熊本地震から8年 娘の教訓をつないで
- 2024年04月12日
熊本地震からまもなく8年。今回は「災害関連死」をテーマにお伝えします。
「災害関連死」とは、災害による直接の死は免れたものの、その後の避難生活による体調の悪化などが原因で死亡し、災害との因果関係が認定されたものです。
熊本地震では災害関連死が相次ぎ、県内で直接死の4倍以上にあたる218人が亡くなりました。ことし1月の能登半島地震でも 災害関連死が疑われる事例が相次いでいて、いかに防いでいくかが課題となっています。
熊本地震での災害関連死の原因を見ると、避難所生活等の肉体的・精神的負担で亡くなった人が81人。
特に発災直後は、避難所の生活環境の改善が なかなか進んでいないという指摘もあります。
また、病院の被災・機能低下などが原因で亡くなった人は46人。
病院の耐震化、医療を継続するためのBCPの強化も問われました。
こうしたなか、災害関連死で4歳の娘を亡くした合志市の女性が、当時の経験を語る活動をしています。その思いを取材しました。
(熊本放送局 記者・岸川優也)
災害関連死 娘の教訓をつないで
宮﨑さくらさんは、熊本地震で最愛の娘・花梨(かりん)ちゃんを亡くしました。
8年前、4歳だった花梨ちゃん。
生まれた時から重い心臓病があり、手術を繰り返していましたが、回復して小学校に通うのを楽しみにしていました。
熊本地震が起こったのは、花梨ちゃんが手術後で、安静にしていることが絶対条件だった時。
入院先の病院は 倒壊するおそれがあり、転院を余儀なくされました。
わずかな距離の移動も難しかったなかで、およそ100キロ離れた福岡県までの転院を強いられた花梨ちゃん。
陸路で搬送されましたが、転院先の病院で息を引き取り、その後、災害関連死に認定されました。
当初はなかなか受け入れられなかった娘の死。
しかし、その後の災害でも 災害関連死が繰り返されるなかで、次第に花梨ちゃんの経験を 次につなげてほしいと考えるようになりました。
また違う場所で同じ事が起きた時に、それを見て「ああしておけばよかったな」とか「こうしとけばよかったな」とか、そういうのがずっと繰り返されるんじゃなくて、どっかでやっぱり「あ、あの時とは違うな」って、「よかったな」って思いたいんです。
宮﨑さんは、花梨ちゃんの経験を語る活動を始めました。
去年12月、南海トラフ地震で被害が予想される宮崎県で、看護を学ぶ高校生を前に講演。
花梨が助かる道が もしあるなら、それは多分、未来の災害関連死の誰かを助ける道、1人でも減らす道に必ずつながります。
防ぎ得た死を減らすために、たった1人の話ですけれど、何かを感じて覚えていてくれたらうれしいです。
語ることへの思い
宮﨑さんは3月、「災害関連死を考える会」を設立。
他の災害関連死の事例も広く共有し、繰り返さないための検証につなげていきたいと考えています。
一人ひとりの声を聞かせていただいて、それを紹介すること。
その中で見えてくる、例えばいろんな疑問点だったりとか、改善できるようなところだったりとかをみんなで考えて、次にまた良い形でつないでいけたら。
私がお話しするのは、花梨が生きた証であって、熊本地震の記憶であって。
災害関連死になってしまった1人の女の子、4歳の女の子の経験。
聞いていただいた方の中で、何か花梨が少しでも力になれたりとか、何かを考えるきっかけになってくれたらっていうのが私の願いなので。
少しでも聞いてもらえるように、これからも変わらず、花梨と一緒に話をしていこうと思っています。
災害関連死を防ぐために
宮﨑さんは、災害関連死で亡くなるまでの経緯を詳しく伝えることで、
例えば花梨ちゃんの場合であれば、
・病院の耐震性が確保されていたら
・より短時間で搬送できる ヘリコプターが利用できたなら
こうした点を災害に関わるそれぞれの人に考えてもらいたいと訴えています。
そうした中 新たに始められた「災害関連死を考える会」。
花梨ちゃんだけでなく、災害関連死で亡くなったほかの方の教訓も次につなげて、犠牲を少しでも防ぐことが大切です。
8年となりますが、熊本地震の教訓を風化させず、丁寧に振り返っていくことが大切だと感じました。
【NHKプラス 見逃し配信】
災害関連死を防ぎたい~熊本地震遺族の思い~
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