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オール電化住宅 物価高騰の中で…

  • 2023年8月24日

日々あらゆるものの値段が上がっていること、皆さんも実感されているのではないでしょうか。総務省が先日発表した全国消費者物価指数では、北海道の生鮮食品を除く食料品の価格は前の年と比べて10%を超える伸びを記録しました。ガソリンは先日、15年ぶりの価格水準となる180円を突破。そして電気料金は北海道電力の多くの人が契約する料金プランの規制料金で平均2割を超える値上げです。そんななか、NHK北海道では皆さんの声を受けて取材を続けてきましたが特にオール電化住宅で暮らす年金生活者の方が大きな不安を抱えている実態が見えてきました。

びっくりして問い質した

札幌市で独り暮らしをする江端愛子さん(83)=写真下=は、年金で生活費を賄っています。江端さんはことし1月、届いた電気料金の請求書の内容に驚いたといいます。その金額は実に8万円を超えるもので「飛び上がるくらいびっくりした」ということでした。にわかに信じられず電力会社に問い合わせたところ、間違いないことを確認できましたがやりきれない思いを感じているということです。

これほどの電気料金になったのは自宅がオール電化住宅だったため。15年前に新築した当時は、在宅介護が必要な夫との暮らしのために料理の途中でキッチンを離れても火を使わず安心なため選びました。そしてなにより光熱費が割安になるという宣伝が決め手となりました。当時、泊原発の1・2号機に続いて3号機の稼働を控えるタイミングで、需要が少なく供給に余裕がある夜間の電力を割安で使うことができるため、夜間時間の単価は当時、1キロワットアワーあたり8円ほど。現在25円を超える同じ料金プランの夜間電力の3分の1以下の単価でした(時間帯別電灯「ドリーム8」2013年の値上げ前比)。娘の家族も2世帯住宅でそばに暮らす新居は暮らしやすい住処でした。

しかしその後、夫は施設での介護が必要となり入所。毎月10万円の利用料の自己負担を捻出するなか、限られた年金収入の3分の1を超えるような額の電気料金の高騰に江端さんは「オール電化は“安くていいよ”のはずだったんだけど、こんなことになるとは…」とこの先への不安を抱えています。

江端さんは「生活費は足が出ている状況。いつまでも自分も元気でいられるわけではないと思い貯めて来たわずかな蓄えを減らしていっている」といいます。「この歳で雇ってくれるところはない」とも話し、日々節約を重ねています。食料品は特売日にまとめ買い。肉はもちろん、野菜も冷凍し、その対象はねぎや葉物野菜、大根にまで至ります=写真下=。さらに家電の待機電力もこまめにコンセントのスイッチを切って確実に抑えています。そして前の家から移設したお気に入りの欄間の飾りも見映えが悪くなるのもいとわずにすき間をビニール袋でふさいで冷暖房の空気が居室から逃げないように工夫しています。

こうした節電への努力と、2月以降、気候が緩んできたことで電気料金は低く抑えられるようになりました=図参照=。さらにこの陰には政府による電力会社への1キロワットアワーあたり7円の激変緩和対策も。この対策が始まったことから実際に支払う電気料金はさらに安くなり5月以降は1万円台に抑えられています。しかしいま江端さんが気になっているのは次の冬のことです。この緩和対策は、9月で終了予定のため最も電気代がかかる冬場を政府の支援なく越せるのか不安を抱いているのです。

冬を憂う夏の終わり

江端さんは「夏は夏で北海道よりも本州はもっと暑くて暑さ対策で大変だという面があると思うんです。だけど北海道は冬になったら寒いのは変わりなく寒いですからね。冬の暖房についてはやっぱり、もう少し国がこんなに大変があるんだったらもう少しみてくれるとかね。大変です。本当に冬が来るのが怖いくらいです」と話しています。

物価の推移を調査している道銀地域総合研究所の小野公嗣主任研究員=写真上=は、年金暮らしなど所得が増えづらい個人での対策は節約など打つ手は限られると指摘します。激変緩和対策が終了すると10月以降は電気代・ガス代が上がるのは避けられないといいます。そのうえで「緩和対策の延長の議論が水面下進んでいる話が出てきているが、これは重要な議論なのではないか」と政策の必要性を指摘しています。さらに、緩和対策が個人の生活のみならず事業者等を通じて物価高全般の抑制につながっていると指摘し、これから光熱費の増える北海道での必要性について議論していくことが大事だと話していました。

さて昨冬、高騰していた燃料費は足元ではだいぶ落ち着いており、電気料金の請求も6月に基本料金や単価が値上げされたものの去年よりむしろ少ないという声も聞こえてきています。ただ原油などの価格がこの冬にかけてどのように推移するのかは専門家でも見通すのが難しいそうです。家計や企業を預かる身としては、なかなか楽観的に構えているわけにもいかないかもしれません。引き続き皆さんから今後取材してほしいことについてご意見も募集しています。

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