『道南ドキュメント7．2時間』はじめました。
- 2023年4月18日
道南のとあるスポットを“７２時間”ではなく“７時間ちょっと”定点取材。
出会った人たちにうかがうのは「あなたのニュース教えてください！」
そんな新コーナー『道南ドキュメント７．２時間』をはじめました。
第１回の舞台は函館市大森浜です。
（ＮＨＫ函館 編集マン 長尾明樹）
４月９日（日）午前５：００
啄木小公園を拠点に取材をスタートしました。
日の出の予想時刻は５：１０。朝日が昇る雄大な大森浜の映像を狙ったものの、
あいにくの曇り空。そのうえ気温は４度と冷え込み、カメラを持つ手に震えが･･･。
取材開始時刻を５時にしたことを後悔していたところ、浜辺に人影を発見！
５：０４
スマートフォンを片手に海沿いを歩いています。いったいなにをしているんだろう？さっそくお話を聞いてみました。
（道南ドキュメント７．２時間という企画のインタビューをしたいのですが）
「えっ知ってます！まじか！！」
（いや、これが初めてのロケなんです。７２時間ではなく７．２時間。
まぎらわしいネーミングですいません･･･写真を撮っていたんですか？）
「いま大森浜の映像をライブ配信してるんですが、閲覧者０人なのでインタビュー大丈夫です。こんな時間に人がいるとは思いませんでした」
（私も思いませんでした笑。あなたのニュース教えてください）
「あの～２か月前に彼女にふられたことですね･･･」
（また４月から心新たにできるといいですね）
「そうですね、新年度も始まりましたしね」
５：３０
大森浜沿いを走る「漁火通り」。函館マラソンのコースにもなっています。
夜が明けると続々と市民ランナーの姿が。
（ランニング中にすみません、どのぐらい走ってるんですか？）
「５時から８キロぐらいですね。ここは景色がいいので、すごくお得感があるんです」
（あなたのニュース教えてください）
「きのうお友達がたけのこごはんを作ってもってきてくれた。
春が来たな～！と思っておいしくいただきましたよ」
５：５０
「このコースは朝日を見ながら走れるし折り返すと函館山、景色が抜群ですね。いい景色を見ると疲れにくいんですよ」
（あなたのニュース教えてください）
「来週、伊達マラソンに出ることかな」
６：００
ロケ用に作った小道具を興味深そうに見ている男性に出会いました。
聞くと元自衛隊員で７５歳。朝からとにかく元気なんです。
（あなたのニュース教えてください）
「名古屋から孫が遊びにきたことかな、こども３人孫８人！かわいくてかわいくて」
（どうしてこちらに？）
「妻が認知症で、自宅で介護をしてるんだ。
だから妻が寝ているうちにお風呂にいって海を見にきたんだ。
海のにおいを嗅ぎたかったの！！やっぱり爽快になるでしょ。
また今日もがんばるってなるでしょ。
俺も与えられた人生だから、最後まで妻を看る。
かっこいいこと言うな～！」
照れ笑いを浮かべながら「またどこかで会おうな！」と自宅へ帰っていきました。
６：４０
埼玉県から来たという男性。実家は函館、母親のお見舞いで帰省したそうです。
帰省したときは必ず大森浜沿いのコースをランニングするといいます。
（あなたのニュース教えてください）
「６２歳なんですけど去年のマラソンで３時間半を切って自己ベストをだしました！」
（すごいですね！どうして大森浜に？）
「ここは函館でも一番いいコース、函館山もみえるし。
母親のことはすごい心配なんですけど、走っていると一時的にその思いから少しだけ解放されるというか、リフレッシュしてまた埼玉でがんばれるかなって」
７：５０
日が昇り暖かくなってくると、浜辺に家族連れが訪れました。
旭川在住のご家族。３歳のお孫さんは、函館の海を見るのが初めてだそう。
「旭川は海が遠いからあまり連れていったことがなくてね、大森浜はきれいですね」
（あなたのニュース教えてください）
「おととい血液検査したら珍しく全部正常だった、妻の料理のおかげです！」
「娘）私はコロナ禍前、東京でボーカルインストラクターをしていたんですけど旭川に戻ってマッサージの仕事と歌を教える仕事を始めました」
（歌がお得意なんですね）
「実は紅白歌合戦にバックコーラスで参加したこともあるんです。
アナ雪が流行っていたときでＭａｙ Ｊ．さんの後ろに私が映ってました（笑）」
（えっ、まさかそんな方と出会えるとは！ありがとうございました）
１１：００
１０時前から天気が急変し、雨が降りだしました。
雨が弱まったころ、ランニングを終えた３人と出会いました。
「洞爺湖マラソンや函館マラソンがあるので、練習で３０キロ走ってきました。ここは水飲み場があるので給水所にもなっていいんです」
（あなたのニュース教えてください）
「３人）函館マラソンで自己ベストを更新します！」
１２：１２
再び雨が降り、大森浜から人影がなくなってしまったところで７．２時間が経過。取材を終えました。
【制作後記】
『道南ドキュメント７．２時間』。
コーナー名を決めてはみたものの、ロケ日が近づくごとに不安が募っていました。
普段は編集マンをしている私、ロケに出るのは１５年ぶりで撮影もほぼ未経験･･･。
自分がどんな７．２時間を過ごすことになるのか想像がつきませんでした。
今回大森浜で出会った方々に貴重なお時間をいただき、ときには仕事であることを忘れ
夢中になってお話できたおかげで、あっという間に７．２時間は過ぎ去っていました。
取材終了時刻が迫ったころ、
雨の大森浜で皆さんとのお話を反芻し、こんなことを思いました。
人は何かを想って海を見つめるけど、海も訪れる人を見守ってくれてるんだな～
あのおじいちゃんに「かっこいいこと言うな～！」と言われてしまいそうですが、７．２時間もいると本当にそんな気がしたんです。
ちなみに私のニュースは「ロケ前日、不安で１時間しか寝られなかったこと」。
４４歳になっても、運動会前夜の小学生のように眠れなくなることってあるんだな･･･
情けないようで少しうれしくもなったニュースです。
大森浜は、浜辺で右往左往する私のことも７．２時間見守ってくれていたようです。
