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広島 カープ 新井語録 後編 新井貴浩監督 リーダーのことば

  • 2023年10月11日

 

レギュラーシーズンを2位で終えたカープ。いよいよ5年ぶりのクライマックスシリーズが始まります。「お好みワイドひろしま」や試合の中継の中で、新井監督のことばを数多く紹介してきました。「新井語録~リーダーのことば~」後編、シーズン後半を振り返ります。

(広島放送局 アナウンサー 武本大樹)

7月後半 破竹の10連勝

彼はオンリーワンの選手。

上本崇司選手がプロ初の4番で先発出場。マツダスタジアムにもどよめきが起こりました。起用の意図を聞かれた新井監督は、「崇司はチャンスメイクもできるし、勝負強さもある。だからきょうは4番にいってもらった。崇司は本当にすばらしい。いろんなポジション、いろんな打順をやってくれる。オンリーワンの選手、彼は。信頼しています」と熱く。自分が上本選手だったら、これほどうれしいことばはないと思いました。

場所を変えることによって見える景色が変わる。

7月下旬、1塁と3塁のベースコーチを務める、赤松真人コーチと小窪哲也コーチのポジションが入れ替わりました。新井監督は、チームが好調の中で変更した理由を「何事も動かすのは勇気がいる。でも、もっともっと良くなると思っている。まだまだ強くなると思っているから。そこで感じたこと、気づいたことをフィードバックしてほしい」と説明しました。小窪コーチも「3塁コーチの時に見えていた各選手のリードの癖などをフィードバックできている」とその効果を口にしていました。

彼が頑張っているから、ベンチも喜ぶんだと思う。

デビッドソン選手の決勝タイムリーが8連勝につながりました。新井監督は「本当にいいタイムリーヒット。私だけではなく、ベンチ全員がうれしそうだった」と笑顔。デビッドソン選手も「今のチームの雰囲気を作っているのは新井監督。このチームで野球をしているのがうれしいし、楽しい」とびっしょりと汗をかきながら話しました。

 

まずは明日のこと。あさってのことはあさってに考えます。

9連勝となり、翌々日からの首位・阪神との直接対決に向けて問われた新井監督。一日一日、一戦一戦と繰り返してきた新井監督の象徴的なことばです。

チーム全体に最後の最後まで諦めない統一意識があること。

逆転勝ちの多さの理由を問われた新井監督。どんなプロジェクトの成功のためにも大切な要素だと感じました。

きょうは俺がやるぞ、きょうは俺がやるぞ、という気持ちが伝わる。

4年ぶりの10連勝。日替わりでヒーローが生まれる理由を新井監督はこう語りました。

皆でワイワイやっています。

ここで新井監督をいつもそばで支える同学年の藤井彰人ヘッドコーチのことばをひとつ。藤井ヘッドコーチは「とにかく監督がベンチの中で声を出せと言っている。「さあ、行け」という感じよりは、ワーワー言っている感じですけどね(笑)」と笑顔でした。

 

8月 “麦”のように

野球が当たり前のように毎日できることに感謝の気持ちを持って。

8月6日、広島原爆の日。監督として初めて迎えるピースナイターを前に。新井監督は、漫画「はだしのゲン」から大きな影響を受け、踏まれても踏まれても立ち上がる“麦”のような生き方をしたいと語っていました。

しっかり反省して、また来週からしっかり戦っていきたい。私が反省してね。

今シーズン初の6連敗となった8月中旬。これまで大車輪の活躍を見せてきた先発や中継ぎ陣が失点し、打線もつながらず、投打がかみ合わない試合が続きました。新井監督は責任のベクトルを常に自分に向け、前を向いていました。

彼のガッツポーズを初めて見た。気持ちが熱くなった。

6連敗を止めたこの日。新井監督は「うちらしい全員野球で止めた連敗だった」と振り返ったうえで、ふだんはマウンドで表情をほとんど変えない島内投手のしぐさにチーム全員の気持ちが表れていたと熱を帯びた表情で語りました。

おまえが頑張ったんだから、おまえに決める権利がある。

雨による中断もある中、8回まで無失点の好投を続けた床田寛樹投手に新井監督がかけたことばです。9回もマウンドに上がり、完封勝利の結果で応えた床田投手は、念願のシーズン10勝に初めてたどり着きました。

打ってよし、守ってよし、走ってよし。名前はたかよし。

いつも笑顔が絶えない新井監督の囲み取材。3安打2打点の活躍をした野間峻祥選手を称えていました。

トライして、エラーして、繰り返して成長していく。

エラーが重なり、失点したことについて、新井監督は「積極的にいく中でのミスはいいからと言っている。野球にミスはつきもの。それを取り返すチャンスはたくさんある」と失敗を糧にする大切さを説いていました。

自分で殻を破ってくれた。

島内颯太郎投手が球団の日本人投手で最多の32ホールドに並びました。新井監督は「驚きはないですよ。もともと彼の投げるボールはすばらしい。こっちも期待していた」と冷静な表情で称えました。

心からおめでとう。

駒沢大学の後輩、中日の大島洋平選手が通算2000本安打を達成。新井監督は「彼は大学、社会人を経由しているので、この2000本はすごい。心からおめでとう。まだまだ頑張ってください」と後輩の偉業に拍手を送りました。

最後まで残ってくれたファンの皆様、ありがとうございました、って書いておいてね。

8月最後のマツダスタジアムでの試合は延長12回でも決着がつかず、5時間1分。「執念も集中力も両方あるからこういう試合ができる」と振り返りました。取材が終わり立ち去りかけていましたが、戻ってきてひと言。報道を通してファンへの感謝を伝えてほしいと頭を下げました。

9月 苦しみの終盤戦

けがになる前にやめなさい。

選手のコンディションに細心の注意を払ってきた新井監督。終盤に入り、主力のけがが目立ち始めました。西川選手がわき腹の痛みを再び感じた瞬間にもこう言って試合途中で交代させました。

成長して積み上げてきたものがある。信頼が変わることはありません。

好投を続けてきた島内颯太郎投手が3試合連続失点。ほとんど表情を変えない島内投手がマウンドでがっくりと肩を落とす姿がありました。新井監督は「ここまでずっと頑張ってくれていた。いいところに行っても打たれることもある」と努めて笑顔で話しました。

私自身も信じられないようなミスをしてきた。また明日に期待しています。

ファームでの調整を経ておよそ3か月ぶりに1軍に戻ってきたマクブルーム選手。「期するものがあると思う」と期待して起用するも、エラーが失点につながりました。新井監督はシーズン終盤の勝負どころでも、ミスを責めることはなく、明日へのばねにしてほしいという姿勢は崩しませんでした。

選手全員の頑張りに頭が下がります。

3位・DeNAとの対戦に2夜連続でサヨナラ勝ち。「負けられない戦いが続く中で、選手全員のその日勝つんだという気持ちが伝わってくる。戦いながらチームが強くなっている実感がある」と興奮で少し顔を赤くしながら話していました。

 

我慢とかじゃないです。

「若手を我慢強く起用してきた結果が出てきているのでは?」と問われた新井監督。何とか1軍の試合の中で経験を積んでもらいたいと思って起用してきたことを彼らが力にしているだけと繰り返していました。

広い視野を持ちなさい。

9月に入って攻守に躍動した小園海斗選手。ことしはおよそ2か月半のファームでの鍛え直しがありました。新井監督は成長した部分を「一番はメンタル。マインド」と指摘し、内野の中心として全体を俯瞰(ふかん)して見られるようにとアドバイスしてきたと言います。ピンチの場面で小園選手がマウンドに声をかけに行く姿もたびたび見られるようになりました。

きょうは終わった。また明日の試合に備えていきたい。

首位・阪神に迫る最後のチャンスと目されていた甲子園での戦いに連敗。重苦しい雰囲気の中、私たちにも切り替えなさいというメッセージに聞こえました。

振り返っている暇はない。

前日に優勝を決めた阪神をマツダスタジアムに迎えて勝利。「ガクッときていたらこの試合をものにできていない。ピッチャーも野手も全員。もちろん僕も。自分たちには次の目標がある」と前を見すえました。

山本浩二さんも30歳を過ぎてからでしょ。

9月に入って好調の堂林翔太選手。4番としてチームを引っ張る姿はカープファンにとって長年の夢のひとつだったと言ってもよいかもしれません。新井監督は「特に驚きはないよ」としたうえで、球団のレジェンドのようにさらなる活躍を期待していました。

 

自分の立ち位置がわかっている。背中で見せてくれている。

會澤翼選手が通算1000試合出場を達成。新井監督は「価値がある。練習前にランニングしたり、トレーニングしたりする姿を自分も見ている。ここまで試合に出るのが少ないのは初めてだと思う。言いたいこともあるだろうけど、それをこらえて、どう振る舞うか考えてくれている」と35歳のベテランへの信頼を口にしました。

自分のミスだと思う。選手は一生懸命やっている。

相次ぐけが人。「これだけけが人が出ると監督も苦しいのでは?」と向けられた新井監督。「みんな開幕からアクセル全開で来てくれている。自分がマネジメントをミスしているからこうなっている」ときっぱり。嘆くことばは一切ありませんでした。

万全ではない中で、自分のパフォーマンスをいかに出していくか。

足首をひねるアクシデントがあった小園選手。新井監督は中心選手として試合に出続ける覚悟を植え付けているように感じました。

よく頑張りましたよね、本当に。

島内投手が最優秀中継ぎ投手のタイトルを確定させました。新井監督は「タイトルはなかなか取れるもんじゃない。開幕当初は8回という役割じゃなかったけど、自分でそこを勝ち取った。おめでとうと言いたいと思います」と笑顔で称えていました。

 

10月 いざCSへ

気持ちの「しん」

3連覇にも貢献した一岡竜司投手が引退を発表。選手としてもともに戦った一岡投手の一番の良さを問われ、「イッチーはふだんは物静かで優しいけど、「しん」が強い。マウンドでバッターに向かっていく。気持ちの「しん」だと思います」と答えました。

監督は私。批判も結果も全部私が受け止めます。

順位が確定していない状況でも最終戦に一岡投手を登板させることを決めた新井監督。「いろんな意見があると思うし、いろんな考えがあると思う」としたうえで、覚悟を持って一岡投手をマウンドに送り出す考えを示しました。

 

イッチーからザキにボールを渡してほしかった。

新井監督の公言通り、最終戦の6回、一岡投手がマウンドへ。大歓声の中、こん身の144キロで見逃し三振を奪いました。中﨑投手への交代が告げられ、ベンチに帰ろうとする一岡投手を新井監督はマウンドに戻しました。「イッチーは控えめだからすぐ帰ってこようとするから、ちょっと待て待てと(笑)。優勝した時にも一緒に戦っているわけだから、最後はボールを渡してほしかった」と心づかいの詰まった瞬間を演出しました。

きょうの負けはめちゃめちゃ悔しい。この悔しい気持ちを持って全員でCSを戦っていきます。

最終戦は、床田投手をリリーフで起用するなど、執念を見せながらも最後は及ばず。試合後、ファンへのあいさつで新井監督は、悔しさを全面ににじませながら「このメンバーには初めてCSを経験する選手もたくさんいます。この経験は彼らを大きく成長させてくれると思います」と力強く語りました。さあ、いよいよ5年ぶりのクライマックスシリーズが始まります。

 

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