切り身は、地域に根づいた食材の今後など、多くの興味を湧かせてくれています。今後も取材を継続します!

サメの天敵は ”かまぼこ屋” !? ~こぼれ話~

上方落語「兵庫船」に、サメにまつわる話が登場します。 
兵庫から大阪に船で向かう途中、船が急に止まります。
船の周りをサメがぐるぐる回って、なかなか離れないのです。
乗客が騒ぐ中、ひとりの男が、サメの口に、たばこの灰をはたき落とします。
するとサメは海中に潜っていき、船は無事に進み始めます。
驚いた乗客が「あなたは何をしている人で?」と聞くと、
「俺はただのかまぼこ屋だよ」と男は答えて話は終わります。

サメはかまぼこの原料になることから、かまぼこ屋がサメの天敵として描かれています。

  • 熊井 幹

    松山放送局 アナウンサー

    熊井 幹

    2023年入局。
    高校までは野球、大学はライフセービングに熱中。
    趣味は、電車に乗ること、ドライブ、散歩、スイーツ巡り。座右の銘「なんくるないさー」「臨時休業」。 

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