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高校野球愛媛大会 4年ぶりに響く、スタンドからの応援

  • 2023年08月03日

川之江高校の優勝で締めくくられた2023年夏の高校野球愛媛大会。
数々の熱戦に盛り上がった人も多いのではないでしょうか。

ことしは4年ぶりに声を出しての応援が解禁。
特別な思いを胸にスタンドから見守った、「もう一つの夏」を取材しました。

(NHK松山放送局 大久保凜)

【北条高校吹奏楽部】 支え合う 野球部との絆

松山市にある北条高校野球部の応援を担うのは、吹奏楽部です。
現在の部員は24名。
全国大会に過去5回出場したこともあります。

吹奏楽部の秋の演奏会

吹奏楽部と野球部は、数ある部活の中でも特別な絆で結ばれてきました。
夏の大会で吹奏楽部が野球部を応援するだけでなく、野球部も吹奏楽部の晴れ舞台である秋の演奏会に駆けつけて盛り上げる、そんな交流が毎年行われていたのです。

客席で盛り上げる野球部を中心とする生徒たち

しかしこの3年間は、スタンドからの声出しが禁止に。
野球部を演奏で応援することはできませんでした。
それでも野球部員たちは欠かさず演奏会に足を運んでくれました。
ことしの野球応援のリーダーを努める3年生の平岡菜花さんは、初めて迎える夏の大会で感謝の気持ちも伝えたいと考えていました。

平岡菜花さん(北条高校3年)

「野球部が年演奏会に来てくれてうれしかったんで、ずっとなんかお返しがしたいなと思っていました」

野球部の背中を押す“特別な曲”

そのために平岡さんたちが特に力を入れて練習してきた曲があります。

「愛媛ぞなもしラプソディー」。 
20年ほど前から受け継がれてきた北条高校のテーマソングです。
全校生徒のお気に入りの曲です。

中本康太さん(野球部主将)

「“ぞなもし”が流れたら踊ってしまいます。楽しくなるし、みんな盛り上がれる曲だと思います」

曲が始まると、奏者が一斉に立ち上がり、楽器を上下に動かしたり、掛け声を上げて演奏します。
踊るような振り付けもあり、野球部も踊れるそうです。

どんな曲なのか、その一部はこちらから動画でご覧いただけます。

スタンドから届ける 恩返しの演奏

北条高校野球部の初戦は、この夏を象徴するような暑さの中で迎えました。
初めての声出し応援。
部員たちは懸命にスタンドから演奏を続けました。

同点で迎えた試合の終盤。
初戦突破に1点がどうしても欲しい場面で「ぞなもしラプソディー」の演奏が始まりました。

スタンドは一気に盛り上がり、それに応えるように野球部もグラウンドで躍動しました。

平岡菜花さん(北条高校3年) 
「こっちも興奮してきて練習以上に熱が入った演奏ができたと思います。自分たちの全力が出せたと思うので野球部のみんなには喜んでもらえたかなって思いました」

【済美高校チアリーダー】初めて知った応援の“本質”

春夏通じて8回の甲子園出場を果たしている強豪、済美高校野球部を応援するのはチアリーダーです。
部活ではなく、20年ほど前に野球部を応援するために結成された有志の集まりです。

野球部を応援することに特化した活動ですが、声出し応援が禁止されたこの3年間は球場のスタンドではなくステージ上に活躍の場を移していました。

そのため、今のメンバーは硬式野球部の試合で応援をしたことは一度もありません。

顧問の相原怜子さんは、済美高校チアリーダーのOBで大の野球ファン。
学生時代に全力で野球部を応援したことは、かけがえのない思い出です。
初めての経験で不安があっても、応援の魅力を味わってもらいたいと考えていました。

相原怜子さん(済美高校チアリーダー顧問)
「自分はすごく楽しかったことを覚えています。みんなと応援できてうれしいし、周りの子も声を出してくれてうれしいし。生徒たちには、球場が一つになる感じを味わってほしいです。試合展開が白熱して一般の生徒たちが声を出してくれた時に、自分たちが頑張ってるから、周りの子も声出してくれたんだって達成感を味わってほしい。みんな踊ることが大好きだからそっちに意識が行きがちだけど、野球応援は聞こえてくる声とか応援がいかに試合をしてる本人に届くかなので、声と思いを野球部に届けるっていうのが一番メインだと思います」

2年生の大谷胡桃さんも、初めての声出し応援に戸惑っていた1人です。

顧問の相原さんと交わしてきたノートに、その心境がつづられていました。

大谷さんのノート 赤字:相原さんのコメント

大谷胡桃さん(済美高校2年)
「練習した時とかも周りの声がすごい聞こえづらくて。球場行ったらもっと聞こえづらいんじゃないかなって思ったりしたら大丈夫かなみたいな。初めて球場で応援をするので、楽しみな気持ちよりも不安が勝ってしまいます」

相原さんは、グラウンドまで届くように声を精いっぱい出すことが、応援の本質だと繰り返し伝えました。

練習を重ねるうちに少しずつメンバーの声量は大きくなっていき、不安を示すことも減っていきました。

大谷胡桃さん(済美高校2年) 
「球場に行ったら、振り付けは選手から見えることはないと思うので、しっかり声で届いて応援してあげられたらいいなと思います」

応援でしか得られないもの

初めてスタンドから応援する済美高校の初戦。
グラウンドまで届くよう、序盤から精いっぱい声を張り上げました。

苦しい試合展開になりましたが、最後まで諦めず声を出し続けました。

相原怜子さん(済美高校チアリーダー顧問) 
「すごく頑張っていたと思います。ひとりひとり声が出せていたし、一生懸命応援して、“人を応援したい”とか“勝ってほしい”っていう気持ち。チアにとってそれが原点なので、そういう気持ちを今回得られたっていうのはチアにとっては今回成長だったと思います」

初めての応援を終えた大谷さん。
目には涙が浮かんでいました。

大谷胡桃さん 
「人を応援するっていうのは簡単なことじゃないけど、すごい素敵なことだなと思いました。応援の力で球場の雰囲気変わると思うので、選手の背中を押してあげられるような応援をこれからもし続けたいと思います」

取材を終えて

今回、何より印象的だったのは応援する彼らがとにかく楽しそうだったことです。自分ではない誰かのために声を張り上げ、笑顔で応援しつづけること。酷暑の中、熱気に包まれた球場では簡単なことではありません。それでも心から楽しそうに演奏や声で選手を鼓舞する彼らには、その場の空気を包み込み、球場を一つにするパワーを感じました。球場が一体となる瞬間が返ってきたことを心から嬉しく思うとともに応援の素晴らしさを改めて感じました。

  • 大久保凜

    大久保凜

    2022年入局のディレクターで今回の高校野球愛媛大会中継のメインディレクターを務めた。愛媛が初めての一人暮らし。 目標はバイクの免許を取って愛媛・四国を隅々まで回ること。

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