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流域治水の最前線 (2021年掲載)

国は、去年、これまでの方針を転換し、「流域治水」という新たな考え方を示しました。
流域全体であらゆる対策を組み合わせて水害を軽減させようという考え方です。県内でも「流域治水」の取り組みが進められています。

清流として全国に知られる仁淀川。その支流、日下川が流れる高知県日高村は、仁淀川と合流する河口付近の地盤が高くなっている独特の地形からたびたび水害に悩まされてきました。

日高村の至る所に見られるこの看板。7年前の平成26年、台風12号の大雨で日下川が増水し、浸水したことを示しています。 この時、村では住宅109棟が床上まで水につかる大きな被害が出ました。

その他
日高村建設課 前田課長

「昔から日高村の歴史は 水との戦いと言われている」

こうした中、対策として国が進めているのが、放水路の建設です。日下川が増水した際に、本流の仁淀川に水を流すことができ、ハード面で浸水の被害を防ごうという取り組みです。 すでに2本が完成し、建設中の1本とあわせると毎秒170トンの水を排出できると見込まれています。

さらに、新たな備えとして村が取り組んだのが条例の制定です。浸水が予想される地域で新たに住宅を建てる場合には、床の高さを基準以上にすることなどを義務づける全国でも珍しい内容となっていて、 今後、被害を受ける場所を増やさないことを目指しています。

住民による備えが進められている地域もあります。多くの住宅が建ち並ぶいの町中心部では、5メートル以上の浸水が想定されています。 この地域には、仁淀川の支流、宇治川が流れ、下流に向けて地盤の高さが上がる地形となっていることから、何度も水害に悩まされてきました。

いの町是友地区の防災倉庫に引かれている赤と青のライン。青は宇治川氾濫の場合の浸水の高さ、赤は仁淀川が氾濫した時の浸水の高さを示しています。 仁淀川の氾濫で想定される浸水は最悪の場合、7メートルから10メートル。近年、全国で豪雨の被害が相次ぐ中、地区の自主防災会の会長を務める樋口義博さんは、危機感を強めてきました。

その他
自主防災会会長 樋口義博さん

「ハザードマップができて、この高さまで水が来ることが現実に分かってから 危機感を抱いた。どこでもハザードマップ通りに被害が出ている」

水害から住民の命を守るため、樋口さんがまず取り組んでいるのが高台の避難スペースの確保です。 災害時に住民が車で避難できるよう、地区を回って高台の空き地を探し、所有者と直接、交渉しています。これまでに18か所を確保し、今後は、仮設トイレの設置なども進めることにしています。

国や自治体は、ことし3月、こうした取り組みを含めた流域治水の推進方針をまとめ、必要となる対策を示しました。 20年後をめどに洪水の犠牲者ゼロを目指す内容となっています。流域全体で取り組みが動き始める中、国も、自治体や住民の対策と組み合わせることで、全体の備えを高めていきたいと考えています。

その他
高知河川国道事務所 多田直人所長

「住み方、逃げ方などほかの対策を含めてどう組み合わせていくかをもう1回考えようという取り組みなので、お互いの対策の長所で苦手なところを補完し合うことを目指したい」