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『道南ドキュメント7.2時間』#6 ~函館・さよならテーオーデパート~

  • 2023年9月8日

道南のとあるスポットを7時間ちょっと定点取材する『道南ドキュメント7.2時間』。 第6回の舞台は函館市中心部にある商業施設「テーオーデパート」。61年前の昭和37年に開店して以来、幅広い世代から親しまれてきましたが、人口減少などの影響で売り上げが低迷し8月31日に閉店しました。その最後の7.2時間に密着。訪れた方々にテーオーデパートの思い出とマイニュースをうかがってきました。
(報告:NHK函館 三平泰丈)
                       

8月31日(木)正午 取材開始

閉店時間は午後7時なので7時間前の正午から取材を始めました。
店内はすでにお客さんでいっぱい。店員が常連さんと最後の挨拶を交わす光景があちらこちらで見られます。

12:05 東京から(函館出身)

エントランスで撮影をしている男性と出会いました。

「東京から来ましたがずっと函館に住んでいたんです。閉店ということで最後の姿を見に来ました。閉店に合わせて夏休みをとってきました。函館もデパートが少なくなってきて名残惜しくなってね。テーオーでは展覧会などのイベントもよく開催していたので見に来てましたよ。カメラでは動画を撮ってました。全部自分の記録として残しておきたい。閉店時間の19時になったらまた来ます」

12:20 函館から

ケーキ屋の前で赤ちゃんを抱っこしたお母さんにお話を聞きました。

「学生のころにアクセサリー屋さんとか靴下屋さんでよく買ってました。自転車で来るのにちょうどいい距離だったし。さみしくなるので最後にケーキを買って家族みんなで食べようと思います。お父さんが甘いものあまり好きじゃないんですけど、ここのケーキなら買ってくれるんです。今日も買ってくれるみたい、やったー!」

(マイニュースをうかがっていまして)

「子どもが最近歩けるようになりました。函館の公園をいろいろまわりたいです」

12:30 6階で写真撮影

最上階の6階に見晴らしのいいスペースがあります。そこで写真を撮る男性2人が。

「右:やっぱりさみしくなるからね、目にもカメラにもバッチリ焼きつけたいなと」
「左:玄関撮って全体撮ってここ来てみたらこんな見晴らしのいい場所あったんだって、最高だよね。テーオーは敷居がちょっと低くて入りやすかったんですよ。函館からひとつずつ商業施設が消えていくじゃない?それが残念で。昔は飛行機の写真を撮るのが好きで2人でやってたんだけど、最近は街の写真に変わってきました。やっぱり記録を残しておくべきだよね。子どもたちに、函館はこういう町だったんだよ、捨てたもんじゃないんだよって伝えたい」

(マイニュースは)

「左:久々に孫が帰ってきてね、みんなで庭で打ち上げ花火をしましたよ。東京じゃなかなかやれないから喜んでいました。小さかった孫もすっかり大きくなっちゃって。3年ってすごいよね!」
「右:私はこの暑さの中でも食欲が旺盛で夏バテしないっていうのが最高のニュース」

13:00 大学生(新潟から)

テーオーデパートの名物・からくり時計。1989年に設置されました。
1時間に1回メロディーが流れると、時計の中に隠れていた子ども楽団がかわいらしく動きます。34年休まず動き続けてきた「からくり時計」に思いをはせる人も多いようで、動画を撮っている男性にお話を聞いてみました。

(ずっとからくり時計を撮影していましたが)

「新潟県の長岡市から来ました。18歳です。私からくり時計が大好きで今年の夏、全国のいろんなからくり時計を巡ってます。ここのからくり時計が今日で終わってしまうという情報を知ったので、青春18きっぷを使って普通電車とフェリーを乗り継いで来ました。途中で秋田県と青森県のからくり時計も見てきました。この前は岡山県とか山口県のからくり時計も巡ってきて、いったん新潟に帰って今後は北海道方面ということで」

(本当に好きなんですね、からくり時計の魅力は)

「やっぱり時間にならないと動かないというのが期待感がどんどん高まっていきますね。現代にはなかなかない人形やロボットが動いてみんなを楽しませてくれるって他のコンテンツにはないし、どんどん調べていくといろんな種類があって面白いんです」

(テーオーデパートのからくり時計はいかが)

「やっぱり見られなくなるのは悲しいですね。時計の部分だけで言えば富山県にも同じ個体があるにはあるんですけど、噴水と連動するのはここだけの特徴なので。実際に来てみて地元の人に愛されているんだなとわかりました」

14:30 函館からの親子

(きょうはどうしてこちらに)

「母:娘の時計の電池交換に来ました。テーオーデパートで買ったので」
「娘:3~4年前に買ってもらったんです。高校受験のときにこの時計をつけてがんばったり、英検とか面接とか大事な場面でいつもつけていたので思い出があります」

(マイニュースは)

「娘:きょう成人式の振袖を見に行きました。再来年なんですけど今から予約しないと埋まっちゃうので・・・淡い色を選びました。友達にも会えるし今から楽しみです!」

14:40 孫と一緒に

孫を連れた女性が、なじみの店員に挨拶をしていました。

「女性:長い間ありがとうございました。お兄ちゃんにご苦労さまでしたって」
「店員:いや~もうおじさんになっちゃいましたよ(笑)こちらこそありがとうございました。あと何時間か頑張ります!」

(長く通ってらっしゃるんですか)

「そうですね、40年ぐらいかな。主人の両親もよくテーオーを使わせてもらいましたので四世代で通ってきましたよ。ここは従業員の方も気軽に接してくれて親切に商品を説明してくれるので、親しみやすく買い物できたんです。さみしくなるね?」

「孫:うん」

(マイニュースは)

「コロナ禍でどこにも行けませんでしたが、少しずついろんな所に出かけるようになりました。孫は函館公園がお気に入りに。こどものくにのお兄さんたち大好きだもんね?」
「孫:うん!」

15:00 函館からの親子

午後3時を知らせる「からくり時計」の動画を撮影している女性がいました。

「娘:19歳です。からくり時計のメロディーが流れるとテーオーにいるなあって気持ちになります。この音楽が聴けなくなるのがさみしいです。小さいころから家族で来ていて、お母さんが買い物している間にこのメロディーが鳴ったら妹と走って見にきたり、噴水に手を入れてお母さんに怒られたり(笑)思い出がたくさんあります。今日は午後5時からアルバイトがあるので、その前にどうしても来たかったんです」
「母:地元なので私自身も物心つく前からテーオーに来てました。すごく来やすい雰囲気だったので、昔からの思い出の場所がまたひとつ無くなってしまうのがさみしい」

(マイニュースは)

「母:私が長年飲もうかどうか悩んでいた薬用酒を娘が買ってきてくれて、数日前から飲みはじめました(笑)」

(どうして買ってあげようと)

「娘:ドラッグストアでアルバイトしているので店内で見つけて、これ欲しいって言ってたやつだと思って買ってあげました(笑)私のマイニュースはアルバイトをし始めてお金の大切さに気付いたことですね。一時間働くだけでもこんなにつらいのに、いつもお母さんお父さんはがんばっていろんなことしてくれてたんだなあって」

(素敵な娘さんですね!)

「母:良かったです(笑)」

15:35 食品売り場で

閉店に向けて仕入れを止めていたため、生鮮コーナーの棚はほぼ空になっていました。

「刺身類が食べたいなと思ってきたんだけどやっぱりなかった。困ったわね~」

(よく来られていたんですか)

「歩いて7~8分ですから散歩がてら来てました。15年ぐらいかな。なるだけ買いだめしないで毎日くるようにしてましたよ」

16:05 お菓子を選ぶ高校生

「高校1年生です。小さいときから来ていました。アイス屋さんがあったり、からくり時計もあったりワクワクしながら来た記憶があります。お母さんにおやつもよく買ってもらいましたね。街からポツンと光が消えちゃうってことですからね、さみしいです」

(マイニュースは)

「最近親知らずを抜いたんです、痛かったですよ。抜いたせいでおいしいものが食べられず体重が2キロ落ちちゃったんです、それが悲しいニュースです」

(その間に食べたかったものは)

「私おにぎりが食べたかったんですよ。今は食べることができてとてもうれしいです」

16:25 婦人服売り場で

「ずっと馴染みでよく来ていましたよ。道草みたいな感じで。町の顔がなくなってさみしいです。テーオーでの買い物は安心感があったんです。似合ってるとか言ってオススメしてくれたり、人と人の触れ合いを大事にしてくれましたから。今インターネットで買い物できるみたいだけど後期高齢者なもんですから時代についていけないんですよ。役所での手続きもどんどんインターネットとかスマホになってたり・・・操作に慣れていないからおっかない部分もありますよ。安心して買い物させてくれた店員さんたちと会えなくのがさみしく思います」

16:45 ケーキを買う家族連れ

(よく買いに来るんですか)

「誕生日で家族に買ったりしてきました。最後ということでこないだ買いにきたら売り切れだったので、予約して今日受け取りに来たんです。私も小さなころから食べてたしテーオーってなんか特別な感じがあったので大好きなケーキでした。昔は本屋さんとかいろんな店が入ってて、学校帰りに遊びにきたりおばあちゃんと買い物に来たり、思い出深いデパートですね」

(マイニュースは)

「この子が9月11日に2才になるので、もうすぐ誕生日ということも含めて今回ケーキを食べようと思ってました」

17:00 からくり時計を見る高校生

「右:何回も来させていただいたので、最後見にきました」

(撮影しながら涙ぐんでいたように見えましたが)

「左:はい、いろいろ思い出があって・・・お母さんと兄弟と一緒に来て懐かしいなと」
「右:手芸屋さんによく通っていました、イベントにも来たり」

(マイニュースは)

「右:29日までテーオーデパートでハンドメイドのイベントをやっていてブローチを買ったんですけど、おまけをつけてくれたのですごくうれしかったです!」

18:00 東京から(函館出身)

「東京在住ですが夏休みで帰省しました。高校のときテーオーによく通っていて、最後にからくり時計も見たいと思って閉店を見届けにきました。ここでは小物とかかわいい文房具とか買ったりしましたね。地元に根付いたお店で生まれたときから当たり前にあったので、無くなるのが想像できないです」

(マイニュースは)

「コロナも落ち着いたので海外旅行にいきます。ロサンゼルスです!」

(何をしにいくんですか)

「大谷翔平選手を見に行きます。あとディズニーランドも」

(うらやましいです!)

「予算はかかりましたが今がいくべき時かと。大谷選手は日本ハム時代からファンで、誰もやっていないことを周りからの批判を気にせず、自分を信じて進んでいく姿が素晴らしいと思います」

18:25 函館からの親子

6階の展望スペースに父と娘2人がやってきました。景色はすっかり暗くなっていました。

「父:最後ということで来ました。棒二やヨーカドーの最後の日も行ったのでテーオーも行こうかと」
「娘:さみしいけど夜景がきれい」

(マイニュースは)

「父:娘と札幌に二人旅に行きました。妻と妻の母がライブに行くという事で別行動で。この前の日曜日なんですが、JRタワーに行ったりエスタにも。あ、エスタも今日閉店ですよね。夜は小樽運河にも行きましたよ」

(お父さんとの二人旅はどうだった)

「娘:買い物したりして楽しかった」

18:45 閉店15分前 食品売り場で

「母:もうこれしかなかったんで、カレーとベーコンとアイスを買いました」
「姉:テーオーデパートは身近でとても親しみやすくて大切な場所です。あと15分で閉店・・・すごく悲しいです」

(マイニュースは)

「妹:ひらがなのテストで100点とりました」
「姉:アルバイトを始めました」

19:00 最後のからくり時計

閉店予定時刻が迫っても店内のお客さんは増える一方。お目当ては午後7時のからくり時計のようです。お店の配慮もあり閉店時刻を少しだけ延長して、お客さんも店員さんも一緒に最後のからくり時計を見届けることになりました。メロディーが鳴りやむと館内は拍手に包まれました。
たくさんのお客さんに見守られる中、閉店セレモニーが終わりシャッターが下りました。
シャッターの裏側では、お店を支えてきた店員たちが涙ながらに労をねぎらい合っていました。もう開くことのないエントランスのドアに警備員が施錠しました。

19:15 取材終了

【制作後記】

「営業終了まであと残りわずかとなりましたが、最終日まで笑顔でお客様をお迎えさせていただきます。」これは私が取材依頼をしたテーオーデパートの従業員の方が、私へのメールに書いたコメントです。閉店という事実は変わらない。にもかかわらず、最後まで全力を尽くすプロの姿勢に感銘を受けました。
ロケをして、この姿勢は本当だと実感しました。最終日カメラを向けながら出会った皆さんの声です。「テーオーさんは、いつも従業員の方が優しく迎えてくれる」「気楽に、安心して立ち寄れる温かい場所」。特に「気楽に」という言葉は撮影中何度も聞きました。当たり前のように身近にあった場所、いつも笑顔で迎えてくれる場所。ふいに自転車で近くを通るとテーオーさんは、昼間なのにシャッターを開けずにいて・・・その姿をみると、もう一度あの空間に触れてみたいなと感じます。

過去の『道南ドキュメント7.2時間』記事・動画はこちらから↓

第5回 ~小さな遊園地 こどものくに~函館(2023年8月)
『道南ドキュメント7.2時間』#5 ~ 小さな遊園地 こどものくに ~ 
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