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“数学ゴールデン”で話題 霧島市出身の藏丸竜彦さんに聞く

異色の数学漫画が生まれた背景に作者の葛藤と挑戦の日々
  • 2022年06月06日

県内外で活躍する地元ゆかりの人たちに、これまでの活動や鹿児島への思いをたっぷりと語っていただく、「情報WAVEかごしま」の新コーナー「スポットライト」。
1回目は、霧島市出身の漫画家、藏丸竜彦さん(35)です。藏丸さんは、「国際数学オリンピック」への出場を目指す高校生たちを描き、話題となっている漫画「数学ゴールデン」の作者。
かつて鹿児島の高校で数学の教員を務めていたという異色の経歴を含め、作品に込めた思いなどをうかがいました。

NHK鹿児島記者 堀川雄太郎

話題沸騰!アツい“数学漫画”

世界中の国から集まった高校生以下の若者たちが、数学の難問を解く能力を競う「国際数学オリンピック」。「数学ゴールデン」は、その日本代表を目指す高校生たちを描いた漫画です。

3年前に連載が始まり、作品に出てくる数々の熱いセリフが、読者の心をつかんでいます。

手がけたのは霧島市出身の藏丸竜彦さんです。ふだんは東京で活動していますが、帰省に合わせて話を聞きました。

数学ゴールデン作者 藏丸竜彦さん(霧島市出身)

「鹿児島は地元というのもあって帰ってきたらほっとします。暖かいし食事もおいしいし、銭湯もある。灰が降るのだけちょっと困ります。鹿児島の空港に着いたらほっとする感じはありますね」

漫画家を志したのは20代のとき

加治木高校を卒業後、九州大学に進学し、得意科目だった数学を専攻した藏丸さん。漫画を描き始めたのは、意外にも20代になってからでした。大学院の試験が不合格となり、新たな目標を模索する中でのチャレンジでした。

藏丸竜彦さん

「大学院試に落ちて、もう1回チャンスとかいろいろ可能性はあったのですが、そのときに何か好きなこと、やってみたかったことをやってみようと思いました。

とにかく表現するものを20代の若いうちにやってみたかった」

数学教員と漫画家の“二足のわらじ”

しかしプロの漫画家への道は険しいものでした。鹿児島第一高校で数学の教員として働きながら、描き続けても結果の出ない日々が続いたと言います。

藏丸竜彦さん

「夢というか、もっと自分はできるのではないかというはざまでした。20代のときに新人賞のようなものを1回取っていて、微妙な自信というか、中途半端に結果が出るのが一番よくないと言われます。

結果が出たから頑張れるけど、でもプロというものは壁があって、そのはざまにいました」

決意の上京 たどりついた“数学漫画”

このまま中途半端でいいのか。30歳になった藏丸さんは教員を辞めることを決意。

上京し、3年間限定の漫画家志望者のプログラムに参加しました。
退路を断ち、みずからを追い込む中でたどりついたのが、かつてない“数学漫画”の構想でした。

藏丸竜彦さん

「数学という冷静や知的なものにある意味ギャップを重ね合わせることができたと思います。読んでみたら、数学が好きな人は“おっ”と思うし、嫌いな人も“あれ、これは読める”といったように感じるのではないでしょうか。

数学に一生懸命な人や、楽しく取り組む人。大人だったら数学に挫折した人などいろんな方向から描いているので、それぞれに数学の捉え方があると思います」

帰省中、鹿児島市内の学校に招かれて講演をした藏丸さん。自らの20代を振り返りながら、中学生に呼びかけたのは、思い切って目標を追いかける大切さでした。

数学ゴールデン作者 藏丸竜彦さん(霧島市出身)

「好きなことを職業にできるか、諦めることも込みで一生懸命頑張ってみる。そのためにめちゃくちゃ頑張らないといけないというのが僕の考え方です」

講演を聴いた生徒

「自分のやりたいことをやるのが一番頑張れるのではないかと思いました。医者になるというのが夢なので、勉強も頑張って絶対なりたいと思います」

目標は海外!今後も制作活動を

現在、3巻まで単行本が出され、話題となっている「数学ゴールデン」。藏丸さんは今後、数学と漫画のコンビネーションから生まれる独自の世界を、さらに広げていきたいと考えています。

藏丸竜彦さん
 

「ありがたいことにもう少し連載が続きそうなので、いろんな掘り下げとか広げ方をして、できるだけいろんな人が読めるような工夫をしていきたいと思います。

「数学ゴールデン」に関しては世界にいってほしいです。数学は世界共通語というか、みんな数学をやるので、そのような人たちのリアクションを見てみたい。海外とか映像化が目標です」

取材を終えて

藏丸さんの話にもあったように、作品には数学が好きで好きでたまらない高校生や、過去に数学に熱中したものの挫折した大人などが登場します。どこか藏丸さん自身の過去に重なっているところがあるようにも感じました。

そして熱中したり苦悩したり、まさに青春まっただ中の若者の姿は、数学の得意不得意に限らず共感できるのではないでしょうか。また筆者(堀川)は理系ですが、数学が得意な人はより一層楽しめる作品だと思います。

また、作中には鹿児島ゆかりと思われる学校名なども登場し、藏丸さんの地元への思いも感じます。
取材の中で、「今後は、歴史を題材にした新たな漫画も描きたい」と話していて、数学ゴールデンの今後の展開とあわせて活躍を楽しみにしたいと思います。


 

  • 堀川雄太郎

    NHK鹿児島放送局 記者

    堀川雄太郎

    2014年入局 山形局や
    薩摩川内支局を経て
    調査報道班のキャップ 
    ロケットや原発など
    科学文化も担当

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