ふるさと人吉に元気や希望を

火の国サラマンダーズ　石本裕大投手

2023年07月12日

球磨川の流域を中心に、多くの地域が被害を受けた令和2年7月豪雨から3年。
その被災地である人吉市で、プロ野球独立リーグ、火の国サラマンダーズの石本裕大投手は生まれ育ちました。
最速147キロのストレートとスライダーが武器の中継ぎ投手で、昨シーズンはチーム最多の40試合に登板。リーグ連覇と独立リーグ日本一に貢献しました。

ピッチングに必要なことをすべてレベルアップしないと、まだまだNPBにはいけないと思う。
小学校の時からの夢でもあり目標でもあるNPB入りを達成できるよう、精一杯頑張りたい。

人吉で始まった野球人生

石本投手は野球好きの父や祖父のすすめで小学3年生の時に野球を始めました。
投手として徐々に頭角を現し、人吉高校3年生の時にはエースとしてチームを支える存在に。

大学を卒業後は「2年以内にNPBに行く」と強い決意を持って、独立リーグの徳島インディゴソックスに入団し、日本一も経験しました。しかしNPBへのステップアップは叶わず、、、。就職しようと地元人吉に戻りました。

（石本投手）
2年で帰ってきたが、どうしても自分の中で「もうちょっとやれたんじゃないか」と心残りがあって。その気持ちがあった中で地元にチームができるという話だったので、今しかできないことをやらずに後悔するよりやって後悔しようと「絶対受かってやる」という気持ちでトライアウトを受けました。

一度現役を諦めたものの地元熊本にチームができると聞き、トライアウトを受け、競技に復帰することを決めました。

そこに豪雨が...

しかしトライアウトに向けて準備をしていた3年前の7月4日、豪雨がふるさとを襲いました。
幸いにも家族や自宅は無事でしたが、小学生の時に練習していたグラウンドなどが被災しました。

（石本投手）
人吉なのかなって信じられない感情がずっとあった。通学路だったところ、毎日通っていたところが水害で違う景色になっていたのでショックでした。

トライアウトを控えながらも練習を一時中断し、ボランティアセンターや被災した知り合いの家に通った石本投手。「練習よりもボランティアの方が優先だとずっと思っていた」と当時を振り返っていました。

夢へ再挑戦

石本投手は11月にふるさと人吉で行われたトライアウトに無事合格し、サラマンダーズ一期生として入団しました。
傷ついた地元を目の当たりにし、再挑戦への思いがより強くなったと言います。

（石本投手）
入る直前に災害が起こったので、より一層人吉のために元気や希望を与えられるように頑張ろうと思った。一番は自分が一生懸命プレーすることで、あとは見てくださる方がどう感じとるかはわからないですけど、自分ができることはそれが一番。全力で一球一球投げるだけ。

石本投手は中継ぎとして8回の重要なポジションを任されています。5月の宮崎戦でも1イニングを無失点で抑え、チームの期待に応えていました。
馬原孝浩監督は石本投手について...。

強みはスライダーの切れ。普段は温厚で準備とかきっちりやるタイプだが、マウンドに上がると強気で攻めるタイプ。気持ちの強さが普段とはギャップがあるので大きな武器だ。結果を残す選手だと思っているので、1年通して後ろを守ってほしい。

野球に向き合う姿や人柄から監督や選手、スタッフに慕われている石本投手。毎日のスケジュールを聞いてみると、練習開始の約2時間前にグラウンドに来て練習の準備やトレーニングを始めることや、毎日の食事管理はもちろん、休日でもトレーニングに体のケアと、NPBで活躍するためにたゆまぬ努力を重ねていることがわかりました。