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鹿児島に宇宙飛行士だった野口聡一さんが!語った経験は

  • 2023年03月30日

「修学旅行で宇宙に行く日も近いかもしれない」

宇宙飛行士として3回の宇宙飛行を行った野口聡一さんは、鹿児島の子どもたちにこう語りかけました。講演の中で貴重な経験を惜しみなく話した野口さん。子どもたちの心には何が残ったのでしょうか。

(鹿児島局記者 平田瑞季)

センテラスに宇宙飛行士が

野口聡一さんの話を聞こうと約300人が集まった

種子島と内之浦に2つのロケット発射場を有する鹿児島県。とはいえ宇宙飛行士の話を直接聞く機会はめったにあるものではありません。

そうした中、3月12日に鹿児島市のセンテラス天文館の中にできた九州電力の体験施設「Eco Terrace」のオープン記念イベントとして開催された野口聡一さんの講演には、親子連れなどおよそ300人が集まりました。

野口聡一さんって、どんな人?

野口聡一さんは神奈川県出身。民間企業の社員から、1996年に当時のNASDA(宇宙開発事業団。2003年に宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所と統合して現在のJAXA・宇宙航空研究開発機構になる)が行った宇宙飛行士の選抜試験で選ばれて宇宙飛行士になりました。

2005年にアメリカのスペースシャトルで初めての宇宙飛行を行い、2009年にはロシアのソユーズに乗って国際宇宙ステーションに5か月半、長期滞在。そして、2020年にはアメリカの民間企業の宇宙船、「クルードラゴン」の1号機に搭乗して3回目の宇宙飛行を行いました。

そして、2022年6月に退職。当時の記者会見では、次のように語っていました。

後輩宇宙飛行士、これから選抜される新人宇宙飛行士に道を譲りたいと思い退職の決断になりました。宇宙は民間宇宙飛行士というか、民間宇宙旅行客がいく場所になっている。そういったところに私も水先案内人的なというか、そういうところでの活動が続けばいいなと思っています。

ギネス世界記録も持っています

野口さんの通算の宇宙滞在日数は344日あまりと、若田光一さんに次いで日本人で歴代2番目の長さです。そして、2つのギネス世界記録も持っています。

ひとつめは、世界で初めて3種類の方法で宇宙から帰還を果たした宇宙飛行士として。

①滑走路での着陸
②地上へのパラシュートでの着陸
③海上への着水など

そしてふたつめは、15年214日のブランクを経て宇宙での船外活動を行った宇宙飛行士としてです。

「車酔い」ならぬ「地球酔い」?

講演で語った内容は宇宙飛行士ならではのものでした。

同時にふたつの「酔い」をした経験と言われて、すぐに何のことか分かるでしょうか。

ひとつめは、国際宇宙ステーションから帰還した際、平衡感覚に慣れず「地球酔い」したこと。ふたつめは、帰還後に陸まで運ばれる船のなかで「船酔い」をしたことだというのです。

そして宇宙からみた景色について「息をのむような美しさだった」と語りました。

宇宙で必要なのはチームワーク

野口さんは上空およそ400キロにある国際宇宙ステーションに長期滞在する中で、合わせて4度の船外活動を行いました。

国際宇宙ステーションではアメリカやロシアなどを始めさまざまな国の宇宙飛行士と共にチームで過ごします。

チームワークを保つ秘訣について、野口さんは「相手を理解する際、良い面ばかりを見ようとするのではなく、あえて悪い面も含めて相手を知ろうとすることが大事」と話していました。

修学旅行で宇宙に行く日も近いかも

講演の中では、子どもたちからの質問にも答えました。

「大人になる頃には宇宙に行けるようになるのか」という小学生の質問に対しては。

人類の宇宙進出が急速に進んでいて、宇宙に住んだり、修学旅行で宇宙に行く日もそう遠くないかもしれない。

また、好きな宇宙食を聞かれた質問では、鹿児島特産の「きびなご」と冗談を言うなどして会場の笑いを誘っていました。

最近の宇宙食はラーメンなどコンビニエンスストアで見るような食材も増えてきていて地球と変わらない食事ができるようになってきている。ただやっぱり、地球で食べるラーメンが1番大好物です。

次の宇宙飛行士はあなたかも

2月に日本の新たな宇宙飛行士候補の2人が発表され大きな話題となりました。

宇宙飛行士は不定期に募集され、今回の試験の開催は14年ぶりでした。JAXAは「5年後ぐらいを目処に次の募集を行えるようにしたい」としています。

私たちにとって、宇宙はまだ遠い存在かもしれませんが、野口さんの話を聞いていると、意外と身近な存在になってきているようにも感じます。次の宇宙飛行士はこの記事を読んでいるあなたかもしれません。

  • 平田瑞季

    鹿児島放送局 記者

    平田瑞季

    2018年入局。
    事件事故担当・奄美を経て現在は原発やロケットなど科学技術のほか生き物を担当

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