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「旧耐震」木造住宅の耐震化どうすれば?能登半島地震で被害

  • 2024年02月22日

最大震度7を観測した阪神・淡路大震災や能登半島地震で甚大な被害を受けたのが古い木造住宅。「旧耐震」と呼ばれています。大切な命を守るために、いま求められているのが耐震化です。どのようにすればいいのでしょうか?詳しく解説します。

(NHK広島放送局記者 小野慎吾)

耐震診断の結果は…

広島市佐伯区に住む女性です。

5年前、自宅の耐震補強工事を行いました。木造の住宅を耐震パネルなどで補強したと言います。66年前の1958年に建てられたこちらの住宅。耐震診断をしたところ、「震度6強の揺れで倒壊する可能性が高い」と判定され、補強に踏み切ったのです。

住人の女性
「古い家なので、耐震的にどうなのかなって、ちょっと1度確認はしておいたほうがいいかなということで、診断を受けることにしました。(結果は)大きな揺れ来たら、全壊するぐらいのレベル感だったので。もう家全体が危険なんだなっていうことを実感しました」

耐震補強 行政の補助も活用

補強によって、この住宅の耐震性は大きく向上しました。

住人の女性
「1階部分で言いますと、この赤いところですね。これだけ耐震補強の工事をしていただいてます」

壁に耐震パネルを設置したのはあわせて13か所。建物の土台なども強くしました。費用はおよそ300万円。このうち50万円は行政の補助金を活用しました。

住人の女性
「今後、ある程度住むにあたっては安心感はあるかなとは思いましたけれども、安心だなっていうよりも、やる、やれることはやったなっていう気持ちだっていうのが正直なところですね」

耐震補強の効果 専門家は

1981年より前に建てられた住宅は「旧耐震基準」と呼ばれ、大きな地震のたびに倒壊して多くの命が奪われてきました。

耐震補強には、どのような効果があるのか。地震工学の専門家に説明してもらいました。

広島大学大学院 先進理工系科学研究科 三浦弘之准教授

広島大学大学院 先進理工系科学研究科 三浦弘之准教授
「これは2階建ての建物の模型なんですけども、旧耐震の建物は左に近くて、新耐震の建物が右に近いというイメージですね」

左の模型は補強されていない旧耐震基準の建物をイメージ。右は建物の壁を補強したイメージです。

2つを同時に揺らしてみると…

左の“旧耐震”の建物が揺れが大きい

広島大学大学院 先進理工系科学研究科 三浦弘之准教授
「旧耐震の場合に比べて新耐震の建物というのが揺れが小さくなるということが分かるかと思います。耐震補強すると、壁や筋交いを入れるということになるので、右の模型とほぼ同じような形になる」

「旧耐震」の被害 データで見ると

さらには、こんなデータもあります。熊本地震で大きな被害を受けた熊本県益城町で行われた調査・分析結果です。

 

一番上が、1981年より前の旧耐震基準で建てられた木造住宅の被害です。
グラフの赤い部分は倒壊や崩壊した住宅の割合。新しい住宅に比べ、被害の割合が突出しています。

広島大学大学院 先進理工系科学研究科 三浦弘之准教授
「(倒壊や崩壊の)被害の割合が30%弱ということで、それ以降の建物に比べると非常に被害の割合が高いということが分かります」

 

専門家は、広島の住宅でも耐震補強が急がれると言います。

広島大学大学院 先進理工系科学研究科 三浦弘之准教授
「能登半島で大きな被害を受けた輪島市と穴水町、それから広島市での地盤の揺れ方を比較した図になります。非常に揺れ方の特徴というのがどれも似ている」

広島市など瀬戸内海に面した都市部は軟弱な地盤となっていて、地震で揺れが大きくなりやすい傾向があるというのです。

広島大学大学院 先進理工系科学研究科 三浦弘之准教授
「古いままの建物っていうのは、恐らく耐震性が非常に低いと思われますので、まず意識を持ってもらって、調べてもらうというのが第一歩で。そのうえでですね、本当に危なそうであれば、本当に補強を検討するであるとか、補強に踏み切るというようなことも視野に入れていただきたい」

記者が解説 耐震化の流れは?

岡崎アナウンサー

能登半島地震を受けて、住宅を耐震化したいという方もいらっしゃると思います。
具体的にどのようにすればいいのでしょうか。

小野記者

流れをご説明します。
▼まずは工務店など専門の業者に相談します。
▼その上で、耐震性を調べる「耐震診断」を行います。
▼耐震性が低いと診断された場合、業者に補強を依頼します。

小野記者

耐震診断についてですが、
▼耐震診断には広島県内すべての市と町で補助が出ています。
▼補強の際にも市や町によっては補助が出ます。
▼例えば広島市では、旧耐震基準の木造住宅を補強する場合、最大100万円の補助が出るということです。
診断や補強をする際には、自治体にも相談してほしいと思います。

記者が解説 広島県内の耐震化の課題は?

岡崎アナウンサー

県内で耐震補強は進んでいるのでしょうか。

小野記者

2021年の時点の推計で住宅全体の耐震化率は「84.5%」となっています。

岡崎アナウンサー

この数字はどう捉えれば良いのでしょうか?

小野記者

低いと言えると思います。
県の計画では、2年後の2026年までに「92%」を目標にしています。
全国の耐震化率は2018年の時点でも推計で87%にのぼり、県全体の耐震化率はそれより低くなっています。
県の担当者に、耐震化が進まない要因を聞いてみました。

広島県建築課 河野龍課長

広島県建築課 河野龍課長
「広島県においては、建物がたくさん倒壊する大きな地震が幸いにもなかったということで、それと補助制度があるとはいえ、耐震改修工事等々進めるにあたってやっぱり自己負担もあるというところで、そこら辺もなかなか進まない原因になっているんじゃないかと考えております」

岡崎アナウンサー

広島県内でも大きな地震による被害が想定されています。
命に関わる問題なので、耐震化を急いでほしいですよね。

小野記者

そのとおりだと思います。
実際に補強をすれば、命が助かる可能性が高まることは過去の地震からも明らかになっています。費用がかかるという課題はありますが、まずは家の耐震診断を行うところから始めてほしいと思います。

一方で、県の事業で耐震補強への補助を行っていますが、その事業を活用しているのは、2024年度の時点でも23の市町のうち16の市町だということです。行政にも積極的に耐震化を推し進めるよう求めたいですね。

  • 小野慎吾

    広島放送局 記者

    小野慎吾

    スポーツ紙記者を経て2016年入局。岐阜局、スポーツニュース部を経て2022年2月から現所属。8月から広島県政担当に。

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