血液がんの最新治療 CAR-T細胞療法とは?

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悪性リンパ腫 白血病 多発性骨髄腫

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CAR-T細胞療法とは

CAR-T細胞療法は、2019年に承認された血液がんの最新治療です。血液がんには、白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などがあります。抗がん剤、放射線などの標準的な治療が行われますが、こうした治療に効果がなかった場合や再発した場合に、CAR-T細胞療法が行われることがあります。CAR-T細胞療法は、患者さん自身が持っている免疫細胞の一種、T細胞を血液から採取して、がんと戦うように強化してから体に戻すという高度な治療法です。

CAR-T細胞療法 承認されている製品

2022年7月現在、下記の4つの製品が承認されています。対象となる病気はそれぞれ異なります。

①チサゲンレクルユーセル(キムリア)2019年承認

○白血病 再発または難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病

○悪性リンパ腫 再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫

②アキシカブタゲンシロルユーセル(イエスカルタ)2021年承認

○悪性リンパ腫

再発または難治性の

  • びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
  • 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫
  • 形質転換濾胞性リンパ腫
  • 高悪性度B細胞リンパ腫

③リソカブタゲンマラルユーセル(ブレヤンジ)2021年承認

○悪性リンパ腫

再発または難治性の

  • びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
  • 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫
  • 形質転換低悪性度非ホジキンリンパ腫
  • 高悪性度B細胞リンパ腫
  • 濾胞性リンパ腫

④イデカブタゲンビクルユーセル(アベクマ)2022年承認

○多発性骨髄腫 再発または難治性の多発性骨髄腫

CAR-T細胞療法は、主に血液内科の専門医がいる医療機関で行われています。適用される疾患や治療に入るための条件が様々あり、CAR-T細胞療法が受けられるかどうかは個々の患者さんによって異なります。直接、医療機関に問い合わせはせず、治療法の詳細については主治医の先生にご相談下さい。また、国の制度に基づいて一定の効果や安全性が確認され、保険適用になった治療のため、高額療養費制度が利用できますので、自己負担は抑えられています。

治療の流れ

CAR-T細胞療法は、患者さん自身の免疫細胞を強化する治療法です。

  1. まず、患者さんの血液から免疫細胞の一種であるT細胞を集めます。
    集めたT細胞は製薬会社に送られます。
    患者さんの血液から免疫細胞の一種であるT細胞を集めます
  2. 製薬会社ではT細胞に、加工されたウイルスを加えます。このウイルスは自分の増殖に必要な遺伝子が取り除かれ、替わりに「がんを捕らえる武器」の遺伝子が組み込まれています。すると、「がんを捕らえる武器」の遺伝子がウイルスによって細胞の中まで運ばれます。
    製薬会社ではT細胞に、加工されたウイルスを加える
  3. T細胞に運ばれた遺伝子から「がんを捕らえる武器」がたくさん作られ、細胞の表面に現れます。
    この武器はCAR(Chimeric Antigen Receptor, キメラ抗原受容体)という名前です。このCARがT細胞を強化するため、「CAR-T細胞療法」と呼ばれています。
    がんを捕らえる武器がたくさん作られ、細胞の表面に現れる
  4. 強化されたT細胞を患者さんに戻します。
    強化されたT細胞を患者さんに戻す
  5. すると、T細胞ががん細胞を次々に捕まえ、攻撃して倒してくれるのです。
    T細胞ががん細胞を次々に捕まえ、攻撃して倒してくれる

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CAR-T細胞療法に関するQ&A

CAR-T細胞療法の治験と治療を担当してきた北海道大学医学研究院 教授の豊嶋崇徳さんに、CAR-T細胞療法について詳しくうかがいました。

◎CAR-T細胞療法はどれくらい効果があるのでしょうか?

豊嶋:対象となるのは再発または難治性の患者さんですが、およそ半数以上の患者さんにがんの縮小がみられます。もう少し詳しく言いますと、白血病で7~8割程度、悪性リンパ腫で5~7割程度の患者さんにがんの縮小がみられています。しかし、残りの患者さんには効果が出ないことがあります。病気が進行しすぎていたり、敵のがん細胞が免疫をすり抜けようとしたりするのが原因と考えられています。免疫でがんを叩こうとすると、がんもまた、自分を変化させて対抗してきます。CAR-T細胞療法がなぜ効かない人がいるのかを研究することによって、もう少しパワーアップしたCAR-T細胞を作ろうという流れがあります。がんに対して戦う遺伝子を入れるのがCAR-T細胞療法ですが、戦う武器を複数入れてみたり、あるいは戦う武器を補助するエネルギーを注入したりといった、いろいろな工夫がされています。より効果が出るように、CAR-T細胞療法の改良はすごい勢いで進められています。

◎CAR-T細胞療法に副作用はありますか?

豊嶋:CAR-T細胞療法は、自分の免疫でがんを倒す治療法です。敵を見つけて叩こうとするとき、戦おうとして免疫が暴れすぎてしまうと、そのがん細胞のみならず、自分自身の体を痛めつけてしまうことがあります。これが副作用です。ですから、CAR-T細胞療法を行う時には、ある程度、免疫細胞に暴れてほしいのですが、「ちょっと休んでほしい」とブレーキをかける工夫も行いながらやっています。ブレーキがきかなくなって、非常に激しい炎症反応・サイトカインストームが起きてくるというのが気をつけなくてはいけない副作用ですが、副作用対策についてはかなり進歩してきて、かなり安全にできるようになりました。

◎CAR-T細胞療法の日本での実績は?

豊嶋:日本は、いま世界でおそらく2番目にCAR-T細胞療法の使用例が多い国です。この患者さんはCAR-T細胞療法をすべきなのか、しない方がいいのか、というのをきっちり判断した上で、医療者が経験を積んで慎重に行っています。副作用はどうすれば抑えられるかという知見も溜まり、とても安全でうまくいっている国の代表が日本だと思います。うまくできている理由は、治療を受ける患者さんと主治医の先生がCAR-T細胞療法についてよく勉強して、あなたは治療を受けた方がいいのか、受けないほうがいいのかということを勉強しながら、必要な人に必要な時にCAR-T細胞療法が届けられているためです。本当に必要な人に必要な時にCAR-Tを届けるというのが一番大事なことなのです。全員が全員CAR-T細胞療法を受けた方がいいというのは間違いです。本当に必要なのか、必要な場合、いつした方がいいのか、こういったことを考えながら治療していくということが大事なので、よく主治医の先生と相談してほしいと思います。

◎このCAR-T細胞療法が血液がん治療に与えたインパクトは?

豊嶋:血液がんは今までは抗がん剤で敵を全部ゼロにしようという考えでやってきて、そのために白血病が治る人もいましたが、かなり副作用も大きく、限界にいきあたっていました。そこで、他の人の力を借りるしかないということで骨髄移植が行われてきましたが、それも激しい治療でした。それがCAR-T細胞療法の登場で、ついに、自分の免疫力をがん治療に使おうということが出だし、たった2年か3年の内に、もう当たり前のように普通の治療になっています。この2、3年は患者さんとってはすごい進歩があった年だと思います。何も効かなかった患者さんに自分のCAR-Tを投与すると、翌日から、白血球数が300、1000とどんどん増えていって、本当に水を得たように白血球が増えていって、がん細胞を見つけて倒します。私も本当にびっくりしました。ただ、それが進みすぎるとサイトカインストームという非常に強い副作用があるので、やはりそこの加減を毎日毎日見ながら判断していきます 。より安全にしようという研究も進んでいますし、より効果を高めようという様々な研究が、本当にすごい勢いで進んでいます。

この記事は以下の番組から作成しています。

クローズアップ現代

【クローズアップ現代】

2022年7月25日(月)放送
『ウイルスの力を病気を治す力へ~がん・難病治療の新戦略~』

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