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第二の人生を全力で 車いすバスケに出会って

  • 2023年03月02日

「僕にとっては第二の人生をくれたプレゼントみたいなもの」そう語る上村英俊さん。30歳の時に仕事場で事故に遭い、2度と歩けないと言われました。一時はどん底に落ちながらも車いすバスケットボールに出会い、再び歩み始めたその姿を追いました。

(NHK鹿児島ディレクター 齋藤周也)

障害があっても全力で挑める 車いすバスケットボール

一人一人が全力でぶつかり合い、吹っ飛んだりすることもある“コート上の格闘技”と言われている「車いすバスケットボール」。上村英俊さん(51)は鹿児島県代表チームのキャプテンを務めています。

鹿児島県代表チーム キャプテン 上村英俊さん

魅力は、障害が重い人から軽い人まで一緒にできて、足のしびれがあったりするが、(障害を)忘れてコートの中ではできる。コートの中に入ったら平等です

コート上の格闘技と言われる車いすバスケットボール

車いすバスケットボールを始めて20年になる上村さん。現在はかごしま大会に向けて練習を続けています。コートの中では障害の程度に関わらず夢中で競技に打ち込めて、全力を出せる瞬間です。
 

車いすバスケは第二の人生をくれたプレゼント

脊髄損傷で一生歩けないと言われて最初はどん底に落ちた

上村さんは30歳の時、建設現場で働いていた際に事故に遭いました。その時に脊髄を損傷し、車いすでの生活になります。当時は自分の生活がこれから先どうなるのか、不安を抱いたこともありました。そんな中、リハビリの先生から勧められたのが車いすバスケットボールでした。

退院した時の上村さん

始めは車いすに乗ることさえ苦労していましたが、少しずつ楽しみを見つけていきます。それは同じ境遇の人たちとの出会いでした。仲間と共に歩む車いすバスケットボール。次第に実力をつけ、2019年には全国障害者スポーツ大会の九州ブロックで3位に輝きます。

「交流を深めていくと悩みを相談できる仲間が増えていきました。そして少しずつ勝つ喜びを覚えてきて、スポーツは楽しいと思えるようになりました。健常者の時の第一の人生と障害者スポーツに出会っての第二の人生。僕はそれで生まれ変わったと思ってるので車いすバスケは第二の人生をくれたプレゼントですね

車いすバスケットボールへの恩返し

人生を変えてくれた車いすバスケットボール。上村さんは、恩返しがしたいと小学校で体験教室を行うなど普及活動をしています。その中で、新たな出会いがありました。谷口拓磨さん(18)です。上村さんに体験教室で教わったことがきっかけで車いすバスケットボールを始めました。現在はU23の強化指定選手に選ばれるなど、著しい成長をとげました。

小学校での体験教室

 

共に練習をする上村さんと谷口さん

谷口拓磨 選手

車いすバスケ始める前は家で引きこもりがちでした。今は日本代表に選ばれるという目標が見つかり練習に励んでいます

子供たちの成長が1番の楽しみですね

全国の強豪が集うかごしま大会に向けて

ことし10月に開催される全国障害者スポーツ大会の「かごしま大会」。そこでは全国の予選を勝ち上がってきた強豪チームと対戦します。普段はなかなか県外での試合が難しい車いすバスケットボール。実力を試す絶好の機会に、上村さんは練習を続けています。

「トップの選手と試合をして少しでも通じるように頑張る。試合を見てもらって、障害のある子どもたちに少しでも出会いのきっかけづくりをしてもらいたい。そして車いすバスケの普及につながれば嬉しいです」

取材後記

“どんな状況でも全力で楽しむ” 上村さんの姿は、普段生活をしていると忘れてしまう気持ちを改めて感じさせてくれた取材でした。障害者スポーツは競技としての面白さに加えて、人生を大きく変える可能性を持つものだと思います。ことし10月に行われる「かごしま大会」をきっかけに、少しでも多くの人に知ってもらえる機会になることを切望しています。

  • 齋藤周也

     NHK鹿児島放送局ニュースディレクター

    齋藤周也

    2017年入局 津放送局を経て2020年から鹿児島局。桜島の目の前に住んでます。

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