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広島 カープ 新井語録 前編 新井貴浩監督 リーダーのことば

  • 2023年07月19日

オールスターまでの前半戦を終えたカープ。5年ぶりの優勝を目指し、シーズンの後半戦に臨みます。チームの成長の裏には新井監督の常に前向きなことばや姿勢があると感じます。「新井語録」として、印象的な“リーダーのことば”をピックアップしました。

(広島放送局 アナウンサー 武本大樹)

3月 シーズンを前に

ファンの人たちは勝ち試合を見ると気持ちよく帰れる。

マツダスタジアムでことし最初のオープン戦に勝利。新井監督が最初に口にしたのはファンへの思いでした。

祐輔、頑張ったね!ナイスピッチング!

2軍キャンプだった野村祐輔投手をマツダスタジアムでのオープン戦に登板させた新井監督。試合後、報道陣の取材に答えている際に通りかかった野村投手にかけたことばです。「このあとは、またファームに戻ってということになるが、シーズンは長い。必要になる時が来るからと伝えた」という新井監督。野村投手は、その答えを6月にしっかりと出しました。

お客さんが入っている中で1軍の試合に出てほしかった。「頑張ってここでプレーするんだ」と思ってくれれば。

試合前に新人選手がファンに紹介された3月12日のオープン戦。新井監督はその新人選手たちを積極的に起用しました。ドラフト2位の内田湘大選手は「結果はともかく思い切って振れたことは良かった。ここに来てプレーしたいと強く思った」と充実感を漂わせていました。

何より名前がいいよね。最高じゃん!スター性を感じるよね!

同じ試合で、育成の中村“貴浩”選手が途中出場。最初の打席、初球をとらえてヒットを放ちました。新井監督は、「初球からしっかりバットを振れていた」「キャンプの第1クールから準備ができていた」と結果が出た背景に目を向けていました。その後、中村貴浩選手はファームの試合で結果を残し、支配下登録を勝ち取りました。

もう、ナイスピッチング。何も問題ございません。

開幕投手に指名した大瀬良大地投手がオープン戦最後の登板。絶対的な信頼がにじみ出ていました。

オープン戦までのプランは立てていない。まだ始まっていない。今からがスタート。

「オープン戦までのチーム作りはプラン通りか?」と問われた新井監督。新井監督の長期的なチーム作りへの決意が感じ取れました。

4月 開幕からの逆境を乗り越えて

まだ3試合でしょ。

神宮球場でのヤクルトとの開幕カードに3連敗。報道陣の質問に冷静に答えたあと、新井監督は、こう言って前を向きました。

みんなの気持ちは伝わる。すごく伝わっている。

マツダスタジアムでの開幕戦も落として4連敗。しかし、一時は追いつき、粘りを見せた選手たち。新井監督は「何とかしたい」「何とか勝ちたい」という思いが伝わってきたと繰り返していました。

いい勝ちをプレゼントできてホッとしています。

4月6日は今シーズン最初のNHKのカープ中継。私はインタビュアーとして新井監督初勝利の第一声を聞く機会に恵まれました。最初に出てきたのは、やはりファンへの思い。この日はマツダスタジアム通算500勝にも重なりました。新井監督は「500勝に携わった全ての方々に感謝したい。次は501勝目を目指して、またベストを尽くしたいと思います」と笑顔でした。

彼はこれからの選手。ファームでしっかりと力をつけてほしいという判断です。

ことしもショートのレギュラーとして期待されていた小園海斗選手。開幕から調子が上がらず、新井監督はファームで再調整させることを決めました。「2軍」ではなく「ファーム」ということばを使い、「落とす」「降格」は決して使いません。「力をつけてきてほしい」「経験を積んできてほしい」という姿勢はその後も一貫しています。

プロに入ってきての壁。乗り越えなきゃいけない。彼だったら乗り越えられる。

新人から2年間、絶対的な抑えとしてカープを支えてきた栗林良吏投手。ことしは開幕後、試練が訪れました。新井監督は誰でもぶち当たる壁だとしたうえで、栗林投手への心からの励ましを口にしました。その後、報道陣が取材のなかで新井監督のことばを伝えると栗林投手の目には涙がにじんでいるように見えました。

今やっていることは間違っていないよ。

打撃の状態を上げようと、足の上げ方やタイミングの取り方を試行錯誤し続けてきた新外国人のマット・デビッドソン選手。新井監督は、常に背中を押すことばをかけていました。デビッドソン選手は「選手の気持ちがわかる監督。楽しく切り口を与えてくれる」と感謝していました。

5月 鬼門の交流戦へ

彼のハートは折れていなかった。でも、コンディションのこととなるとまた段階が変わってくる。それはこちら側がストップしないといけない。

変わらぬ信頼を口にし続けてきた栗林投手が右足の内転筋を痛めていることがわかりました。「行きたい。大丈夫です」と言ったという栗林投手に対し、1軍登録の抹消を決断した新井監督。焦ることなく、万全にして戻ってこいと伝えたと言います。

もちろん打ったサクが見事だったですけど、空振りしてもいいからって。バッティングコーチがアドバイスしていました。

5月に入って打撃の状態が上がってきた坂倉将吾選手。「受け身にならずに、空振りしてもいいから自分のポイントで振りなさい」と背中を押したコーチの存在を明かしました。

成長していくためには、きょうはきょうで反省して次にどう臨むかが大切。自分自身で疑心暗鬼にならないでほしい。前に前に。

開幕ローテーションをつかんだ24歳の遠藤淳志投手。チームに今シーズン初勝利をもたらしたあと、勝ち星から遠ざかりました。野球だけではなく、どんな仕事にも通ずることばだと感じました。

悪くなるのはあっという間だが、良くなっていくのには時間がかかる。

ライアン・マクブルーム選手とも積極的にコミュニケーションをとってきた新井監督。バッティングの難しさを口にしたうえで、「ライアンは練習前の練習を自主的にやっている。必ず良くなると思う」と信頼を寄せていました。

本人もきょうのエラーをくそって思っていると思う。明日も攻めの気持ちで行ってほしい。

失点につながるエラーをしてしまった林晃汰選手。「晃汰にはしっかり練習して、試合の中で上達してほしい」と引き続き積極的なプレーを期待していました。

彼の投げるボールは一級品。自分のボールに自信を持って、今は迷いがない。

勝ちパターンの一角として大きく成長した島内颯太郎投手。成長の要因を問われた新井監督は、即答しました。

彼はどんな時でも最高の準備をしている。

去年は自己最少の41試合出場にとどまった田中広輔選手。ことしは、先発でも途中出場でも印象的な活躍が目立ちます。新井監督は「広輔はたまのスタメンでも勝利に貢献してくれる。頼りになる」と口にし、3年ぶりの猛打賞だったこの日は「3年ぶり?もっともっと猛打賞してもらおうよ」と笑顔で取材を締めくくりました。

交流戦苦手?そんなの関係ない。ガンガンいきなさいと背中を押してあげたい。

カープにとって鬼門と言われる交流戦。新井監督は「ひとつの大事なポイントになると思う」と口にしたうえで、パ・リーグの力のある投手や打者に対し、積極的に攻めていく姿勢を選手たちに期待しました。

6月 成長が次第に形に

本人に伝えてからなら言えるので、ちょっと待ってください。

1軍と2軍の選手の入れ替えという戦術に大きく関わることも、可能な限り質問に答えてくださる新井監督。応援してくれるファンのため、という気持ちを感じます。しかし、オープンにするのはまず選手本人に伝えてから。選手とファンの両方を大事にする姿勢が感じられた一言でした。

ミスは起こるので野球は。自分もたくさんミスをしてきた。うまくいかなかったときの次が大切。

送りバントを2球失敗したあとにタイムリーを打った野間峻祥選手。新井監督は「反省は試合が終わったあと。試合中は前へ前へとやってほしい」とミスをすぐに取り返した野間選手の打撃を称えていました。

打たれても抑えても勉強。

プロ初先発したルーキーの河野佳投手。5回5失点も、序盤は無失点の投球を見せました。新井監督は「立ち上がりから緊張していたと思うけど、落ち着いていた。ただ、打たれたボールは甘かった。今後の糧にしてほしい」とさらなる成長に期待していました。

すべて選手のおかげです。

交流戦を勝率5割で乗り切ったカープ。新井監督は「みんなよく頑張った。交流戦前と今とでは間違いなくチーム力が上がっています」と手ごたえを口にしました。

ずっと我慢していいピッチングをしていた。みんな大地のためにと思っていたと思いますよ。

2か月ぶりの勝利をあげたエース・大瀬良大地投手。新井監督は「なかなか打線が援護できない中で、ずっと試合を作ってくれていた。野手もその気持ちをずっとわかっていたと思う」と投手と野手の信頼関係の大切さを強調していました。

たくましくなったよねぇ。

10セーブ目を挙げた矢崎拓也投手に新井監督はひと言。「抑えとしての経験を重ねるたびにたくましくなっている」と目を細めていました。

どんないい選手にも波は絶対にある。彼は調子が悪いからスタメンを外す、という選手ではない。

開幕から好守にチームを引っ張り続けきた秋山翔吾選手。「信頼」の二文字が最大限に表れたことばだと感じました。新井監督は「相手はアキの状態がいつ上がってくるか、いつ上がってくるかと思っている。それだけでプレッシャーになる」と秋山選手の存在の大きさにも言及していました。

祐輔にとって、明日が開幕

プロ12年目、34歳になった野村祐輔投手に今シーズン初登板初先発のチャンスが回ってきました。6回無失点の好投でしっかりと答えを出した野村投手。新井監督は「100点満点のピッチングだった。次も期待して送り出したいと思う」と気持ちのこもった投球を称えていました。

いつも素でやっているので。別に作ろうと思ってやっていないよ。

レギュラーシーズン70試合目に到達。「雰囲気作りで心がけていることは?」と問われた新井監督は、ありのままの姿勢でチームに接していることを強調していました。

7月 勝負の後半戦へ

復活というより、新しい広輔。

初回に3ランホームランとこの日も貴重な働きの田中広輔選手。新井監督は「きょうも強く引っ張った彼の持ち味が出た」と振り返ったうえで、心機一転、シーズンに挑んでいる田中選手をこう評しました。

活躍というより、楽しんでほしい。

オールスターに初めて選出された九里亜蓮投手への新井監督のメッセージ。「初めてで、しかもマツダでやる。本人もうれしいだろうし、ファンの人たちも楽しみなんじゃないかな」と笑顔で話しました。

起こってしまったことは変えられない。じゃあ今からどうするかを考えるのが自分の仕事。

「代えのきかない選手」という西川龍馬選手がわき腹を痛めて、1軍登録を抹消。新井監督は「若い選手のチャンスがあると思うし、力をつけてほしい。“若いの出てこいや!”という感じです」と笑顔。チームにとって向かい風もプラスに変えてみせるんだという強い決意が感じられました。

そういうところ私、全然知りませんので(笑)目の前の一戦ですので。

オールスターまでの前半戦の勝ち越しが決まったカープ。いつものように報道陣を笑いに包んだ新井監督。一戦一戦の積み重ねの先に5年ぶりの優勝があることをファンは信じています。

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