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鹿児島県で相次ぐ子どもの交通事故どう防ぐ?大人こそ注意を!

  • 2022年05月23日

「ててて!とまって!」という歌をご存じでしょうか。子どもたちに交通事故から身を守ってもらおうと、この春NHKが制作したもので、子どもたちに覚えてほしい「安全な横断歩道の渡り方」を伝える内容です。動画はこちら。
ただ、子どもが気をつけるだけでは交通事故はなくなりません。車を運転する大人にもさまざまな注意が求められています。

(鹿児島局記者 柳沢直己)


鹿児島県内で相次ぐ子どもの事故

新学期を迎え、大きなランドセルを背負った子どもたちが元気に登下校する姿を目にします。一方で、慣れない登下校で交通事故にあわないか心配する保護者もいるのではないでしょうか。

鹿児島県内ではことしはじめ、小中学生が車にはねられる事故が相次ぎました。

鹿児島市武岡の三差路で事故が起きたのは3月3日。児童クラブから帰宅する途中に横断歩道を渡っていたとみられる小学生の男の子が、右折してきた車にはねられ、一時意識レベルが低下しました。

事故が起きた現場 鹿児島市武岡

三差路はカーブの途中にあり、対向車線の見通しが悪い場所でした。また、時差式信号となっていたものの、対向車線を気にせず右折できるのは9秒ほど。よくこの場所を運転するという人は「見通しが悪いためスピードを出して右折する人もいる。右折信号をつけてほしい」と話していました。

さらに、右折した先の横断歩道は塗装が消えて見えづらくなっていました。男の子が通っていた学校では、事故を受けて警察に横断歩道の塗り直しを求めたということです。

塗装が消えた横断歩道

県内でことし発生した小中学生の事故です。

▼2月25日午前8時5分ごろ 薩摩川内市 
44歳が運転する軽乗用車が横断歩道を渡っていた小学生の女子児童をはねる

▼3月3日午後5時10分ごろ 鹿児島市 
69歳が運転する乗用車が横断歩道付近を歩行中だった小学生の男子児童をはねる

▼3月6日午後5時ごろ 出水市 
36歳が運転する乗用車が横断歩道を渡っていた男子中学生をはねる

▼3月25日午前7時35分ごろ 姶良市 
81歳が運転する乗用車が横断歩道を渡っていた小学生の女子児童をはねる

2月からの1か月間に4件相次ぎました。そのひとつはなんと、小学校の正門の前で起きたのです。

正門前でも 子どもだけでは限界が

小学校正門の前の横断歩道

その現場は、薩摩川内市にある隈之城小学校です。正門前の横断歩道を渡っていた登校中の女の子が、走ってきた車にはねられたのです。毎日、子どもたちの登校を正門で見守っている萩原聖司校長は、ショックを受けたと話します。

萩原聖司 校長

「毎日こうやって子どもたちを見守りをしているのに、それでも事故が発生したことはほんとうに悔しくてならないんですね。だから何か少しでも子どもたちの命を守る上でできることがあればと思って、日々職員と話をしながら改善しているところです」

学校ではもともと、さまざまな安全対策を取ってきました。新1年生が初めて登校する時期は、同じ方向に帰宅する新1年生の集団に地域住民がつき、一緒に下校していました。

そして、事故を受けて新たな対策も行いました。ドライバーに横断歩道や信号を見やすくしようと、長年親しまれてきたフェンス沿いの木を伐採したのです。

萩原聖司 校長

「卒業生とか地域の方、それから子どもたちには思い入れがあったかもしれないですが、安全には代えられないということで、だいぶ昔からの記念樹とかもあったんでしょうけど、大きな木も含めて伐採していただきました。車からの視界も広がったんじゃないかなと考えています」

ただ、萩原校長は学校や子どもたちの対策だけでは限界があると感じています。学校などは、道路を管理している県に、横断歩道の白線以外もより目立つよう着色するよう要望。ドライバーへの働きかけを模索しています。

萩原聖司 校長

「子どもたちが交通ルールに気をつけて安全に渡っていても、やっぱり車の方が注意していただかないと事故というのは減らないのかなという風に考えています。通学路には歩道のない場所も結構あるので、子どもたちの横を通過するときはスピードを落としていただきたいし、信号のない横断歩道などもありますので、周りの流れを見ながら安全に気をつけて止まっていただけると、子どもたちも安心して渡れると思います

新学期のこの時期は特に注意

大人にこそ求められる子どもの安全への配慮。交通安全に詳しい埼玉大学大学院の小嶋文准教授は、新学期を迎えた時期、ドライバーは特に注意が必要だと話します。

埼玉大学大学院 小嶋文准教授

埼玉大学大学院 小嶋文准教授

「新学期になって、子どもの場合は行動範囲がすごく変わります。そこがどんな場所なのか、車が走っているのか走っていないのか、そういうことを気にしなければならないということも分からないかもしれない。そういう子どもたちが歩いているのだということを、気をつけても気をつけすぎることはないというような気持ちで運転していただきたいと思います

県内の道路を取り巻く状況

気になるデータもあります。

JAF=日本自動車連盟は、信号機のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしている際に一時停止をする車の割合を調査しています。2021年の調査によると、全国トップは長野県の85.2%だったのに対し、鹿児島県は全国平均の30.6%を下回る25.5%でした。

また、NHKがことし九州沖縄各県の矢印信号をめぐる事情について調べたところ、鹿児島県の設置率は8県のうち2番目に低くなっていました。

鹿児島では、必ずしも運転しやすい環境ではないという側面もありますが、学校現場や警察、それにドライバーなどが、ともにそれぞれの果たすべき役割を果たして、子どもたちを交通事故から守っていく必要があると思います。

  • 柳沢直己

    NHK鹿児島放送局 記者

    柳沢直己

    2021年入局。事件・事故担当。宮城県出身。鹿児島に来て、日本酒派から焼酎派に。

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