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広島は軟弱地盤?地震・液状化のリスクは? 調べてみると…

  • 2024年04月01日

 

ことし1月の能登半島地震では、足元にある「地盤のリスク」が被害を拡大させた要因となりました。それでは、広島県内の地盤はどうなっているのか。専門家を取材すると、能登半島の被災地と同じようなリスクが潜んでいることが明らかになってきました。

(広島放送局「あなたのそばにも活断層」取材班)

多くの建物に被害 能登半島地震

ことしの元日に発生した能登半島地震。最大震度7を観測したこの地震では、3月15日の時点で241人(災害関連死含む)が亡くなり、7万棟余りの住宅で全壊や半壊などの被害が確認されています。

能登半島地震では多くの建物が倒壊した

専門家が被災地で調査

こうした大地震の際、建物の被害を拡大させる要因のひとつになるのが地盤の性質です。地盤の軟らかさで、揺れの「周期」や「増幅度」が大きく変わってくるからです。

地震工学が専門の広島大学大学院の三浦弘之教授は、1月末に能登半島の被災地で地盤の調査を行いました。

画像提供 広島大学三浦研究室

訪れたのは石川県の輪島市と穴水町。震度7と6強の揺れを観測し、甚大な被害を受けた地域です。

広島大学大学院 三浦弘之 教授
「(過去の地震で)私もいくつか被災地を見てきましたけども、1、2を争うぐらい被害が大きい地域だったかなと。輪島市の中心部は、特に木造住宅の被害が大きかったかなと感じました」

輪島市の測定結果

グラフは、三浦教授が調査した輪島市の地盤のデータです。横軸が「周期」で、縦軸は「増幅度」を示しています。輪島市では、木造の建物に大きな被害を与える周期1秒程度の揺れが最も増幅していました。

広島の地盤は?

では、私たちが住む広島には、地盤にどのようなリスクがあるのでしょうか。三浦教授と調査しました。

広島市内の公園で調査(許可を得て調査・取材しています)

訪れたのは、広島市内のあるエリア。

「己斐ー広島西縁断層帯」震度想定

広島市の西部に延びる「己斐ー広島西縁断層帯」に近く、この断層で地震が起きた場合に、震度6強の激しい揺れが想定されています。この地域の地盤はどんな性質なのか、調査してもらいました。使うのは「微動計」と呼ばれる機器。私たちが気づかない微弱な揺れを測定できます。

広島市(観測地点の公園)と輪島市の測定結果

測定の結果が赤色のグラフです。黄色の輪島市と比べると、揺れの周期は短くなっています。ただ、揺れの増幅度が大きくなる地盤であることが分かりました。この地域の地盤は軟らかく、固い地盤と比べて揺れが大きくなりやすのです。

耐震診断・耐震補強を

広島大学大学院 三浦弘之 教授

広島大学大学院 三浦弘之 教授
「揺れの度合いが能登半島の被災地などと匹敵するような大きさだったので、揺れ自体の大きさが非常に増幅されやすい地盤だなと。もし地震が起きた時には、どれぐらいの揺れになるんだろうというのを把握してもらって、耐震性が十分かどうか、例えば耐震診断であるとか、耐震補強であるとか、そういうことを検討して頂く必要があると思います」

広島の地盤にもリスク?記者が解説

岡崎アナウンサー

能登半島地震では多くの木造住宅が倒壊しましたが、今回のような調査結果を見ると、そうした被害が広島でも起きうることを示しているんでしょうか?

小野記者

はい。三浦教授も、今回調査したような地盤が軟らかい場所では、激しい揺れが襲った場合、古い木造住宅を中心に倒壊するおそれがあると指摘しています。そして、こうした軟弱な地盤は、川沿いの都市部を中心に広がっているとも指摘しています。

岡崎アナウンサー

被害が心配されますね。

小野記者

はい。広島に広がる軟らかい地盤には別のリスクもあります。能登半島地震でも見られた液状化現象です。

震度5弱の石川・内灘町は

石川県内灘町

石川県内灘町です。能登半島地震では震源から100キロ離れ、揺れそのものは震度5弱でした。ところが、大規模な液状化現象に見舞われました。軟らかい地盤が揺れによって、まるで液体のようになったのです。

液状化現象で被害が拡大

液状化によって、多くの住宅が傾いて住み続けられなくなったほか、地中にある水道管が壊れて断水の被害が出ました。

県内にも液状化のリスクが

現地を調査した専門家は、広島県内でも液状化は起こりうると指摘します。

鳥取大学工学部 小野祐輔 教授

鳥取大学工学部 小野祐輔 教授
「液状化して被害が出るというような場所は、中国地方でもかなり多くのところにあると思っています。砂が緩く堆積していて、しかもその砂の層が地下水に浸かっているところが強い揺れを受けると液状化する。瀬戸内海側だと海に近い埋め立て地になります」

沿岸部で液状化のリスク大きく

岡崎アナウンサー

液状化現象は、広島県内でも起こりうるということなんですね。

液状化危険度分布図
小野記者

はい。こちらは広島県が作成した「液状化危険度分布図」です。南海トラフ巨大地震の被害を想定していて、赤に近いほどリスクが高まります。広島市や三原市といった瀬戸内海に面する沿岸部で、赤やオレンジが目立っているのが分かります。

岡崎アナウンサー

対策はできるんでしょうか?

小野記者

住宅の被害については、建物の「くい」を地下深くまで打ち込むことで被害を防げる場合があります。ただ、水道などのライフラインや道路の通行にも支障が出るおそれがありますので、液状化のおそれがある地域では、水や食料など多めの備蓄をしておくことが大切です。

岡崎アナウンサー

ふだん建物の対策などに目が行きがちですが、私たちの足元の「地盤」のリスクも知っておく必要があるんですね。

小野記者

はい。地盤の違いで地震の被害は大きく変わってきます。自治体が公表している揺れの予測図や「液状化危険度分布図」などを確認して、自分が住んでいるところの被害想定を知ったうえで、対策に生かしてほしいと思います。

  • 小野慎吾

    広島放送局 記者

    小野慎吾

    スポーツ紙記者を経て2016年に入局
    岐阜局、スポーツニュース部を経て22年2月から広島局
    現在は広島県政担当

  • 苅田章

    広島放送局 ディレクター

    苅田章

    1993年入局 
    科学番組を長く担当し、23年秋から広島局に所属 
    岡山県出身

  • 財津芳紀

    広島放送局 ディレクター

    財津芳紀

    2014年入局
    岡山局初任 第3制作センター(エンターテインメント)を経て22年広島局赴任
    出身 大阪府 
    趣味 バスケ 

  • 佐藤凜太郎

    広島放送局 ディレクター

    佐藤凜太郎

    2021年入局
    政経・国際番組部を経て22年から現所属 
    ミャンマーをはじめ、アフガニスタンやロシアの少数民族を取材

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