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『道南ドキュメント7.2時間』#3 ~ 日曜日の奥尻島 ~

  • 2023年6月21日

道南のとあるスポットを7時間ちょっと定点取材する『道南ドキュメント7.2時間』。 第3回の舞台は初めての離島ロケとなる奥尻島です。人口はおよそ2300人。島で生きる人、そしてフェリーで訪れる人たちにとっての“マイニュース”とは?! (報告:NHK函館 冨田聡子)

6月11日(日)正午 取材開始

江差港と奥尻島を約2時間で結ぶフェリー。この時期は1日一往復しかないため、多くの利用客が乗っていました。フェリーが江差港を出発する正午から取材を始めました。

12:20 旅行と仕事で

(どうして奥尻島へ)

「旅行と仕事の両方です。トラックを丸ごと乗せて重量を測る大型のはかりの販売とメンテナンスの仕事をしてます。今回は仕様変更の打ち合わせで行くんですが、家族の休みのタイミングが合ったので家族旅行も兼ねてます。フナ釣りのアクティビティの予約をしてますよ」

(あなたのニュース教えてください)

「運動会で長男の紅組が勝ちました!」

12:40 函館から出張

両手にカップめんを持つ男性と出会いました。
(道南ドキュメント7.2時間というコーナーの取材をしておりまして)

「先にちょっとお湯入れてもいいですか」

(もちろんです。今日はどうして奥尻島に)

「左官の仕事で2泊3日の出張です。まだ2年目なので先輩に怒られながらがんばっています。壁を平らに塗ったりするのが難しいんです。職人にはかなわないですよ。一人前になるには5年とか10年とかかかるんじゃないかな、本当に難しいです」

(あなたのニュース教えてください)

「本当は出張に行きたくない・・・函館で早く遊びたいです(笑)」

13:15 石川県から

「石川県から来ました。年いったしもう最後かなと思って車で来たんです」

(お若いですよ)

「男性)いやいや私は82歳、妻は80歳ですよ。1泊目は新潟で泊まって、あくる日は山形のさくらんぼ狩りに。日本海側を北上してきましたよ。北海道は2回ぐらい来てるけど奥尻島は行ったことなかったから楽しみなんです」

(旅行がお好きなんですね)

「田植えを終えて落ち着いたら毎年のように旅行に行ってます。海外旅行もだいぶ行ったしな~。奥尻島のあとは十勝も行きたい。あと帰りは太平洋側を回って大間のマグロも食べたいし、福島県にも行きたいなぁ」

(全部で何泊の旅行なんですか?!)

「いや、決めてない(笑)あんまり慌ててもダメだから時間に余裕をもってゆっくり周ろうと思ってるんです」

(あなたのニュース教えてください)

「2人とも健康で元気だからこうして旅行に出られたことかな。元気が一番!体が一番!」

(元気の秘訣は)

「よく食べよく働いてあんまりクヨクヨしないこと。のんびりする」

(たくさんのお話ありがとうございました)

「これも旅のいい思い出になります!」

13:40 フェリーで歯科に

(どんなご用事で)

「江差町の歯医者に行って、これから奥尻島に戻るところですね」

(奥尻島に歯科はないんですか)

「一応病院に歯科はあるんですけど、以前から江差町で治療をしていたのでフェリーで通ってます。治療が終わるまで2週間に1回ぐらいは行きますね」

(奥尻島でのお仕事は)

「奥尻島の自衛隊で勤務しております。5年目ぐらいです。滋賀県出身ですが島での暮らしもだいぶ慣れてきましたよ。不便な所もありますが都会のようなざわつきも無いし落ち着いた生活ができるんです。でも便利な生活に戻りたい気持ちも少なからずあります」

(どうして自衛隊に)

「憧れというか、かっこいい仕事だなと思って。自衛隊の前は建設業の仕事をしていたんですが年齢的に以前は入隊できなかったんです。2018年に採用上限年齢が引き上げになったので自衛隊に入ることができました」

(あなたのニュース教えてください)

「最近でなくて自衛隊に入ってから感じたことなんですけど、仕事を通して自分の成長を感じられるようになったというか・・・自分を見直せるようになったことですかね」

14:10 奥尻島到着

およそ2時間をかけて奥尻島に到着しました。
車にたくさんの荷物を積んでいるご夫婦にお話をうかがいました。

「函館の病院に行ってきた帰りですよ。今妊娠7か月なので産婦人科に。奥尻の病院には産婦人科がないんです」

(大変ですね、どのぐらいの頻度で)

「今は週に1回。大変ですけど仕事の息抜きを兼ねてますよ」

(奥尻島での生活はいかがですか)

「最近は釣りとかをして楽しんでます。山もあるし海もあるし自然が身近でいいです。奥尻にはクマもいないんで安心して山菜採りもいけますし」

(あなたのニュースは)

「やっぱり妊娠がわかったことが1番のニュースなので、生まれてくるのが楽しみです。性別もわかったので名前を考える楽しみも増えました」

(ありがとうございました。お体に気をつけて)

「ありがとうございます!」

14:40 レンタカーの受付で

レンタカーを借りに観光協会へ。受け付けてくれた方にもお話を聞いてみました。

「生まれは函館で、奥尻島に住んだのは今年の2月からです。奥尻は自然が豊かで夜は車が全然走ってなくて星もきれい。すごくいい環境で生活してます。都会で時間に追われてる方、時間を気にせずリラックスできる奥尻にぜひ遊びにきてください!」

15:30 海沿いで

車で海岸沿いを走っていると堤防に人影が。小屋の中でなにやら作業をしています。

(すいません、今なにをされてるんですか)

「イカとかを一夜干しするのにハエがつくじゃないですか、ハエが入ってこないように細かい網目を張ってたんですよ。一夜干しはおいしいよ、お土産とかで喜ばれるのさ」

(ずっと奥尻にお住まいですか)

「奥尻だよ、何年かな~75年!都会に住んだことないから奥尻が一番いいのかなと思ってる。食べるものうまいしさ、空気はいいしさ、生活はさほどいいってわけじゃないけどそれなりに生活できるから。ところでイカ刺し食べた?」

(さっき着いたばかりでまだなんです・・・)

「あらら、早く食べなきゃダメだよ!」

(最近個人的なニュースはありますか)

「そうね~、埼玉にいる孫が高専に入ったっていうこと。よく頑張ったと思ってこないだ電話では話したんだけど、コロナもあったから何年も奥尻に来てないんだ。7月にやっと来るって話で良かったな~って。お祝いしてあげようと思って」

(楽しみですね、何を食べさせてあげたいですか)

「そのころだったらイカ刺し・ウニ・ツブだとか、海の幸を嫌っていうほど食べさせてやろうかな(笑)」

16:00 島唯一のスポーツ店

島に一軒しかないスポーツ店にお邪魔しました。店内には奥尻島出身の元プロ野球選手・佐藤義則さんのユニホームや、ヤクルトに入団したばかりの坂本拓己投手のサインが飾られていました。

(突然失礼します、このお店には島中の人が買いにくるんですか)

「一応ここしかスポーツ店はないので。昭和62年からやってます。学校指定の靴とか少年野球のユニホームとか学校の先生方がジャージを買いにきてくれたりしますよ。でも今インターネットでも買える時代だからね。昔は運動会前とか繁盛したんですけど子どもも減ってるし・・・。でも近くにパークゴルフ場ができてからは年配の方も元気に楽しくやってます。私も午前やってきましたよ!」

(あなたのニュースは)

「マイニュース?お店の窓にカメラをつけて、なべつる岩のライブ配信をしてることです。みなさん見てください!」

16:30 喫茶店を経営

(奥尻島で7.2時間で出会った方にお話をうかがってまして)

「え~ご苦労さまです!私は奥尻島生まれです。すぐそこで喫茶店を経営してて今仕事が終わったところです。2018年の6月にオープンしました」

(どうして喫茶店を始めようと思ったんですか)

「もともとコーヒーが好きで地元でそういう場所を提供したいなと思って。奥尻高校を卒業したあと東京にいってカフェとかで働きながら勉強させてもらって戻ってきました」

(戻るのを決めてたんですね)

「そうですね、やっぱり奥尻島が好きだから。東京も好きですけど奥尻島も好きです。残ってる同級生は少ないんですけど、最近は移住してくる方も増えてきてて、若い世代の人で集まるようなイベントも今後はやってみたいんです」

(服装がとてもオシャレですがどちらで購入を)

「いやいや、インターネットとかですかね。船が欠航したりするので予定通りに届くことはあまりないんですけど・・・」

(あなたのニュース教えてください)

「あります!お店の人手不足で悩んでいたんですが、去年ご縁があった方がつい先日奥尻に移住してきてくれました。今月からスタッフで働いてくれることになりました!」

18:20 夕景の浜辺で

取材開始から6時間が経過。美しい夕日に見とれながら浜辺を歩いていると、バーベキューをしている人たちが。おいしそうな香りにも誘われ、お話を聞いてみました。

(皆さん奥尻の方ですか)

「男性)いや、半分はお客さんです。私はゲストハウス経営とネイチャーガイドをしてるんです」

「客)札幌から来ました。今回で4回目ぐらいかな。奥尻島の景色が好きすぎてウエディングフォトを撮りにきました。ゲストハウスのオーナーさんに撮ってほしいとお願いしてたんです。白いシャツにペインティングしながら、いい写真がバッチリ撮れました!」

(あなたのニュースは)

「客)やっぱり今日のウエディングフォトですよ!あとさっきサプライズでお祝いの手作りケーキに入刀させてもらいました」

(お幸せに!)

19:12 取材終了(7.2時間経過)

【制作後記】
取材翌日、函館への帰り道。窓辺で小さくなってゆく奥尻島を眺めながら、
自分が過ごした7.2時間って一言でいうとなんだろう?と考えていました。
月並みな言葉になってしまいますが「豊か」という言葉が頭に浮かびました。
皆さんから島暮らしの大変さ・不便なところもたくさん聞いたはずなのに・・・。
奥尻島ならではの時の流れ。そこに生きる人たちのお話と語る表情が、
なんだか「豊か」な気持ちにさせてくれました。
函館に戻ると夜もたくさんのお店が営業していて明るい。便利。少し安心しました。けれど奥尻島で感じた豊かさとはちょっと違うんです。んっ?「豊か」ってそもそもどういうことだ・・・??ないものねだりな自分と一人問答を続ける日々です。

ちなみに私のニュースは『ロケが不安過ぎて夢の中でも取材していた』です。
これまでの担当者から「緊張して前夜は眠れなかった・・・」と聞いていたものの、土日は毎週14時間睡眠の私は、余裕で眠れると思っていました。
実際に眠れたのですが・・・取材の数日前から毎晩夢の中でカメラ片手に島を駆けずり回っていました。夢の分も足せるなら7.2時間ではなく72時間は取材しました(苦笑)。

・第2回 ~大型連休中の道の駅~七飯町(2023年5月)
『道南ドキュメント7.2時間』#2 ~ 大型連休中の七飯町・道の駅にて~ 

・第1回 ~春を迎えた浜辺にて~函館・大森浜(2023年4月)
『道南ドキュメント7.2時間』はじめました。

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