本文へジャンプ

不登校の子どもをめぐる基礎情報 第2回「外部の居場所:教育支援センターとフリースクール」

2015年11月09日(月)

WebライターのKです。

今回は、不登校の児童生徒への支援について、「学校外」の制度をめぐる基礎情報をお届けします。
 

 ■不登校の子どもへの支援について


 不登校の子どもたちへの支援活動は、学校外・学校内の施設で行われています。「学校外」で代表的なのは、教育支援センター(適応指導教室)など教育委員会所管の機関やフリースクールなどです。「学校内」では養護教諭やスクールカウンセラーなどが保健室や相談室などの別室でカウンセリングや指導に当たります。
 2014年度に学校外の機関で相談・指導を受けたのは約3万8千人で、学校内で相談・指導を受けたのは約6万人になります。公的な機関はもとの学校への復学をめざしていますが、優先するのは子どもたちの「心の居場所づくり」です。いずれの形でも、指導や相談を受けない児童生徒も約3万5千人います。


教育支援センター(適応指導教室)
 不登校の児童生徒への対策として教育委員会が設置運営しているのが、教育支援センター(適応指導教室)です。子どもたちの居場所づくりや無償の学習機会の確保など、地域の不登校児童支援の中核的な役割を果たしています。呼び名はさまざまで、「ゆうゆう広場」「ふれあいセンター」「ほっとスクール」「シャイン」「オアシス21」など、子どもが親しみやすいネーミングにしている地域もあります。
 都道府県立と市町村立があり、全国では1324か所に設置されています。複数の設置も見られる市区に比べて、町村の設置は少なく、約4割に上る730自治体には設置されていません。2014年度は、約1万5千人が利用、12.1%の利用率です。利用者の82.7%が指導要領上の出席扱いとなっています。

 


フリースクール
 不登校の子どもたちの居場所として、90年代以降に本格的に増え始めたのは、民間のフリースクールです。学校の学習スタイルや人間関係になじめない子どもたちの「心の居場所」「仲間づくりの拠点」として機能してきました。
 文部科学省の今年度の調査によれば、全国には474か所のフリースクールがあります。全都道府県に存在しますが、県によっては1か所しかないところもあります。都市部が中心で8割を超える市区町村にはフリースクールはありません。
 本年度の文部科学省のアンケートに答えた319団体・個人によれば、利用者の数は4200人で、そのうち約56%が在籍校で出席扱いとなっています。46%がNPO法人ですが、営利法人や学校法人が運営するものも11%あります。1団体が受け入れている人数は、85%が20人以下と小規模です。
 義務教育ではないので、費用は親が負担します。月謝の平均は3.3万円。自治体が運営していたり、民間に委託している場合は公的助成により、利用料が無料のところもあります。働くスタッフの約7割は有給ですが、残り3割は無給です。95%が常設の施設で活動していますが、自己保有は3割で、7割は賃貸料を払っています。
 活動内容は、「相談・カウンセリング」「個別の学習」「社会体験」「自然体験」「スポーツ体験」「芸術活動」「子どもたちによるミーティング」など多種多様で、学習に関しては学習カリキュラムを決めているところと決めていないところが半々に分かれます。
フリースクールには法的な根拠はなく、通っても義務教育を修了したとはみなされず、もとの在籍校の校長が出席扱いとすることで、在籍校の卒業証書が与えられます。
 
現在、自治体が運営するフリースクールや学校と連携するフリースクールが誕生するなど、フリースクールを積極的に活用する自治体も見られるようになりました。



公的助成を受けているフリースクール
<八王子市立高尾山学園>
「不登校の児童・生徒のための体験型学校」として、特区制度を利用して設立された、不登校の児童生徒のための公立の中高一貫校です。

<フリースペースえん>
川崎市子ども権利条例に基づき、市が設置し、NPOが運営する「公設民営」のフリースクール。市内の児童生徒は無料で利用できます。決められたカリキュラムはなく、生徒が自分で一日をどのように過ごすかプログラムを組み、やってみたいことをミーティングで提案し、仲間を集めて一緒に活動します。

<東京シューレ葛飾学校>
葛飾区とNPO法人東京シューレが連携して、不登校の子どもたちのために設立した中学校です。「私立学校」として認可されていますが、特区制度を活用して、フリースクール的な特徴を保っています。年間授業時数は学習指導要領が定める980時間よりも少ない770時間で、始業は朝10時です。

<スマイルファクトリー>
大阪府池田市のフリースクール「スマイルファクトリー」は、市の施設をNPO法人が運営する「公設民営」で、市からの委託金で運営されています。市内の小中学生は無料で利用でき、市外生は月謝を払います。



フリースクールを積極的に活用する自治体
<福岡県>
フリースクール設置者に対して、フリースクールの職員の配置や事業実施に必要な運営補助金を交付しています。

<神奈川県>
県が主催者となって「フリースクール見学会」を開催するなど、フリースクールの存在を公式に認めて、積極的にその情報を子どもたちや保護者に提供する取り組みを行っています。また、フリースクールに通う子どもが学校に戻ろうとする際の受け入れ態勢を整えるために学校とフリースクール等の連携・協働体制を進めています。

<京都市>
フリースクールに対して、「体験活動事業」「家庭訪問事業」「保護者支援事業」を委託することによって、フリースクールを積極的に活用し、フリースクールの運営を実質的にサポートしています。

<鳥取県>
2014年度から、フリースクールの施設の運営費を補助する「フリースクール連携推進事業」をスタートさせました。今年8月、鳥取市教育委員会は市内のフリースクール「ちゃれすくーる」を初めて連携施設として認定しました。

 



▼関連ブログ
 不登校の子どもをめぐる基礎情報 第1回「定義から考える」
 不登校の子どもをめぐる基礎情報 第3回「心の支援者:スクールカウンセラー」
 不登校の子どもをめぐる基礎情報 第4回「専門機関との仲介者:スクールソーシャルワーカー」
 不登校の子どもをめぐる基礎情報 第5回「学校のオアシス:養護教諭と保健室」
 不登校の子どもをめぐる基礎情報 第6回「進学先としての通信制高校」

 

 

▼関連番組
   2015年9月24日放送 チキノめ「不登校の子どもたちは今」
【出演者インタビュー】荻上チキさん「"回復するためにはどうすればいいのか"という目線を大切に」

 

コメント

現在高校2年の息子を持つ母親です。
息子が小学3年の夏から、不登校になりました。当時は親子共々どうしてよいかわかりませんでしたが、周りの友達、先生方によって、約1年後に学校に行けるようになりました。
本人も随分辛かったと思いますが、私達親は、長い人生何年か行かなくても大した事じゃないよ。と話し、楽しい経験をたくさんさせました。
そのおかげか、息子はどんな事にも積極的になり、努力を惜しまず、独学で進学校にも行き、今は行きたい大学に向けて毎日勉強や部活を頑張っています。どんな環境にいようとも
親は子供を信じて見守ることが大切なのではと思います。

投稿:SAKU 2016年01月28日(木曜日) 20時52分