ページの本文へ

ひろしまWEB特集

  1. NHK広島
  2. ひろしまWEB特集
  3. 呉で第2の人生 製鉄所での仕事を失い“模型店のオヤジ”に

呉で第2の人生 製鉄所での仕事を失い“模型店のオヤジ”に

  • 2024年03月29日

製鉄所での仕事を失ったことをきっかけに長年憧れ続けた模型店を56歳で始めた男性がいます。第2の人生を踏み出した男性の思いを取材しました。

(NHK広島放送局カメラマン 武石多唐)

模型ファンで賑わう模型店

呉市の住宅街にある模型店。
店に入ると…

県内外の模型ファンでにぎわいます。

店長の西村登さんです。客どうしが作品を見せ合ったり、情報交換ができる店を目指しています。

西村さん
「いま個人の模型店がどんどん少なくなってきて、趣味の話を一緒にわいわいする場がなかったんです。ぐっと思い出すというかよみがえるというか、こういう楽しみ方があるよね」

西村さんが模型作りを始めたのは12歳の時。当時はプラモデルが大人気で、西村さんも車や人気アニメのプラモデルを手に取り夢中で作りました。
自分が想像したものを自由に作ることができるのが模型の魅力と話す西村さん。大人になっても作り続け、今ではコンクールで入賞するほどの腕前です。

西村さん製作のF14戦闘機

こちらは、西村さんが製作したF14戦闘機です。得意の塗装を生かして、汚れやさびなどを塗布しリアルさを追求、人を置くことで迫力を出しています。

巡洋艦・青葉の模型

こちらは、昭和20年に呉市の港で大破した巡洋艦・青葉です。当時の資料を見て、壊れた船体を忠実に再現しました。

失業を経験し第二の人生へ

実は、西村さんが店を開いたのは、わずか1年半前です。
これまで39年間、呉市にある日本製鉄の製鉄所の中で車の整備をしていました。

転機となったのが、製鉄所の閉鎖の決定です。勤めていた協力会社が廃業し、突然仕事を失った西村さん、初めは途方に暮れたと言います。

西村さんON
「実感がなかったですね。生活していかにゃいけんですよね、それもすごく思うんだけど、なかなか気持ちがうまく切り替えられないのもあります」

第2の人生をどうするか、悩む西村さんの背中を押したのは家族でした。
妻の淳子さんが夢だった模型店をやってみればと声を掛けてくれたのです。

淳子さん
「日鉄(日本製鉄の瀬戸内製鉄所呉地区)がなくなるタイミングでやらせてあげなかったらできないだろうなと思ったんですよ、それでどうなるかわからないですけど、やってみたらどうですかと言いました」

西村さん
「そう言ってくれるならやるよ、と。家族の協力を得てということでうれしいですよね」

西村さんのこだわりが詰まった店

そしてオープンした模型店。店には、西村さんのこだわりが詰まっています。
店内の商品は600点あまり、西村さんが目利きした珍しいプラモデルが並びます。
さらに、誰でも模型を展示できるスペースを設けました。

男性客は…

「囲まれるとか浴びるとか、材料とかプラモデルとかに取り囲まれているこの環境が楽しい」
「思い出がよみがえって感覚的には40年前に戻っている。たぶんね寿命いま延びてる」

中でもお客さんを引きつけるのが西村さんの豊富な知識です。
西村さんの周りには自然と輪が生まれます。

西村さん
「ゴーグルのところへね、UVレジン、100均で売りよるじゃろ、あれつまようじの先に付けて」

新たな模型ファンも

西村さんの影響で、新たに模型作りに熱中する子もいます。

池田優光くん、小学2年生です。
去年11月、西村さんが開いた展示会に参加した優光くん。そこで見た模型の数々に大好きな船を自分の手で作れることを知りました。

西村さん
「優光くんもすごい悩むんですよ。箱を開けてみて自分で作れるかなとか。僕もああだったなと思いますね」

今では、西村さんの模型店に通い技術を教わっています。
模型の魅力を伝えたい。誰もが楽しめる模型店を目指します。

西村さん
「この店来てから、模型作りをやりだしたんよと聞くと、やりがいがあるな、うれしいなと思いますよね。1人で黙々と作るものなんだけど、ここにきたら同じ話題でわっと盛り上がれる。同じ趣味の話が、もっと深い話ができるというのはおもしろいですよね。そういう輪ができるような店ができたら一番いいなと思います」

西村さんは、これからも定期的に展示会や教室を開いて、模型作りの魅力を広めたいと話していました。

  • 武石多唐

    広島放送局 カメラマン

    武石多唐

    2022年入局。
    花を撮るのが大好きです。

ページトップに戻る