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不登校の子どもをめぐる基礎情報 第7回「不登校とひきこもりの差異」

2016年02月16日(火)

「不登校」と「ひきこもり」とは別の概念ですが、不登校からひきこもりへと移行するケースもあることから、並置されて論じられることが多く、しばしば同じイメージで語られます。しかし、不登校の子どもの多くは毎日学校に行くことが難しいだけで、ひきこもりのように外部との接触を絶ち、社会生活に支障が出るようなケースとは異なります。


不登校の定義
対象:児童期や思春期の子ども

何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しない、
あるいはしたくともできない状況にあるため年間30日以上欠席した者のうち、
病気や経済的な理由による者を除いたもの(文部科学省)。

 

ひきこもりの定義
対象:15歳以上の年齢層

自宅にひきこもって学校や会社に行かず、家族以外との親密な対人関係がない状態が
6か月以上続いており、統合失調症やうつ病などの精神障害が第一の原因とは考えにくいもの(厚生労働省)



不登校は学校に関連したことであり、文部科学省が対応するのに対して、ひきこもりは就労や生活困窮に関連することであり、厚生労働省が対応しています。不登校は小中高を合わせると約18万6000人。一方、ひきこもりは70万人、ひきこもり予備軍は155万人と推計されています。

平成22年に実施された内閣府のひきこもり実態調査によれば、ひきこもりが始まった年齢は、「14歳以下」(8.5%)と「15歳~19歳」(25.4%)を合わせると33.9%となり、3割強の者が10代のうちにひきこもりの状態になっていますが、6割以上は20歳を過ぎてからです。不登校の男女比は小学校も中学校もほぼ半々で変わりませんが、ひきこもりの男女比は7対3で男性の方が多くなります。

不登校がきっかけとなって、ひきこもりに至るケースもありますが、実態調査によると、引きこもりになったきっかけは、「職場での挫折体験」や「就職活動の失敗」が合わせて44%、「病気」は22%、「不登校」は12%です(複数回答)。

不登校が思春期特有の心理的な問題やいじめなどの人間関係、生活リズムの乱れなどが原因なのに対して、ひきこもりの多くは失業や病気などにより生活基盤を得られないことが原因であることがわかります。一方、文部科学省による中学3年生で不登校を経験した生徒の5年後の追跡調査によれば、8割以上は高校に進学し、その後も学業を続けているか、仕事についています。不登校の主因は教育問題ですが、ひきこもりの主因は雇用問題や健康問題で、そのメンバーはかならずしも重なっていないことがわかります。

平成22年度の内閣府のひきこもり実態調査では対象は15歳から39歳に限られましたが、平成24年度に行われた島根県、山形県の15歳以上の全年齢の調査によれば、40歳以上のひきこもりの割合が山形県43%、島根県53%であることが報告され、地域の雇用状況の悪化との関連が指摘されています。

不登校もひきこもりも体面的なコミュニケーションが苦手な現代の子どもや若者特有の現象とみなして同一に論じられることも多いのですが、それぞれ社会的な背景も年齢層も異なる個別の課題としての対応が必要なことがわかります。不登校にしてもひきこもりにしても、個人的な資質を問題とするだけではなく、それぞれの課題にふさわしい教育環境、雇用環境、社会環境の整備が求められます。



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