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広島県内の地震リスク 活断層は?地盤は?対策は?詳しく解説

  • 2023年09月25日

関東大震災から9月1日で100年。広島県内にはどんな地震のリスクがあるのか、そしてどんな対策をすればいいのか、専門家などに取材しました。詳しく解説します。

(広島放送局記者 小野慎吾)

広島県内に切迫度高い活断層

まず考えたいのが地震のリスク。広島県内で大きな被害が想定される地震は主に2つあります。その1つが活断層による地震です。

広島県や周辺には活断層が複数あります。上の図の赤で示したのが主な活断層。阪神・淡路大震災と同じような規模のマグニチュード7クラスが想定されるところもあります。

この中で最も発生確率が高いのが、広島県から山口県の沖合に延びる「安芸灘断層帯」。発生確率は0.1%から10%です。この数字を見ると低いと感じるかもしれませんが、国のランクでは切迫度が最も高い「Sランク」に入っています。

また「岩国ー五日市断層帯」では、一部の区間で発生確率が0.03%から2%。上から2番目の「Aランク」の切迫度です。

犠牲者約1万5000人の予測も

2つめは南海トラフ巨大地震です。今後30年以内に70%から80%の確率で起きるとされています。

最も大きな被害が出た想定では、県内の揺れは最大で震度6強。津波は最大4メートルにも達します。犠牲者は最大でおよそ1万5000人に上る予測です。

その一方で、県内で震度6弱以上の揺れを観測したのは、20年以上前のこと。2001年3月の芸予地震で、現在の東広島市、熊野町、大崎上島町で観測したのが最後です。

広島県内では、地震を“自分事”として捉えていけるかどうかが課題となっていると、行政の担当者や専門家は口をそろえます。

地域の人たちに“実感”を

住民の中にも、地震・津波への対策を課題だと感じている人がいました。広島市南区の宇品西地区の住民、横山稔さん(77)です。

横山稔さん

宇品西地区は広島湾に近く、南海トラフ巨大地震の津波で最大3メートル以上の浸水が想定されているところもあります。

こうした中、横山さんは6年前に防災士の資格を取得し、地域の防災活動を主導してきました。しかし、どのようにすれば地震を“自分事”として感じてもらえるかが課題だと言います。

防災士・横山稔さん
「実際に大きな地震に遭われた方が少ないので、一概に“東日本大震災の時はこうだよ、だからこうしようね”って言っても、実感としてわかないところがあるんじゃないかなと思うんですね」

広島でもいつ起きるかわからない大地震。地域の人たちに実感を持ってもらうために横山さんは模索を続けていく考えです。

防災士・横山稔さん
「東日本大震災の時の津波が来る時の状態とか、津波が去ったあとの状態とか、そういうのを映像で見せることをやろうとしています。“人を怖がらせるな”と言う人もいるんですが、やはり実感を持ってもらわないといけない」

広島県の新たな取り組み

“自分事”と捉えてもらうための啓発。行政も新たな取り組みを始めています。

広島県がことし6月から公開している「ひろしま自然災害体験VR」の地震編です。VR=バーチャルリアリティーで、地震や津波の怖さを実感してもらおうというものです。

想定は南海トラフ巨大地震で、県内で震度6弱の揺れが起き、高さ4メートルの津波が起きたというもので、ストーリー仕立てで災害時の状況が体験できます。

私もゴーグルをつけて体験させてもらいましたが、360度のリアリティーのある映像で巨大地震と津波の恐ろしさを改めて実感しました。

広島県みんなで減災推進課 橋本裕之課長
「県内は2001年の芸予地震以来、大きな地震が起きていないので、あまり大きな地震が起こるという意識がないのではないかと感じています。(VRは)地震、津波について知っていただく第一歩かなと思っています」

専門家も指摘するリスク

このVRの監修に加わった、広島大学大学院の三浦弘之准教授は、広島県は決して地震に強くはないと指摘しています。その理由のひとつが県内の「地盤」です。

上の図は県のデータをもとに、三浦准教授が作成した「地盤の揺れやすさ分布」です。赤が地盤が揺れやすい地域ですが、広島市や呉市、三原市、福山市といった南部の人口が多い地域で赤が目立っています。

広島大学大学院先進理工系科学研究科 三浦弘之准教授
「広島市の中心部のように、江戸時代に埋め立てられた地盤が広く分布している地域や、大きな川沿いの地域では非常に地盤が軟らかい状態になっていて、地震の時に非常に揺れが増幅される、揺れが大きくなりやすいという特徴があります」

先ほどご紹介したVRについて、三浦准教授は「大げさではなく、広島県でもありうるような被害」とも語っています。毎日のように地震が起きている日本列島。何より大切なのは、地震はいつ起きても不思議ではないこと、大きな地震が起きると広島県でも甚大な被害が出ることを意識することだと思います。

広島大学大学院先進理工系科学研究科 三浦弘之准教授
「防災というのは自分で備えるのが第一です。ハザードマップを見て自分で準備をする、VRを見てイメージを膨らませて、どういうことが身の回りで起きるのかというのを想像することが大事かなと考えています」

忘れず備えを

大きな地震の少ない広島県。それでも専門家や県の担当者が指摘するように、地震のリスクが低いことを意味しません。大地震はいつ起きてもおかしくない。そのことを踏まえ、備えを進めてほしいと思います。

  • 小野慎吾

    広島放送局 記者

    小野慎吾

    スポーツ紙記者を経て2016年入局。京都局学研都市支局で防災の取材に携わった後、岐阜局、スポーツニュース部を経て去年2月から広島局。

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