本文へジャンプ

不登校の子どもをめぐる基礎情報 第4回「専門機関との仲介者:スクールソーシャルワーカー」

2015年12月07日(月)

WebライターのKです。

今回は、不登校の児童生徒に対して、教育現場だけではなく、家庭環境も含めて、福祉的な面から支援する「スクールソーシャルワーカー」をめぐる基礎情報をお届けします。
 

 スクールソーシャルワーカー

スクールカウンセラーが「児童・生徒本人の心の問題」に注目するのに対して、スクールソーシャルワーカーは「児童・生徒を取り巻く環境」に注目し、問題の解決をはかります。不登校の背景に、貧困や虐待など保護者の課題がある場合は、家庭の支援も含めて、児童相談所、福祉事務所、保健医療機関など、さまざま機関と連携をはかりながら、福祉制度などへとつないでいきます。多くの自治体で、スクールソーシャルワーカーの働きによって、学校のみでは対応が難しい不登校を解決した事例が報告されています。

5年間で1万人の配置をめざす
実施主体は都道府県および指定都市等で、都道府県や市区町村の教育委員会や学校に配置されます。2008年度から活用事業がスタートし、2014度には1466人の配置が計画されました。スクールカウンセラーよりも配置は少ないですが、2014年8月に政府は「子供の貧困対策に関する大綱」を閣議決定し、その中でスクールソーシャルワーカーを5年間で1万人にまで増やすなど配置の拡充をめざしています。

 

福祉と教育の両分野に精通
文部科学省はスクールソーシャルワーカーの適性を「社会福祉士や精神保健福祉士等の福祉に関する専門的な資格を有する者が望ましく、地域や学校の実情に応じて、福祉や教育の分野において、専門的な知識・技術を有する者または活動経験の実績等がある者」としていて、社会福祉士、精神保健福祉士、教員資格者、臨床心理士、弁護士などが対象となっています。現在はほとんどの自治体が非常勤の嘱託職員として採用しています。

5つの職務:子どもの環境改善のためのコーディネーター

①問題を抱える児童生徒が置かれた環境への働きかけ
②関係機関等とのネットワークの構築、連携・調整
③学校内におけるチーム体制の構築、支援
④保護者、教職員等に対する支援・相談・情報提供
⑤教職員等への研修活動


複雑化・多様化する子どもの課題に対応
不登校の背景となる子どもの課題は年々複雑化・多様化してきて、スクールカウンセラーが本人の心に働きかけるだけでは、解決不可能な問題が生じているとの認識から導入が始まったのが、スクールソーシャルワーカーです。


学校の教員が不登校の課題を解決しようとしているうちに、家庭の経済的な困窮や児童虐待などに気づいたとしても、そのような学校外の事情について踏み込むことは容易ではありません。そのような福祉に関する外部機関との連携が必要なケースで、コーディネーターとして重要な役割を果たすのがスクールソーシャルワーカーです。

ソーシャルワークは、「人間尊重の理念」に基づいて行われるもので、不登校の原因を追求し、それを指導することが目的ではなく、子どもだけでなく、子どもを取り巻く教員や保護者や関係者をすべて尊重し、当事者や関係者が自ら課題の解決に向かうことができるような調整役となるのが仕事です。

近年増加し始めた外国人児童の不登校問題でも、スクールソーシャルワーカーに学校・家庭・地域を結ぶ役割が期待されています。


 

20151203_002.PNG

(文部科学省 初等中等教育局 資料)

 

▼関連ブログ
 不登校の子どもをめぐる基礎情報 第1回「定義から考える」
 不登校の子どもをめぐる基礎情報 第2回「外部の居場所:教育支援センターとフリースクール」
 不登校の子どもをめぐる基礎情報 第3回「心の支援者:スクールカウンセラー」
 不登校の子どもをめぐる基礎情報 第5回「学校のオアシス:養護教諭と保健室」
 不登校の子どもをめぐる基礎情報 第6回「進学先としての通信制高校」


▼関連番組
【出演者インタビュー】荻上チキさん「"回復するためにはどうすればいいのか"という目線を大切に」

 

コメント

※コメントはありません