【フミダス!ガマダス】最新技術で豪雨に備えろ!
- 2023年06月12日
おととし、最大10メートル近い浸水のリスクが判明した菊池市藤田地区。
「フミダス!ガマダス」では、去年の6月から、一年かけて水害対策の見直しに取り組む住民たちを追ってきました。
どうすれば適切なタイミングで避難できるのか、悩む住民たち。
解決のカギは令和2年7月豪雨で被災した地域で実用化が進む、ある技術でした。
“1000年に一度の雨” 何が起こる?
およそ100世帯が暮らす菊池市の藤田地区。去年、水害対策の見直しに取り組み始めました。
きっかけは全国的な浸水想定の基準の大幅な見直しでした。
“100年に一度の雨”を想定した従来のハザードマップでは、浸水のリスクはほとんどないとされていました。
ところが“1000年に一度の雨”を想定した新たなハザードマップでは、地区の大部分が、最大10メートル浸水。対策を考え直す必要に迫られたのです。
1000年に一度の雨が降ると、何が起きるのか?
対策のため、住民たちが向かったのは、3年前の豪雨で50人が亡くなった球磨川流域です。
人吉市では、球磨川本流があふれるより前に、支流や用水路が次々と氾濫。
本流から離れた住宅街でも人が流され、亡くなっていました。わずかな道路の傾斜が、人を流すほどの流れを生んだと見られています。
(人吉市の住民)
来るときはいっぺんに来る。水は。
(藤田地区の住民)
いつ逃げるかが肝心。なかなか難しい。夜中ならなおさら・・・
いかに早く避難を始めることができるのか。課題が見えてきました。
悩む住民たち いつ避難を呼びかけるか
去年7月。九州で初めて「線状降水帯の予測情報」が出ました。
藤田地区をたずねてみると・・・自主防災組織の役員が集まっていました。
住民にいつ避難を呼びかけるか、そのタイミングを悩んでいました。
(自主防災会会長 石井謙二さん)
まだ(菊池市付近の雨雲が)少ないからいいけど。濃くなったら怖い。線状降水帯が来ないことを祈るだけ。
頼れる情報は、テレビの気象情報。しかし、それだけでは判断できず、川や水路を見回りました。
菊池川の支流、河原(かわはる)川に、大きな流木が流れ着いていました。
結局この日は、自主防災組織が住民に避難を呼びかけることはなく、避難のタイミングを判断する難しさが浮き彫りになりました。
“最新技術で” 避難のタイミングを判断
どうすれば適切なタイミングで住人に避難を呼びかけられるのか。
藤田地区の住民が向かったのは、先進的な取り組みが始まっている、球磨村の神瀬地区。大学と共同で、新たな対策に取り組んでいました。
(神瀬地区の住民)
「防災川カメラ」と言います。
(藤田地区の住民)
これ?あの小さいやつ!?
防犯カメラなどに使われる小型のカメラ。1台5000円ほどのこのカメラはインターネットにつながっていて、川の水位などを24時間確認することができます。神瀬地区には8台のカメラが取り付けられています。どんな風に見えるのか、見せてもらいました。
これが、ほぼリアルタイムで確認できるカメラの映像です。
こちらは夜間の映像。暗くても川やその周辺の様子を確認することができます。
(神瀬地区の住民)
国土交通省のカメラは球磨川本流の水量、雨量を見る形なんですけど、これは住民が見たくてしょうがない場所につけられるので、かなりメリットある。
(藤田地区の住民)
そこが渡れるのかを把握したいですよね。逃げる前に。これなら(逃げるのは)無理とか、どっちに逃げないといけないとか。判断はすぐできる、こういう映像があると。
なおかつ、携帯で見られるというのが魅力。
藤田地区でもカメラ設置へ 場所選びのポイントは?
藤田地区でも、カメラの設置を検討することになりました。神瀬地区で実験を進める専門家も加わり、候補地を探ります。
(専門家)
地域の方が避難行動を検討する場所につけたい。この橋にどれくらい水位が来ているか見たいとか。
まず向かったのは河原(かわはる)川です。去年7月の大雨でも流木が流れてきていました。
(住民)
(流木が)必ず引っ掛かる。この上流も山がある。(流木が)来る可能性は非常に大きい。
身近な用水路も、大雨が降ると真っ先にあふれたといいます。
(専門家)
あふれだしたら道路と水路の境がわからない。柵もないので、歩いていてそこに落ちて亡くなる。それが怖い。ここがどうなっているのか、確認ができればいい。
最後に向かったのが、集落の中心を横切る藤田川。
河川改修で最近はあふれたことはありませんが、1000年に一度の雨に備えて、あえて対策することにしました。
(専門家)
地域の方々で相談をして、ここまで水位が来たら避難しようとか、自分たちのルールを決めるのが大事。
春。いよいよカメラの取り付けです。
専門家の指導のもと、電源のない場所でも使えるよう、ソーラーパネルやバッテリーで動くシステムを組みました。
集落で管理やメンテナンスができるよう、住民が自分たちで作業しました。
豪雨の際に、確認したい場所がしっかりと映るようにカメラの向きを調整。
遠隔でこまめに映像を確認できるようになったことで、危険が迫る前に避難を呼びかけられるようになりました。
(住民)
去年の台風で待機したことを考えると、雨の中に出ていかなくても(水位が)増えてきたことはわかる。それが一番いい。
今後、藤田地区では専門家の協力も得ながら「カメラの情報をどのように避難に生かしていくか」考えていくことにしています。